中曽根康隆外務副大臣が10月13日から15日まで、高市早苗首相の特使としてトルコを訪問する。外務省が9日に発表した。総理特使としてトルコ・日本科学技術大学(TJU)の開学式典に出席するほか、トルコ政府要人と二国間関係の強化や中東情勢について意見交換する。TJUは日本とトルコの両政府が2013年に設立で合意し、日本が国際協力機構(JICA)を通じて整備を支えてきた大学で、合意から13年で開学を迎える。

13日に成田を出発、14日に開学式典

外務省が示した出張日程(いずれも日本時間)によると、中曽根副大臣は13日に成田空港を出発してトルコの首都アンカラに入る。14日にTJUの開学式典に出席し、同日アンカラを発って15日に羽田空港に戻る。

発表は、今回の訪問の目的を「総理特使としてトルコ・日本科学技術大学(TJU)開学式典に出席するほか、トルコの政府要人との間で二国間関係の強化や中東情勢について意見交換を行う予定」と説明している。会談の相手や議題の詳細は示していない。13日時点で訪問結果の発表は出ていない。

中曽根氏は第2次高市改造内閣で外務副大臣に就いた(第2次高市改造内閣の副大臣・大臣政務官名簿)。

2013年の首脳共同宣言から始まった大学

TJUの出発点は、2013年5月に当時の安倍晋三首相がトルコを公式訪問した際に両首脳が署名した「日本国とトルコ共和国の戦略的パートナーシップの構築に関する共同宣言」にある。宣言は、教育と科学技術の分野での協力強化の一つとして「原子力分野での専門家育成を含む両国の教育協力の強化を目的としたトルコにおける科学技術に関する合同の国際大学の設立」で一致したと記した。同じ宣言には、原子力協定の署名や、シノップ原子力発電所の建設をめぐる日本との交渉も盛り込まれている。大学の設立は、こうした原子力協力と同じ宣言の中で合意された。

その後、2016年6月に大学の設置に関する協定が両国間で署名され、2017年6月にはトルコの国内法として大学設置法が成立した。2019年8月2日にはイスタンブールで第1回理事会が開かれた。外務省によると、理事会では大学のコンセプトやキャンパスのデザインを議論し、建設予定地も視察した。日本側の理事には松本洋一郎・東京理科大学学長と坂田東一・日本宇宙フォーラム理事長が名を連ね、トルコ側からはボアジチ大学のメフメット・オズカン学長らが加わった。

2023年2月10日には、TJUの関係者が林芳正外相(当時)を表敬した。林外相は、TJUが両国の友好関係の象徴として期待される重要な事業だとしたうえで、「未曾有の大災害に直面するトルコにとって」優秀な若者を育て、復興に向けた同国の未来をつくる事業でもあると述べた。双方は防災分野を含めた日・トルコ間協力の重要性で一致した。同年9月の日・トルコ首脳会談でも、両首脳はTJUの開学など二国間の重要案件で連携していくことを確認している。

研究志向の大学院大学 円借款で施設を整備

TJUの姿は、JICAが2025年3月にまとめたトルコの国別分析ペーパーに書かれている。英語名は「Turkish-Japanese Technical University」。JICAは2023年に専門家の派遣とTJU整備のための協力準備調査を始め、トルコにおける科学技術イノベーションの拠点として設立に協力しているという。目指すのは「研究志向の大学院大学」で研究人材を育てること、中長期的には両国の学術協力を引っ張り、両国に共通する課題の解決策を議論し主導するアカデミアになること、さらに日本企業がトルコの優秀な産業人材を採用できるようにすることだと記している。

開学までの体制づくりも進んできた。2025年6月23日には、来日したムスタファ・ヴェルシャン・キョク学長とメスト・ギュネル理事会議長が松本尚外務大臣政務官を表敬した。外務省によると、松本政務官は前年末に任命された両氏の下で開学準備が進んでいることを歓迎し、キョク学長は開学に向けたプロセスを「加速化させていく決意」を述べた。

日本側の資金面での関与は、主に円借款になる。JICAが2026年4月30日に公表した専門家業務の案件予定では、JICAは「円借款による施設機材の整備等と開学準備支援を行うことになっている」とし、円借款事業は「現在形成中」と書かれている。

エネルギー分野は2027年秋 開学は段階的

今回の開学は、全分野がそろっての船出ではない。JICAの同じ資料は「2026年秋に一部分野の開学が予定されているものの、エネルギー分野については2027年秋の開学となる」と記している。JICAはこのため、TJUの事務局に専門家を置き、エネルギー分野の開学準備と大学の運営能力の強化を支える計画だ。業務内容には、日本の大学側のコンソーシアム委員会とTJUの執行部・教員との協議の準備、日本の大学との教育・研究・学生交流の促進、日本企業との産学連携(就職や研究)の促進、TJU関連の記念式典やシンポジウムの広報支援が並ぶ。専門家の渡航開始の目安は2026年11月中旬とされ、すでに「プロボスト」(学務担当の幹部)の専門家も派遣されている。

どの分野から学生を受け入れるのか、定員や教員の構成はどうなるのかは、今回の外務省の発表やJICAの資料には書かれていない。開学式典で示される内容が、大学の具体的な姿を知る手がかりになる。

外交関係102年 援助の累計は円借款で7,752億円

日本とトルコの関係は、1890年のエルトゥールル号事件にさかのぼる。外務省の基礎データによると、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が帰路に和歌山県串本沖で沈没し、乗組員581人が死亡したが、日本の官民の救護で69人が救助され、日本の巡洋艦でトルコへ送り届けられた。両国が外交関係を結んだのは1924年8月6日で、今年で102年になる。

経済面では、2024年のトルコの対日輸出は7.2億ドル、日本からの輸入は47.4億ドルで、日本からトルコへの直接投資額は1.1億ドル(2023年)だった。日本の対トルコ援助の累計(2022年度まで)は、有償資金協力(円借款)が借款契約ベースで7,752億円、無償資金協力が53.07億円、技術協力が471.8億円にのぼる。トルコに住む日本人は1,756人(2024年10月)、日本に住むトルコ人は7,571人(2022年6月末)だ。

トルコは人口約8,566万人(2024年)で、エルドアン大統領は2023年6月に再任された。今回の訪問で中曽根副大臣は、大学の式典に加え、トルコ政府要人と中東情勢について意見を交わす。どの要人と会い何を話したかは、訪問後に外務省が発表する結果で明らかになる。