国税庁が2026年8月に公表した「令和7年度租税滞納状況の概要」によると、2025年度に新たに発生した国税の滞納額は9935億円だった。前年度の9925億円から10億円(0.1%)増え、ほぼ同じ水準にとどまった。税目別では消費税が5172億円で全体の52.1%を占め、半分を超えている。年度末の時点でまだ徴収できていない滞納残高は9847億円で、前年度末の9714億円から133億円(1.4%)増えた。
課税が決まった額の98.9%は滞納にならない
2025年度に申告や更正で課税が決まった額(徴収決定済額)は89兆7949億円で、前年度の81兆1544億円から10.6%増えた。このうち98.9%は滞納にならずに納付され、滞納になったのは1.1%だった。この割合は前年度の1.2%から下がっている。
徴収決定済額は、国が実際に受け取った税収とは別の数字だ。「いくら課税するか」が決まった額を指し、その後に納付されたか滞納になったかは問わない。本紙が7月に伝えた2025年度の国の税収84兆2226億円 6年連続で過去最高 法人税はバブル期超えは決算として国庫に入った額で、集計の考え方が違う。
長い目で見れば滞納は大きく減った。新たに発生する滞納額は、ピークだった1992年度の1兆8903億円のおよそ5割にあたる。滞納残高も、ピークの1998年度の2兆8149億円に対して3割ほどの水準だ。ただし残高は、2023年度に前年度比3.7%、2024年度に4.7%、2025年度に1.4%と、3年続けて増えている。新たに発生する滞納額が、その年に処理し終えた額をわずかに上回る状態が続いているためだ。2025年度に処理し終えた額(整理済額)は9802億円で、前年度より315億円(3.3%)増えたが、新規発生の9935億円には届かなかった。
なお、これらの数字は国税分で、地方消費税を含まない。地方消費税は別枠で示されており、2025年度に新たに発生した滞納は1458億円、年度末の残高は1073億円だった。
消費税は滞納になる割合が高い
税目別に見ると、消費税の比重が際立つ。新たに発生した滞納9935億円のうち5172億円が消費税で、52.1%を占めた。滞納残高でも9847億円のうち3893億円と、39.5%にあたる。
課税が決まった額に対する比率でも差がある。消費税は26兆5657億円の課税が決まり、うち5172億円が滞納になった。割合にすると1.9%で、全税目の1.1%を上回る。法人税は23兆3180億円に対して1456億円で0.6%、源泉所得税は23兆2541億円に対して397億円で0.2%にとどまる。最も高いのは自分で申告して納める申告所得税で、5兆1322億円に対して2146億円、4.2%だった。
消費税は、商品やサービスの代金と一緒に受け取った税を、事業者が後からまとめて納める仕組みだ。納付の時期までに手元に資金が残っていなければ滞納になる。国税庁は、将来納める国税をあらかじめ口座引き落としで納めておける「予納ダイレクト」を、消費税などの計画的な納税に便利だとして事業者に呼びかけている。消費税の負担をめぐっては、食料品の消費税1%、企業の54.5%が「経済の活性化につながらない」 食品小売は売上1.58%増、飲食店は3.94%減を見込むのように、事業者側の受け止めを聞いた調査も出ている。
もっとも、消費税の滞納そのものは前年度から減っている。新たに発生した額は5298億円から5172億円へ、残高は3956億円から3893億円へ下がった。代わりに増えたのが申告所得税で、新たな滞納は1937億円から2146億円へ、残高は2708億円から2845億円へ増えた。相続税も491億円から613億円へ増えている。法人税は1627億円から1456億円へ減った。
電話とAIで滞納を追う
国税庁は、新たに発生した滞納を納税コールセンターでまとめて扱い、電話で納付を促している。2025年7月から2026年6月末までに催告の対象になったのは114万8000者で、このうち完納したのが82万9000者(72.2%)、分割納付などを約束した納付誓約が11万6000者(10.1%)だった。催告を続けているのが7万3000者、税務署に引き継いだのが13万者となっている。
滞納になる前の段階でも接触している。期限内の納付を促すはがきを約31万者に送り、期限前の納付指導として約22万者に、督促状を出す前の指導として約63万者に電話をかけた。
AIも使っている。予測AIには、過去にどう接触できたかの記録や申告書のデータ、業種などを読ませ、滞納者ごとに電話・訪問(臨場)・文書のどれが接触できる可能性が高いか、電話がつながりやすい曜日と時間帯はいつかを予測させている。全国の国税局と税務署がこの予測を使って滞納整理にあたる。生成AIには滞納者ごとの整理の経過を要約させ、どの事案から先に着手するかの選定や、担当者が代わるときの引き継ぎに使っている。国税庁は、納税者の情報が外部に出ないよう対策をとった環境で使っていると説明している。
悪質な事案への対応も示された。財産を隠すなどして徴収を免れようとした行為を罰する滞納処分免脱罪での告発は、2025年度に9件・14人(社)で、前年度の6件・8人から増えた。財産を他人に移した行為を取り消すよう求める詐害行為取消訴訟など、国が原告となって起こした訴訟は172件で、前年度の147件を上回った。海外に財産が移った事案について租税条約に基づき相手国の税務当局に徴収を頼む「徴収共助」の要請は22件で、前年度の15件から増えている。この制度が始まった2013年10月から2026年6月末までの累計は146件となった。
滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が出されたものを指す。滞納になっても多くは短期間で解消している。2024年度に課税が決まった分でみると、2026年3月末の時点で99.8%の処理が終わり、残っていたのは1301億円(0.2%)だった。租税滞納状況の概要は、国税庁が毎年8月ごろに公表している。
