総務省は9月18日、令和7年度(2025年度)の特定信書便事業の現況を公表した。特定信書便事業者は年度末時点で647者と、前年度末の623者から24者増えた。引受通数は約2129万通、売上高総額は約195億円で、事業者数と引受通数はいずれも過去最高となった。

信書とは、請求書や契約書、通知書のように、特定の相手に意思や事実を伝えるための文書を指す。宅配便で送ることはできず、長く国が独占してきた分野だ。2003年4月に民間事業者による信書の送達に関する法律(信書便法)が施行され、民間にも門戸が開かれてから20年余がたつ。

参入があったのは「例外の3類型」だけ

今回の数字で目を引くのは、増えた事業者数そのものより、どの入り口から入ってきたかだ。

信書便法は民間参入を2種類に分けている。一つは「一般信書便事業」で、長さ40センチ・幅30センチ・厚さ3センチ以下、重さ250グラム以下の小型軽量の信書便物を、全国均一料金で全国どこでも引き受け、原則4日以内に届けるサービスを含む事業を指す。事実上、日本郵便の郵便とほぼ同じことを求める区分である。

もう一つが「特定信書便事業」で、こちらは次の3つの役務だけを提供する事業だ。(1)長さ・幅・厚さの合計が73センチを超える、または重量が4キロを超える信書便物を送る「1号役務」 (2)差し出しから3時間以内に届ける「2号役務」 (3)料金が800円を超える「3号役務」──の3つで、いずれも郵便では担いにくい領域にあたる。

総務省の資料によれば、一般信書便事業への参入は今回も1件もない。647者はすべて特定信書便事業者で、全国一律の郵便網を自前で敷こうという事業者は20年余りにわたって現れていない。参入したのは「大きい」「速い」「高い」という例外の3類型だけということになる。

増えたのは大型だけ 3時間便は8.0%減

役務別にみると、伸びているのは1号役務に限られる。

1号役務は587者(前年度末563者)、引受通数は約1629万通で前年度から約26万通(1.6%)増え、売上高も約118.2億円と約4.9億円(4.3%)増えた。全体の引受通数の約76%、売上高の約61%をこの区分が占める。

対して2号役務は95者と前年度末の96者から1者減り、引受通数は約45万通で約4.0万通(8.0%)減った。売上高は約2.3億円で、増減はごくわずかだ。3号役務も319者と5者増えたものの、引受通数は約454万通で約7.3万通(1.6%)減り、売上高は約74.8億円と約0.4億円(0.5%)減っている。

全体で引受通数が0.7%増、売上高が2.4%増と小幅なプラスにとどまったのは、1号役務の伸びを2号・3号の減少が打ち消しているためだ。急ぎの書類を3時間以内に届ける需要は、電子契約や電子交付の普及と重なる領域でもある。

8割超が資本金1億円未満、本業は運送業

事業者の顔ぶれからは、この市場が本業の「ついで」で成り立っていることが読み取れる。

特定信書便事業者が他に行っている主な事業は、貨物運送業が488者と全体の4分の3を占めた。次いで警備業38者、建物等維持管理業18者、障害者福祉事業17者、卸売業・小売業9者と続く。荷物や現金、鍵などをすでに運んでいる事業者が、信書も一緒に扱えるようにした形だ。

経営形態は株式会社が563者で87.0%を占め、協同組合39者(6.0%)、社会福祉法人15者(2.3%)、NPO法人7者(1.1%)と多様な法人が並ぶ。個人も17者(2.6%)が参入している。会社形態566者を資本規模別にみると、1千万円以上1億円未満が390者で68.9%を占め、1千万円未満の99者と合わせると86.4%が資本金1億円未満だった。10億円以上は18者(3.2%)にとどまる。

高知県だけが参入ゼロ

本社所在地別では、東京が151者と突出し、大阪66者、愛知39者、神奈川37者、福岡31者が続く。北海道21者、兵庫20者、静岡・埼玉が各18者と、人口や事業所が集まる地域ほど多い。

一方、高知県だけが0者で、参入があるのは46都道府県にとどまる。1号役務のように重くかさばる書類を届ける仕事は、運送網を持つ事業者が近くにいるかどうかに左右されやすい。事業者数がいくら増えても、全国どこでも同じ料金で信書を送れる仕組みは郵便以外に存在しない、という構図は20年余り変わっていない。

なお、総務省はこの現況を、信書便法施行規則第41条に基づいて事業者が毎年提出する事業実績報告書と事業報告書をもとに取りまとめている。令和6年度の引受通数と売上高は、事業者報告の修正に伴い数値が改められている。