産業用ロボットやサーボモーターを手がける安川電機(北九州市)は10月9日、2027年2月期の中間決算(2026年3〜8月)を発表した。売上収益は2,855億98百万円で、前年同期の2,601億95百万円から9.8%増えた。一方、本業のもうけを示す営業利益は220億58百万円で、前年同期の233億34百万円から5.5%減った。経営基盤の強化を目的に進めた基幹システムの移行で生産と出荷が滞ったことなどが響いた。データセンタと半導体関連の設備投資を背景に受注は伸び、第2四半期(6〜8月)の受注額は四半期として過去最高の1,854億円となった。
増収減益、システム移行と欧州の構造改革が重荷
決算短信によると、親会社の所有者に帰属する中間利益は189億88百万円で、前年同期の182億47百万円から4.1%増えた。税引前利益も259億63百万円と3.0%増えている。営業利益が減ったのに最終利益が増えたのは、持分法による投資損益が前年同期の1億65百万円から19億92百万円に膨らんだためで、同社も補足資料で「持分法による投資損益の計上により増益」と説明している。
営業利益の減少について、同社は三つの要因を挙げる。一つ目が基幹システムの移行に伴う生産・出荷への影響、二つ目が間接費の増加、三つ目が欧州で一時的に計上した事業構造改革の費用だ。補足資料の要因分析では、233億円だった前年同期の営業利益に対し、為替の影響で46億円、売上の増加で36億円の押し上げがあった。しかし総間接費の増加で63億円、付加価値の減少で6億円、その他で27億円の押し下げがあり、差し引きで221億円(補足資料の四捨五入値)になった。
基幹システムは、受発注や生産、会計などの業務をまとめて管理する社内の中核システムを指す。切り替えの時期には出荷の処理が止まったり遅れたりすることがあり、同社の場合は国内の販売に影響が出た。補足資料は上期中に「基幹システムの移行を完了し、業務における運用定着に向けた取組みを重点的に実施」したとしている。
円安も売上を押し上げた。上期の平均為替レートは1ドル=159.82円で、前年同期の146.23円より13.59円の円安、1ユーロは166.04円から184.91円になった。補足資料によると、為替が売上収益を前年同期比で206億円押し上げた。
サーボとインバータが好調、ロボットは国内で落ち込む
同社の事業は4つのセグメントに分かれる。最も伸びたのは、ACサーボモータ・コントローラとインバータからなる「モーションコントロール」だ。サーボモーターは工作機械や半導体製造装置などの位置や速度を細かく制御する部品で、インバータはモーターの回転数を変えて電力を調整する装置にあたる。このセグメントの売上収益は1,372億86百万円で前年同期比21.7%増、営業利益は159億73百万円で同32.8%増えた。データセンタと半導体関連の投資を背景に、米州、中国、韓国・台湾で販売が伸びた。インバータではデータセンタ用途や半導体製造装置向けのほか、オイル・ガス関連向けも増えた。
主力の「ロボット」は売上収益が1,184億4百万円で0.7%減り、営業利益は59億74百万円と43.3%減った。自動車向けが堅調だった米州や、半導体ロボットが好調だった中国など海外では販売が伸びたが、日本で基幹システム移行の影響により販売が減った。営業利益は売上の減少に加え、欧州の事業構造改革費用が重荷となった。
製鉄所や港湾クレーン向けの電気システムなどを扱う「システムエンジニアリング」は、売上収益が207億78百万円で11.2%増、営業利益は34億80百万円で79.5%増えた。港湾クレーン関連の販売拡大と案件の採算改善が寄与した。物流サービスなどの「その他」は売上収益91億28百万円(3.5%減)、営業利益5億75百万円(38.5%減)だった。
地域別では、国内の売上収益が前年同期の730億円から707億円に減った一方、海外は1,872億円から2,149億円に増えた。なかでも米州は619億円から781億円へ26.2%伸び、中国も579億円から667億円へ15.1%増えた。
受注は四半期で過去最高、半導体とデータセンタがけん引
業績の先行きを映す受注は勢いを増している。補足資料によると、第2四半期の受注額は1,854億円で、前年同期の1,340億円から38%、直前の第1四半期の1,638億円から13%増え、同社は「過去最高の四半期受注額」としている。四半期の受注は2025年度第1四半期の1,275億円から5四半期続けて前の四半期を上回った。
前年同期比でみると、モーションコントロールの受注は56%増、ロボットは33%増だった。事業別では、ACサーボの受注が76%増え、米州では170%増、中国除くアジアでは195%増となった。地域別の受注は米州が60%増、中国除くアジアが53%増、中国が35%増と、いずれも大きく伸びた。
安川電機の製品は工場の設備に組み込まれるため、同社の受注は製造業の設備投資の動きを早めに映す指標として注目されてきた。決算短信は事業環境について、中東情勢などの地政学的リスクが続いたものの、「AI関連投資にけん引されたデータセンタおよび半導体関連を中心とした設備投資需要は好調に推移」したと記している。地域別には、日本で「慎重な投資姿勢が継続していた自動車市場においても回復の兆しが見られました」とし、欧州では自動車市場の慎重な投資姿勢が続く一方で半導体関連の需要が拡大したと説明した。
通期は売上を上方、営業利益を下方修正
同社は2027年2月期の通期予想を修正した。売上収益は4月10日公表の5,800億円から6,000億円に引き上げた。前期実績の5,421億22百万円からは10.7%の増収となる。一方、営業利益は600億円から575億円に引き下げた。それでも前期の473億7百万円からは21.5%増える見込みだ。税引前利益は650億円から655億円に、親会社の所有者に帰属する当期利益は470億円から475億円に、それぞれわずかに上方修正した。
修正の理由について、同社は為替が円安水準で推移して売上収益の増加が見込まれる一方、基幹システム移行による上期の生産・出荷への影響などを織り込んだと説明している。下期(2026年9月〜2027年2月)の想定為替レートは、1ドル=145円から155円に、1ユーロ=170円から180円に見直した。
セグメント別の通期予想では、モーションコントロールの売上収益を2,800億円から2,903億円、ロボットを2,400億円から2,510億円に引き上げた。営業利益はモーションコントロールを420億円から394億円、ロボットを210億円から178億円に引き下げた。通期予想から上期の実績を差し引くと、下期の営業利益は約354億円となり、上期の220億円から大きく増える計算になる。
下期の取り組みとして、補足資料はACサーボの製品供給の正常化と増産体制の構築、データセンタ向けインバータ「U1000」の生産・販売拡大、半導体製造装置用ロボットの受注増に対応する増産体制の構築などを挙げた。
配当は、中間配当を前期の34円から2円多い36円とし、11月10日から支払う。期末も36円とし、年間72円(前期68円)とする予想は変えていない。修正後の1株当たり当期利益の予想183円11銭に対し、年間配当72円は約39%にあたる。同社は10月13日に証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開く予定としている。
