台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)総統は10月10日、台湾の国慶日(中華民国の建国記念日に当たる祝日、通称「双十節」)の祝賀行事に合わせて訪台した日本の国会議員団と、台北の総統府で会見した。台湾の総統府が同日発表した。団を率いたのは超党派の議員連盟「日本台湾友好議員連盟」会長の古屋圭司衆院議員で、古屋氏は会見で、議連が今年6月に「日華議員懇談会」から現在の名称へ改めて以降、初めて団を組んでの訪台だと説明した。頼氏は、古屋氏が長年にわたって団を率いて国慶日に参加していることに謝意を示した。

総統「来年も再来年も会いたい」

総統府の発表によると、会見は10日の昼に行われ、頼氏が迎えたのは「日本国会議員国慶祝賀団」。一行はこの後、南部の高雄へ向かう日程だった。

頼氏はあいさつで、一行の日程が詰まっていて一緒に過ごせる時間が限られているとしたうえで、国を代表して古屋氏が率いる祝賀団に「最大の感謝」を伝えたいと述べた。古屋氏が多年にわたって国慶日に団を率いてきたことを「実際の行動で台湾への支持を示すもの」と評価し、祝賀団の来訪を見た台湾の人々は、うれしく思うだけでなく、台日関係が非常に緊密だと理解し、安全と安定を感じると語った。

さらに、来年も再来年も、これから毎年一行と会えることを期待するとし、次は会う時間が短すぎず、食事を共にしながら直接感謝を伝えられる時間が取れればと述べた。

古屋氏、戸籍の「台湾」表記や修学旅行に言及

古屋氏はあいさつの冒頭で中華民国115年(2026年)の国慶日を祝い、歓待に謝意を表した。そのうえで、今回が議連の改称後初の訪台であることに触れ、頼氏から今年7月に「大綬景星勲章」を授与されたことにも感謝した。古屋氏は、この栄誉は台湾のために長く力を尽くしてきた日本の国会議員全員のものだとし、今後も台日の友好関係の促進に全力を尽くすと述べた。

古屋氏は、この日午前の頼氏の国慶日演説から、台湾とインド太平洋地域の平和と安全を守る固い決意を感じたと話した。台湾の民主主義と台湾海峡の平和と安全を守るには、台湾、日本、米国、そして価値観を共有する国々の緊密な協力が欠かせないとも述べた。

議連の活動については、複数のプロジェクトチームを通じて取り組みを進めていると説明した。その例として、昨年、日本の戸籍の「国籍・地域」欄に「台湾」と記載できるようになったことと、日本の中学・高校生に台湾への修学旅行を促していることを挙げ、具体的な行動で台日の絆を次の世代に引き継ぐと述べた。

戸籍の表記について、法務省は2025年2月18日の大臣の閣議後記者会見で、戸籍法施行規則の改正案により、台湾出身者について婚姻・出生・帰化などの届け出や戸籍に「台湾」と記載することになると説明していた。住民票と在留カードではすでに「台湾」と表記できるようになっており、戸籍もその扱いに合わせるもので、同年5月26日の施行を予定していると述べていた。

衆参27人、台湾側は外交部長らが同席

総統府の発表に名前が挙がった祝賀団の議員は、古屋氏を含めて27人。内訳は衆院議員19人、参院議員8人だった。

会見には、台湾の林佳龍外交部長(外相に相当)、日本側の窓口機関である日本台湾交流協会の台北事務所副代表、台湾側の窓口機関である台湾日本関係協会の秘書長が同行した。蕭美琴副総統、総統府の潘孟安秘書長、国家安全会議の呉釗燮秘書長も同席した。

一行はこの日午前、総統府で行われた各国祝賀団による国慶日の祝賀にも参加していた。総統府によると、頼氏夫妻と蕭副総統は、アフリカ南部エスワティニのムスワティ3世国王夫妻をはじめ140人余りの外国の来賓から祝賀を受けた。発表は主な来賓として、エスワティニなど台湾と外交関係を持つ国の訪問団に続き、日本の国会議員団の27人の名前を挙げている。米国在台協会、日本台湾交流協会、欧州経済貿易弁事処など、台湾に置かれた各国・地域の窓口機関の代表も出席した。

国慶日演説、国防改革と「現状維持」を強調

頼氏は同じ10日午前、総統府前の広場で開かれた国慶日の式典で演説した。演説の冒頭、出席者への呼びかけの中で、立法院長や副総統、行政院長、エスワティニ国王夫妻に続いて「日本台湾友好議員連盟」の古屋会長の名を挙げた。

総統府が公表した演説の全文によると、頼氏は「台湾 山の上の町、地の塩、世の光」と題して、民主化からの歩みや経済、社会政策に触れたうえで、安全保障について語った。台湾は覇権を求めず、紛争の代償を知るからこそ平和を堅持すると述べる一方、「平和は願望だけでは守れない」として、国防改革を進め、非対称戦力を強化し、半導体や情報通信、精密製造の強みを防衛力に転化していく考えを示した。

国防投資の増額については、挑発のためではなく戦争を抑止するためだと説明した。米中が対話を通じて競争を管理し、衝突の危険を下げることは歓迎するとしつつ、地域の安全と平和、安定を守るには、歴史の発展を正しく理解し、第2次世界大戦の歴史をゆがめることを許さず、台湾の人々が生存する権利を尊重し、インド太平洋地域の民主主義国の力を結集して、現状が変えられないようにする必要があると訴えた。「台湾は交流を望むが、矮小化は受け入れない」とも述べた。

「非政府間の実務関係」と議員外交

日本と台湾の間には正式な外交関係がない。外務省の「台湾基礎データ」は、台湾との関係について「1972年の日中共同声明にあるとおりであり、非政府間の実務関係として維持されている」と記している。窓口は、日本側が公益財団法人日本台湾交流協会(東京本部と台北・高雄の事務所)、台湾側が台湾日本関係協会(台北本部と東京・大阪の事務所、札幌・横浜・福岡・那覇の支所)が担う。

政府間に正式な外交関係がない中で、国会議員の議連による往来は、日台の間で政治家同士が直接顔を合わせる場の一つとなっている。今回の会見でも、外交部長や副総統、国家安全会議の秘書長が同席した。

実務の往来は大きい。外務省の同じ資料によると、2023年の日本の対台湾貿易(台湾財政部の統計)は、輸出が443.3億ドル、輸入が314.4億ドル。2023年の人の往来は、日本から台湾への訪問者が約93万人、台湾から日本への訪問者が約420万人だった。台湾に住む日本人は2023年10月時点で2万1102人いる。