総務省は9月29日、令和7年度の地方財政の決算速報を公表した。都道府県の歳入は60兆7000億円で前年度より9000億円増え、歳出は58兆9000億円で1兆円増えた。市町村1718団体と特別区23団体をあわせた1741団体では、歳入が74兆5000億円で3兆1000億円増、歳出が72兆1000億円で2兆9000億円増となった。いずれも令和8年8月末現在の集計で、今後変動する可能性がある。
財政のやりくりの余地 都道府県は狭まり、市町村は広がった
今回の速報で都道府県と市町村の明暗が分かれたのは、経常収支比率である。人件費や借金の返済のように毎年必ず出ていく経費が、地方税など毎年必ず入ってくる収入のどれだけを食べているかを示す指標で、数字が大きいほど自由に使える部分が少ない。100%に近づくほど、新しい事業に回す余裕がなくなる。
都道府県はこの比率が前年度の92.2%から93.0%へ上がった。総務省は要因として、補助費等に充てた経常的な一般財源が増えたことを挙げている。推移をみると令和3年度は87.3%で、4年度に92.6%へ跳ね上がった後、5年度92.5%、6年度92.2%と小幅に下がっていたが、今回再び上向いた。一方、市町村は93.8%から93.3%へ下がり、余地がわずかに広がった。
この比率が100%を超えた団体は、都道府県で1団体、市町村で34団体だった。100%超えは、毎年必ず入る収入だけでは毎年必ず出る経費を賄えない状態を指す。都道府県では前年度に100%を超えた団体がなく、今回初めて1団体が該当した。市町村も前年度の32団体から2団体増えた。ただし速報には団体名の一覧がなく、どの団体が該当したかは今回の資料では確認できない。
借金の返済負担を示す実質公債費比率は、都道府県が10.1%から10.2%、市町村が5.6%から5.5%となった。この比率が18%以上になると地方債の発行に総務大臣などの許可が必要になるが、該当は都道府県で3団体(前年度2団体)、市町村で1団体(同1団体)だった。
定額減税の終了とGIGAスクール端末の更新が決算を動かした
歳入の増減には、国の政策の切り替わりがそのまま表れた。増えた要因は、給与所得の伸びなどによる地方税で、都道府県は1兆1144億円、市町村は1兆3088億円増えた。市町村では個人市町村民税と固定資産税の増加が目立つ。国庫支出金も都道府県で3410億円、市町村で6742億円増え、都道府県は物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金、市町村は児童手当等交付金の増加が理由に挙げられている。
減った要因は共通している。令和6年度に実施された定額減税が終わったことに伴い、地方特例交付金等が都道府県で3327億円、市町村で6069億円減った。減税で地方税が目減りする分を国が埋めていた仕組みが役目を終えたためで、減税の実施と終了が2年続けて地方の決算に跳ね返った形だ。
歳出では、都道府県で補助費等が1兆2940億円増えた。総務省は理由として、GIGAスクール構想で配られた児童生徒1人1台の端末の更新に対する補助金の増加を挙げている。普通建設事業費も都道府県で2248億円、市町村で6366億円増え、市町村では学校の新設・改修や消防施設の更新・建て替えが並ぶ。市町村ではこのほか、物価高騰による物件費が7925億円、児童手当制度の拡充や物価高対応子育て応援手当による扶助費が5284億円増えた。
決算収支は、都道府県の実質収支が8411億円の黒字で830億円減り、47団体すべてが黒字だった。市町村の実質収支は1兆7798億円の黒字で409億円増え、赤字は1団体にとどまった。借入残高にあたる地方債現在高は、都道府県が81兆89億円で1兆7504億円減、市町村が52兆8896億円で3236億円減となっている。
財政再生団体は夕張市だけ 将来負担比率は104.5%から45.0%へ
同じ日に公表された健全化判断比率の速報によると、財政再生基準以上の団体は北海道夕張市の1市だけで、前年度の決算と変わらなかった。その一段手前にあたる財政健全化団体はなかった。
夕張市は平成21年度から令和11年度までの財政再生計画の期間中にある。今回の速報では、同市の実質公債費比率が前年度の68.1%から67.5%に下がり、将来負担比率は前年度の104.5%から45.0%へと半分以下に下がった。将来負担比率は、その団体が将来支払う見込みの負担が財政規模に対してどれだけあるかを示す指標である。同市については夕張市の財政再生計画、今年度4度目の変更に総務相が同意 消防ポンプ車の更新を2年前倒し 322億円の再生債返済は今年度で終わるで伝えたとおり、322億円の再生振替特別債の返済が今年度で終わる見通しになっている。
一方で、新しく赤字が出た団体もある。一般会計等の赤字を示す実質赤字額がある団体は1団体で、令和6年度決算ではなかった。すべての会計を合算した連結実質赤字額がある団体は2団体で、これも前年度はなかった。いずれも早期健全化基準には達していない。
全体は黒字だが、個別には差が開いている
今回の速報を通してみると、地方財政の全体像は黒字で、借入残高も減っている。だが経常収支比率が100%を超える団体が都道府県で初めて出て、市町村でも増え、実質赤字や連結実質赤字が出る団体も現れた。総額では余裕があるように見えても、団体ごとの差は開いている。
団体別の事情は、医療や水道といった個別の事業の採算にも表れる。総務省が同じ9月29日に検討会を開いた公立病院の経営状況については、公立病院の83.3%が経常赤字 前年度の70.4%から悪化 累積欠損金は1兆9992億円 総務省が新しい経営強化ガイドラインの検討会を9月29日に開くで伝えている。
速報の数値は、大部分の団体が公表手続きの途中にあるため今後変わる可能性がある。総務省は例年、速報のあとに確報を公表している。
