財務省国際局は9月24日に開かれた関税・外国為替等審議会の第70回外国為替等分科会で、「最近の国際金融情勢について」と題する資料を示した。会議は午前10時から11時までの1時間で、議題は世界経済の情勢と、マネーロンダリング対策の国際審査に向けた対応の二つだった。資料には、IMF(国際通貨基金)の最新の世界経済見通しと、8月末に米国で開かれた主要国の財務相会合の結果が整理されている。
日本の2026年は0.6%、2025年の1.1%から半減する見通し
資料にまとめられたIMFの見通しによると、日本の経済成長率は2026年が0.6%である。IMFは同じ2026年の数字を1月時点では0.7%、4月時点でも0.7%としており、7月時点で0.6%へ下げたことになる。実績である2025年の1.1%と比べると、ほぼ半分の伸びにとどまる計算だ。2027年は逆に、1月時点と4月時点の0.6%から7月時点は0.7%へ上向きに直されている。
世界全体では、2026年が1月時点の3.3%、4月時点の3.1%を経て7月時点で3.0%となり、下げが続いている。一方で2027年は1月時点・4月時点とも3.2%だったものが3.4%になった。目先が鈍って先が持ち直すという形は、日本と同じ向きである。
国別では、2026年の見通しが米国2.3%、ユーロ圏0.9%、英国1.0%、中国4.6%、インド6.4%。ドイツは1月時点の1.1%から7月時点は0.7%へ、フランスは1.0%から0.6%へと、いずれも大きく下げられている。物価の方は逆に上振れしており、世界全体のインフレ率の見通しは2026年が1月時点の3.8%から7月時点は4.7%へ、2027年も3.4%から3.9%へ引き上げられた。資料は「2024年初頭から続いていたインフレ率の低下傾向は、足踏み状態」と書いている。
前提はホルムズ海峡の再開と米関税13.5%
数字そのものより注意がいるのは、この見通しが置いている前提の方だ。資料の注記によれば、IMFはホルムズ海峡の航行が7月中旬に再開され、2027年3月までに状況が概ね紛争前の状態に戻ると想定している。商品価格は6月10日時点の市場価格に依拠し、米国の実行関税率は4月時点と同じ約13.5%の水準を見込む。つまり中東情勢がこの想定より長引けば、あるいは関税が動けば、数字は前提ごと入れ替わる。
IMFが挙げた下振れの要因も中東情勢が筆頭で、続いて原材料や中間財への貿易措置による供給の目詰まり、AI関連の収益性への期待が下方修正された場合の個人消費への影響、主要国の高水準の公的債務が国債利回りを押し上げる可能性が並ぶ。上振れの要因としては、AI関連投資の急増と、和平合意によるサプライチェーンの回復が挙げられている。
G20では重要鉱物の輸出規制の撤回を求めた
資料の後半は、8月31日から9月1日にかけて米国アシュビルで開かれたG20財務大臣・中央銀行総裁会議と、8月31日のG7財務大臣・中央銀行総裁会合の内容である。
G20で片山財務相は、重要鉱物の恣意的な輸出規制の撤回を求め、供給網の多様化と強靱化の重要性を指摘した。議長声明には、ホルムズ海峡における自由で安全かつ予見可能な航行が不可欠であること、各国に不要な輸出規制を控えるよう求めることが盛り込まれた。貿易黒字国と赤字国のどちらにも偏りを直す取り組みが必要だとする点や、途上国の債務再編を進める「共通枠組」の実施を強化する点も声明に入っている。G7の方では、フロンティアAIが金融面にもたらすリスクが議論され、片山財務相はAIが検出した脆弱性への対応で優先順位を決めることや、多層防御などの基本的なサイバーセキュリティ対策を着実に進めるべきだと述べた。ウクライナについては、同国のマルチェンコ財務相がオンラインで参加して支援と対露制裁が話し合われた。
米財務長官とは「秩序だった円相場」の重要性を確認
会合の場では個別の会談も行われた。資料によると、片山財務相は米国のベッセント財務長官と世界経済の幅広い課題について意見を交わし、「秩序だった円相場は米国を含む世界の金融市場の安定のために不可欠」であることを確認した。円相場をめぐっては、9月上旬に急速な円高が進んだ際にも、片山財務相が日米協調介入を実施したときから対応方針は変わっていないと説明している(片山財務相、円高進行でも「対応方針は一切変わらない」 日米協調介入の枠組み維持 米財務長官の「胴元」発言には論評避ける)。今回の確認は、その方針が日米の間で引き続き共有されていることを、財務省が公表資料の形で示したものだ。
このほか片山財務相は、米国のウォーシュFRB議長、英国のヒーリー財務相、ポーランドのドマンスキ財政・経済相、IMFのゲオルギエバ専務理事、世界銀行のバンガ総裁と面会し、インドのシタラマン財務相とも立ち話をした。一連の会議を通じて、補正予算で計上してきた経費を当初予算に移す「補正の当初化」などの予算編成改革と、「強い経済」と「財政の持続可能性」を両立させるという日本の財政政策の方針を説明したという。令和9年度の概算要求は143.1兆円にのぼり、新設された『「強く豊かな日本」投資枠』に12.2兆円が求められている(令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円 片山財務相「大幅な増加との指摘は当たらない」)。国際会議で説明した財政運営の考え方が、年末の予算編成でどう形になるかが次の焦点になる。
なお同じ分科会では、もう一つの議題としてFATF(金融活動作業部会)の第5次対日相互審査に向けた対応も取り上げられた。
