石油・ガスの産出国と消費国の閣僚が話し合う国際エネルギー・フォーラム(IEF)の第17回閣僚級会合が10月11日、サウジアラビアの首都リヤドで開かれた。外務省によると、閣僚級会合は2018年4月にインドのニューデリーで開かれて以来となる。IEFの発表によると、会合では米国がIEFへの復帰を表明した。日本からは赤澤亮正経済産業相がオンラインで出席し、日本が中東の産油国とアジア諸国の「結節点」として地域間の連携を強め、世界のエネルギーの安定供給に貢献していく考えを示した。
会合の全体テーマは「新時代のエネルギー安全保障と共通の目標」。エネルギー安全保障と、持続可能なエネルギーへの投資や貿易を中心に議論した。経済産業省は、現地とオンラインを組み合わせた形式で開かれたとしている。
開会でサウジのエネルギー相に続いて演説
経済産業省によると、赤澤経産相は開会セッションで、議長を務めたサウジアラビアのアブドルアジーズ・ビン・サルマン・エネルギー相の直後に演説した。中東情勢の緊迫化を踏まえてエネルギー安全保障の重要性を挙げ、産油国と消費国が協力する必要性を訴えた。
そのうえで、日本が進める「パワー・アジア」のもとで、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)が取り組む方針を紹介した。中身は、アジア各国の石油備蓄制度やインフラの整備、産油国との連携強化、緊急時の連携した対応などだ。
外務省によると、現地では森野泰成・駐サウジアラビア大使が参加し、堀井巌外務副大臣の声明を代読した。声明は、世界のエネルギー安全保障を確保するための柱として、(1)自由で透明なエネルギー貿易の確保、(2)国際エネルギー機関(IEA)との連携を含む石油備蓄の国際協調、(3)生産国と消費国の連携強化の三つを挙げた。AZECやパワー・アジアを通じ、日本が生産国と消費国の「結節点(ネクサス)」として世界のエネルギー安全保障と市場の安定に貢献していく考えも示した。
石油備蓄をめぐっては、主要7か国(G7)が10月2日、IEAを通じた協調放出で合意している(G7、石油備蓄1億バレルの協調放出で合意 最初の20日は軽油を前倒し 日本の国家備蓄は3月の146日分から102日分へ減っている)。
「パワー・アジア」とは
パワー・アジアは、正式名称を「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」という。経済産業省によると、高市首相が4月15日、エネルギー強靱化をテーマにしたAZEC+オンライン首脳会合で立ち上げを発表した。
経産省は、中東情勢でアジア各国が大きな影響を受けていることを踏まえ、日本へのサプライチェーン(供給網)の途中で原油や石油製品の調達に困っている現地企業を、政府系の3機関が支えると説明している。国際協力銀行(JBIC)は、2025年10月に設けた「日本戦略投資ファシリティ」の中に「POWERR Asia FAST ウィンドウ」を新設し、原油・石油製品の調達や、燃料不足の影響を受ける企業の事業に融資する。日本貿易保険(NEXI)は、例えば日本の商社が調達した原油を現地企業に売る取引に保険をかけ、現地企業の信用力を補う。国際協力機構(JICA)は、緊急円借款と海外投融資で相手国の政府や企業を支える。
経産省はJICAの支援について、日本とのサプライチェーンを構成する国々の経済対策を支え、日本経済のサプライチェーンを下支えすることが目的だとしている。赤澤経産相は、自国の調達だけでなくアジア全体の備蓄と調達を支えるこの枠組みを、産油国が集まる場で説明したことになる。国内での調達先の見直しは原油調達多角化の法案、高市首相が所信表明で制度整備を表明 原油輸入の中東依存は94.7%で伝えている。
米国が復帰、閉幕で五つの論点を確認
IEFの発表によると、会合はサウジアラビアが主催し、イタリアとナイジェリアが共催した。議長のアブドルアジーズ・エネルギー相を、イタリアのピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相と、ナイジェリアのロクポビリ石油資源担当国務相が補佐した。参加者は、サウジアラビアの民間インフラが攻撃を受けたことを受けて、同国と国民への連帯を表明した。
米国は、IEFが産出国と消費国の対話の中立的な場であり、データに基づく調査や報告を担っていることを認めて、IEFに復帰すると表明した。IEFのアルシラウィ事務局長は「エネルギー安全保障は共有された責任だ。供給の安全保障と需要の安全保障は並び立たなければならない」と述べた。
主催国がまとめた閉会の声明は、次の五つを共通の関心事として挙げた。
- インフラと交易路を守り、調達先と輸送路を多様化し、適切な生産能力と在庫を保つこと
- 生産・精製・液化天然ガス(LNG)・送電網・蓄電への投資を、新技術や重要鉱物の供給網の拡大と並行して続けること
- エネルギーの利用機会、経済発展、排出削減を各国の事情に合わせて同時に進めること
- 予測可能なルール、資金の得やすさ、相互に通用する基準で投資と貿易を後押しすること
- 適時で比較可能なデータと、見通しの前提の透明化で市場の信頼を支えること
会合に先立ち、石油・ガスの統計を各国から集めて公開する共同データ事業「JODI」の参加機関の代表は、2026〜2030年の行程表を承認した。閣僚らは、在庫や石油製品を含むデータをより早く、より詳しく報告できるよう各国の体制を強めることを歓迎した。IEFはIEAや石油輸出国機構(OPEC)とも、それぞれの需給見通しの前提の違いを比べる共同作業を続けている。IEAが示した供給の見通しはIEA、今年の世界石油供給を日量570万バレル減に下方修正 湾岸の回復は2027年へ先送り 米軽油は開戦前の1.94倍で伝えている。
IEFとは リヤドに常設の事務局、2027年のアジア会合は日本が共催
外務省によると、IEFは石油・ガスなどの産出国と消費国が、閣僚レベルでエネルギー市場の安定などについて対話する枠組みで、1991年に設立された。安定した透明性のあるエネルギー市場を促し、健全な世界経済の成長の土台とすることを目的とする。加盟国は67か国で、閣僚級会合にはIEAなどの国際機関や民間企業も参加する。
IEFによると、もともとはOPECとIEAの加盟国の間の対話の場として始まり、いまは両機関を合わせたより多くの国が加盟している。サウジアラビア政府の申し出で事務局をリヤドに置き、2005年11月19日に本部の建物が開所した。全加盟国が憲章を採択したのは2011年2月22日だ。閣僚級会合は2年ごとに開くとしているが、前回の2018年から今回までは8年が空いた。
IEFの発表によると、閣僚級の対話は今後も続く。2027年には、第10回アジア閣僚エネルギー・ラウンドテーブル(AMER10)をトルコが主催し、日本が共催する。2028年にはイタリアの主催で第18回閣僚級会合(IEF18)をローマで開き、2030年には第19回(IEF19)をトルコのイスタンブールで開く。欧州連合(EU)との対話として、第7回IEF・EUエネルギー気候フォーラムを11月25日にリヤドで開く予定だ。
閣僚らは、IEFの理事会の議長を務めてきたサウジアラビアに謝意を示し、次の議長国となるイタリアを歓迎した。日本は2027年のアジア会合で共催国として、産油国と消費国の対話の場を整える側に回る。
