厚生労働省が公表した2025(令和7)年国民生活基礎調査で、日本の相対的貧困率が15.0%となった。前回の大規模調査にあたる2021(令和3)年の15.4%から下がった。17歳以下の子どもの貧困率も11.5%から11.0%に低下した。ただし、ひとり親と子どもだけで暮らす世帯の貧困率は44.7%と高止まりし、生活が「苦しい」と答えた世帯の割合はむしろ増えている。

相対的貧困率とは何か

相対的貧困率は、その国の中で標準的な暮らしから著しく取り残されている人がどれだけいるかを測る指標で、OECD(経済協力開発機構)の作成基準に基づいて算出されている。食べるものがないといった絶対的な水準ではなく、社会の真ん中と比べてどうか、を見るものだ。

計算の出発点は「等価可処分所得」である。世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整したもので、家族の人数が違う世帯どうしを比べられるようにする。2021年からは新基準が使われており、総所得から税や社会保険料などの拠出金を引くだけでなく、自動車税・軽自動車税・自動車重量税、企業年金の掛金、仕送り額も差し引いて計算する。

この等価可処分所得を全員分並べて真ん中の額を取り、その半分を「貧困線」と呼ぶ。2024(令和6)年の所得でみると中央値は277万円、その半分の138万円が貧困線だった。この138万円に満たない世帯員の割合が相対的貧困率15.0%である。所得は調査前年の1月1日から12月31日までの1年間のものを使うため、2025年の調査でも所得の数字は2024年のものになる。

貧困線が上がったうえでの低下

注意したいのは、貧困線そのものが上がっている点だ。中央値は2021年の254万円から2024年は277万円に、貧困線は127万円から138万円になった。ものさしの目盛りが11万円分だけ上に動いたうえで、それを下回る人の割合が15.4%から15.0%に減ったことになる。

1世帯当たりの平均所得金額も増えた。全世帯で575万2千円と、前年の536万円から7.3%伸びており、この伸び率は調査開始以来で最も高い。世帯の種類別では高齢者世帯が336万1千円、高齢者世帯以外の世帯が700万7千円、児童のいる世帯が857万3千円だった。

相対的貧困率の推移は次のとおりである。1985(昭和60)年の調査開始以降、おおむね上がり続け、2012(平成24)年の16.1%で頭打ちになった後、下がる局面に入っている。

調査年(所得の年) 相対的貧困率 子どもの貧困率 貧困線
1985(昭和60)年 12.0% 10.9% 108万円
1994(平成6)年 13.8% 12.2% 144万円
2000(平成12)年 15.3% 14.4% 137万円
2006(平成18)年 15.7% 14.2% 127万円
2012(平成24)年 16.1% 16.3% 122万円
2015(平成27)年 15.7% 13.9% 122万円
2018(平成30)年 15.7% 14.0% 124万円
2021(令和3)年 15.4% 11.5% 127万円
2024(令和6)年 15.0% 11.0% 138万円

2018年の数値は新基準によるもので、旧基準では相対的貧困率15.4%、子どもの貧困率13.5%だった。2018年より前は旧基準のため、長期の推移を見る際は同じものさしで比べていない区間があることになる。

ひとり親世帯だけが動いていない

子どもがいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯)に属する世帯員の貧困率は9.0%で、2021年の10.6%から下がった。ただし内訳を見ると、改善したのは片方だけである。

大人が二人以上いる世帯員の貧困率は8.6%から6.7%へ下がった。これに対し、大人が一人の世帯員、つまりひとり親と子どもだけで暮らす世帯は44.7%で、2021年の44.5%からほぼ動いていない。二人以上の世帯の6.7倍にあたる水準がそのまま残った。

この構図は1980年代から変わっていない。大人が一人の世帯の貧困率は、1997(平成9)年に63.1%という最高値を記録した後も5割前後で推移し、直近でようやく4割台半ばに下がった程度である。世帯全体の所得が上向いても、働き手が一人しかいない世帯は貧困線を越えにくい。介護を担う世帯でも似た構図があり、老老介護、75歳以上同士が37.1%で2001年以降で最高 2025年国民生活基礎調査 終日介護する人の64.6%は配偶者のように、世帯の中に支え手が一人しかいない状態が固定化している。

数字は改善、実感は悪化

貧困率が下がる一方で、暮らし向きの実感は逆を向いている。生活意識を「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた世帯は2025年調査で合わせて55.4%となり、前回の大規模調査である2022(令和4)年の51.3%を上回った。内訳は「大変苦しい」が23.2%、「やや苦しい」が32.2%である。

世帯の種類別では、母子世帯の82.1%、児童のいる世帯の61.5%が「苦しい」と答えた。貧困率の統計でひとり親世帯だけが取り残されていることと、母子世帯の8割超が苦しいと答えていることは、同じ調査の中で符合している。

相対的貧困率は、物価の動きをそれ自体では反映しない指標でもある。貧困線は「その年の中央値の半分」で決まるため、物価が上がって全員の暮らしが苦しくなっても、所得の分布の形が変わらなければ貧困率は動かない。2024年は名目の所得が7.3%伸びたが、その伸びがどれだけ実際の購買力になったかは、この指標からは読み取れない。働く側が賃金をどう受け止めているかは別の調査に表れており、中途採用を新卒より優先したい企業が40.0% 厚労省の転職者実態調査 辞めた理由の最多は「賃金が低かった」25.5%では、前の勤め先を辞めた理由として「賃金が低かったから」が25.5%で最多だった。

調査は3年ごとの大規模調査として14回目にあたる。2025年6月に世帯票・健康票を約30万世帯に配り約18万8千世帯を集計、7月に所得票・貯蓄票を約2万8千世帯に配り約1万7千世帯を集計した。結果は2026年7月15日に公表された。