財務省は9月25日、令和8年上半期(2026年1〜6月)の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況を公表した。金地金の密輸入の摘発は95件、押収量は約316キロで、前年同期の129件・約373キロからは件数で26%、押収量で15%減った。一方、直前の半年である令和7年7〜12月の63件・約52キロと比べると、件数は51%増え、押収量は約6倍になった。数値はいずれも速報値である。
件数は旅客が7割、量は航空貨物が8割
密輸の形態別に見ると、摘発件数95件のうち航空機旅客によるものが70件で、全体の74%を占めた。押収量では逆に、航空貨物によるものが約244キロで全体の316キロの77%に達した。航空機旅客による押収量は約72キロで、件数では7割を占めながら量では2割強にとどまる。1件あたりでは航空貨物が約14キロ、航空機旅客が約1キロと、10倍以上の開きがある。このほか国際郵便が7件で約1キロ、船舶旅客が1件で、海上貨物の摘発はなかった。
仕出地別では、香港からが46件で全体の48%、中国からが29件で同31%を占め、両者で79%にのぼった。
金密輸の摘発は年によって大きく振れてきた。最も多かったのは平成29年の1347件・約6277キロで、平成30年は1086件・約2054キロ、令和3年には5件・約27キロまで落ち込んだ。その後は令和5年が219件・約302キロ、令和6年が494件・約1334キロと増え、令和7年は192件・約425キロだった。
狙いは輸入時に納めるべき消費税
税関は金密輸の目的について、金を隠して日本国内に持ち込むことで内国消費税の納税を回避し、その金を国内で消費税込みの価格で金買取事業者に売却することで、消費税額に相当する分を利益として得ることだと説明している。輸入するときに税関へ納めるべき消費税を納めないまま、国内では税込みの価格で売るため、その差額がそのまま手元に残る仕組みである。消費税をめぐる徴収の課題は国内取引でも続いており、国税の滞納、2025年度に新たに9935億円 半分超の5172億円は消費税 滞納残高は3年続けて増え9847億円 で扱った滞納の構図とも重なる。
この仕組みのため、金密輸は消費税率と金価格に連動して動いてきた。平成26年4月に消費税率が8%へ引き上げられた後に急増し、平成29年には1347件・約6.3トンが摘発された。財務省関税局は平成29年11月に「ストップ金密輸」緊急対策を策定し、取締りの強化や厳罰化などに取り組んだ。その結果、翌年には急減し、コロナ禍で日本への入国者数が激減したことも重なって、摘発は低い水準で推移した。
税関は令和6年11月の資料で、訪日外国人旅行者数が急速に回復していることに加え、金価格の上昇によって脱税から得られる不正な利益も上昇しているため、摘発件数と押収量が再び急激な増加に転じたとしている。同年11月28日には臨時税関長会議を開き、関税局長が各税関長に水際取締りをより一層強化するよう指示した。隠匿された金の摘発に効果が期待される検査機器の整備も検討しているという。訪日客に関わる消費税の扱いは、免税制度、11月1日に「リファンド方式」へ 旅行者はいったん税込みで払い出国時に返金 経産省が免税店向け準備ガイド のとおり、別の面でも見直しが進んでいる。
等身大の人形に242キロ
今回の資料には主な摘発・告発の事例も載った。東京税関は令和8年1〜3月、中国から到着した航空貨物の等身大人形に隠匿された金地金約242キロを摘発し、同年7月に中国人5名と日本人1名を関税法違反などで告発した。大阪税関は令和7年2月に香港から関西空港へ届いた航空貨物の電気スタンドと充電器に隠匿された板状の金約25キロを摘発し、令和8年6月に中国人など2名を告発した。
旅客による密輸では、東京税関が令和8年1〜3月、香港から成田空港に到着した航空機旅客30名(香港人25名、中国人5名)から粉状の金約45キロを摘発した。このうち香港人女性1名は約2.7キロを7つの塊に分けて体腔内に隠していた。税関は近年、旅客が加工した金を身辺に隠す事例や、海上・航空貨物に巧妙に隠す事例が増えているとしている。金密輸に対する関税法上の罰則は、5年以下の懲役、もしくは最高で金の価格の5倍の罰金など、またはその両方が科される。
処分62件のうち告発は2件
全国の税関が犯則調査を行った結果、令和8年上半期に処分した金地金密輸入事件は62件で、前年同期の98件から37%減った。内訳は検察官への告発が2件、税関長による通告処分が60件で、通告は前年同期の98件から39%減った。告発は前年同期が0件だったため、資料では「全増」と記載されている。
告発は、犯則調査の結果その情状が拘禁刑に相当するとき、または通告処分を履行する資力がないときなどに検察官へ告発して刑事手続に移すもので、通告は情状が罰金刑に相当するときに税関長が罰金相当額や没収該当物件の納付を求める行政処分である。通告に応じない場合は告発に移る。
なお同じ資料によると、不正薬物全体の摘発は387件、押収量は約929キロで、前年同期の531件・約2197キロから件数で27%、押収量で58%減った。このうち覚醒剤は摘発46件で前年同期の55件から減ったものの、押収量は約523キロと前年同期の約373キロから40%増えている。
