国民民主党の田中健政調会長代行は6日の衆院本会議で、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる政府提出法案に反対し、自党提出の対案に賛成する討論を行った。最大の理由に挙げたのは、2029年4月に税率が8%へ戻ると、就業者負担軽減支援金の対象から外れる中間層の負担が大幅に増えるという点だ。党が討論の全文を公式サイトに掲載した。採決の結果は、6日午後の時点で衆議院の議案審議経過情報に載っておらず、本紙は確認できていない。

午前に首相が委員会へ、午後の本会議で4人が登壇

衆議院の審議中継の記録によると、財務金融委員会は6日午前9時に開き、政府案と国民民主党の対案を議題とした。答弁者の欄には高市早苗首相と片山さつき財務相らが並ぶ。審議は2時間32分で、午前11時14分に根本幸典委員長が発言した後、中道の大森江里子氏、田中氏、参政党の牧野俊一氏、チームみらいの峰島侑也氏が順に発言した。首相の出席が決まるまでの経緯は、消費税減税法案、6日の衆院財金委に首相が1時間出席 同日採決は中道が応じずに詳しい。

本会議は午後1時過ぎに始まり、審議中継の記録では51分間だった。6日の議事日程に載っていたのは公害健康被害補償法の改正案など4件だが、審議中継の案件欄には両法案が加わって6件が並ぶ。午後1時13分に根本委員長が4分間発言し、続いて中道の伊佐進一氏が10分、田中氏が11分、牧野氏が5分、峰島氏が7分、それぞれ発言した。

党の発表によると、田中氏が討論で示した態度は、対案に賛成、政府案に反対だ。党の発表文は政府案を「飲食料品消費減税・支援金法案」、対案を「中間層向け住民税減税法案」と呼んでいる。伊佐、牧野、峰島の3氏の発言内容は、本紙は各党の発表や会議録で確認できていない。

衆議院の議案審議経過情報は、政府案、対案とも審査終了と本会議議決の欄が空欄のままだ。財務金融委員会ニュースの一覧も10月30日の分までで、委員会の採決の結果も本紙は確認できていない。

反対の理由は5つ、最大は減税後の中間層

田中氏は「誰の負担が、いつ、どれだけ軽くなり、その効果が続くのか」を判断の基準に据え、政府案に反対する理由を5つ挙げた。

第一の理由が、減税の終了後に起きる負担増だ。政府案は2027年4月から2年間、飲食料品の税率を8%から1%に下げ、2029年4月に8%へ戻す。田中氏は、税抜き価格が変わらず税率の変更がそのまま価格に反映されれば、税込み価格は「約7%上がります」と述べた。税抜き1000円の食品なら、税込み1010円が1080円になる計算だ。政府は支援金で手取りが増えると説明しているが、田中氏は「それは、支援金を受け取れる人だけについての説明です」と退け、「2年後に終わるのは幅広い国民に及ぶ減税であり、残るのは対象を限った給付です」と述べた。

第二は、支援金の中身が見えない点を挙げた。どの所得水準から対象になり、いくらで対象外になるのかを政令に委ねていることを「白紙委任といっても過言でありません」と批判した。2027・2028年度の先行給付について、田中氏は年収119万円以下の層に年5000円程度という参考案が示されたと述べ、月にすれば約417円だと指摘している。本紙はこの参考案の原資料を確認できていない。

第三は所得の把握と事務の負担だ。給与、事業、副業で把握の方法や時期が異なることを挙げ、自治体のシステム整備費と毎年度の運営費を明らかにして、既存の税制度を使う減税方式と比べるよう求めた。第四は事業者への影響で、レジの改修や値札の変更を税率を下げる時と戻す時の2度求められる点を問題にした。第五は財源と地方財政で、国と地方の減収、給付、事務経費を含む所要額と財源を年度ごとに示すよう求めている。

田中氏の反対理由 法案の概要と政府の説明
減税終了後、対象外の中間層が負担増 首相は「税率を元に戻すことを持って負担増になるとの考え方はそもそも馴染まない」と答弁
対象と金額を政令に委ねている 所得の要件と支援額は「政令で定める」と概要に記載
所得の把握と自治体の事務 国がシステム整備、広報活動、相談窓口の整備などを行う
2度の税率変更で事業者に負担 1%なら0%よりシステム改修の期間を短縮でき、2027年4月から実施できると首相が答弁
財源と地方への影響 特例公債に頼らず、歳出・歳入全般の見直しで確保。地方消費税の減収は地方特例交付金で補塡
田中氏の反対理由と、法案の概要・政府の説明

出典: 新・国民民主党の討論全文、内閣官房・財務省の法案概要、10月27日の答弁書

政府は「対象者の大宗は上回る支援」と答弁

政府の説明は、10月27日の答弁書でまとまって読める。答弁書によると、高市首相は10月8日の参院本会議で、2029年度に税率を戻す際には本格導入する支援金によって「支援金の対象者の大宗は、飲食料品の消費税率引下げの効果を上回る支援を受けられます」と述べた。10月14日の衆院予算委員会では、時限的な措置なので税率を戻すことを負担増と見る考え方は「そもそも馴染まない」と答弁している。

田中氏の批判は、この説明の主語が「支援金の対象者」である点に向いている。対象から外れる人について、政府案の概要は検討規定の一つに「本支援金の対象とならない者に対する必要な措置の在り方」を置いた。答弁書が引く法案の第36条第4項と第5項は、低所得の就業者、病気や障害などで働くことが難しい人、就業していない高齢者等について、必要な措置を検討すると定めている。いずれも検討の規定で、所得が上限を超えて対象から外れる人を名指しする文言は、答弁書が引いた条文には無い。答弁書の詳しい内容は支援金の対象外の人に「1%分の支援」は検討せず 食料品減税法案で政府答弁書で扱った。

上限の額そのものも定まっていない。公明党の発表によると、中道の赤羽一嘉氏は4日の委員会で、政府答弁で「参考値」として示された所得上限350万円前後を取り上げ、「所得上限額を引き上げるべきだ」と主張した。法案の概要でも、合計所得の上限は「政令で定める額」のままだ。

対案は控除178万円と給付の組み合わせ

国民民主党の対案は、法律の名前を「就業者の租税及び社会保険料による負担の軽減のために講ずべき措置に関する法律案」といい、浅野哲氏ら4人が10月20日に提出した。衆議院の経過情報によると、11月2日に財務金融委員会へ付託されている。要綱は、税制と給付について政府に法制上の措置を求める内容で、次の4本を柱とする。

1本目は所得税だ。2027年分以後、基礎控除の最高額と給与所得控除の最低額の合計が178万円を下回らないようにする。2本目は個人住民税で、2028年度分以後、同じ合計を178万円まで引き上げる。田中氏は「政府の支援金の対象から外れる中間層にも、減税を通じて負担軽減を届けます」と説明した。3本目は16歳未満の扶養親族を扶養控除の対象に戻す措置で、所得税と住民税の両方に入っている。

4本目が給付だ。減税だけでは恩恵が及ばない就業者のために、2028年度以後、「租税・社会保険料負担軽減給付」を設ける。対象は、最低賃金で週10時間働いて得る年収を基本とする基準額以上の就業収入があり、社会保険料を納めていて、年収が住民税の課税最低限未満の人だ。それまでの間は、2026年の収入に基づき2027年度に給付金を支給する。給付の費用はいずれも国が負担し、住民税の減収は地方自治体へ補塡するよう政府に求めている。

財源について、田中氏は税収の上振れ、日銀が保有するETF(上場投資信託)の売却に伴う国庫納付金、外国為替資金特別会計の剰余金の活用を挙げた。そのうえで「売却代金や含み益を、そのまま使える財源とみなすことはできません」とも述べ、追加で使える収入を精査して年度ごとの必要額と対応させるべきだとした。要綱の附則には、法人税と消費税の抜本的な改革を2028年度末までに検討する規定もある。

参院は特別委を設置、自民会派は過半数に届かず

国民民主党は減税そのものに反対してきたわけではない。玉木雄一郎代表は10月13日の定例会見で「我々も負担軽減、減税に反対するものではない」と述べたうえで、2年後の中間層の負担増につながる法案を問題にしていた。党のこれまでの対応は国民民主・榛葉幹事長、食料品減税法案は参院で「重要広範議案に」 首相と関連大臣の出席求めるに記した。田中氏も討論の末尾で、政府に対案を取り入れ、本格的な給付付き税額控除の実現に取り組むよう求めている。

法案が衆院を通れば、審議の場は参院に移る。立憲民主党の発表によると、参院は4日の本会議で消費税・支援金法案に関する特別委員会を設けた。参議院の議案情報では、この法案の衆議院からの受領日と参院の付託委員会の欄はまだ空欄だ。

参院の勢力は衆院と異なる。11月5日現在の会派別所属議員数では、在籍247人に対して自民党・無所属の会は101人で、過半数の124人に届かない。立憲民主・無所属は39人、国民民主党・新緑風会は25人だ。

政府案が実施に移れば、2027年4月1日から2029年3月31日まで飲食料品の税率は1%になる。財源を特例公債に頼らず確保するとした点は、国の借金を増やさずに家計の負担を軽くするという意味で国益に沿う。一方で、支援金の対象と金額は政令に委ねられたままだ。所得の上限が決まらなければ、税率が8%へ戻る2029年4月に、どの所得層の手取りが減るのかを国民は計算できない。参院の審議で問われるのは、政府がいつ上限の案を示すかである。