国民民主党の玉木雄一郎代表は10月8日の衆議院本会議で、高市首相の所信表明演説に対する代表質問に立った。党が公表した質問全文によると、玉木氏は経済政策と物価高対策を質問の中心に据え、財政の持続性をめぐる「ドーマー条件」が満たされていないとして首相の見解を求めたうえで、2027年4月に始まる飲食料品の消費税減税について農家支援・外食支援・中間層の増税の3点に絞って質問した。第222回臨時国会の代表質問初日である。
名目成長率の見通し3.0%に対し、10年債の金利は3.089%
玉木氏は「高市総理が財政健全化の指標とする『債務残高対GDP比率』を安定的に低下させるためには、経済成長率が国債の利子率を上回る『ドーマー条件』を満たす必要がある」と2月の代表質問でも述べたと振り返り、「しかし、内閣府による今年度の名目GDP成長率見通しが3.0%である一方、10年債の金利が3.1%を超え、財政の持続性に懸念が生じています」と指摘した。
ここで言う条件は、借金の残高を経済の大きさで割った比率がどう動くかという算術の話である。経済が名目で膨らむ速さが国債に付く金利を上回っていれば、分母の方が速く増えるため、新たな借り入れを増やさなくても比率は下がっていく。逆に金利が成長率を上回ると、利払いの分だけ分子が自然に膨らみ、比率は放っておいても上がる。首相が掲げる「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」が成り立つかどうかは、この二つの数字の大小に左右される。
玉木氏が挙げた2つの数字は、いずれも一次情報で確認できる。内閣府が7月30日に公表した年央試算は、2026年度の名目GDP成長率を3.0%程度と見込んでいる。1月23日に閣議決定した政府経済見通しの3.4%程度から下げた水準で、2025年度の実績4.1%も下回る。実質の成長率は0.9%程度、消費者物価上昇率(総合)は2.2%程度としている。一方、財務省が公表する国債金利情報によると、10年債の利回りは質問前日の10月7日が3.111%、質問当日の10月8日が3.089%だった。10月1日は3.092%で、月初から3.1%前後で推移している。名目成長率の見通しと10年債の金利がほぼ並ぶ水準にあり、玉木氏の言う条件は満たされていない計算になる。
首相は所信表明で「機動的に講じます」と述べていた
首相官邸が公表した10月5日の所信表明演説で、高市首相は「財政の持続可能性」を「責任ある積極財政」を進める上での当然の前提と位置づけ、「国・地方の債務残高対GDP比を安定的に引き下げるとの目標を中核に位置付け、プライマリーバランスは単年度ではなく複数年度で管理し、経済成長がもたらす効果も踏まえ、経済、物価、税収、金利、利払い費、市場の状況などを総合的に検証しながら、通年の国債発行額を適切にコントロールしてまいります」と述べていた。そのうえで「経済や市場が想定と異なる動きを示した場合には、その影響を十分に分析し、必要な対応を機動的に講じます」と語っている。
玉木氏はこの「機動的」という言葉を手がかりに、大規模災害や感染症の大規模拡大があった場合に、2年後に消費税率を8%へ戻すのを止めたり延期したりすることはあり得るのかと質し、「総理の明確な答弁を求めます」と述べた。また、米国のベッセント財務長官が「リフレ政策をやめるべきだ」と発言して以降、片山財務大臣と城内経済財政大臣がそろって高市政権の経済政策は「リフレ政策ではない」と発信していることに触れ、首相自身がいまはリフレ政策を取るべき時ではないと考えているのかを問うた。そうであるなら、政府が利上げに口出しせず日銀の独立性を尊重することや、積極財政を経済状況に応じて機動的に見直すことを「総理の口から明確に述べ、市場の懸念を払拭すべき」と求めている。
食料品消費税減税、農家・外食・中間層の3点
玉木氏は、2月の代表質問で消費税減税に関する「10の懸念」を指摘したとしたうえで、今回は農家支援、外食支援、中間層の増税の3点に絞った。
農家については、免税事業者や簡易課税事業者の農家に「売上高を踏まえた給付金制度」を設けるとされている点について、「売上の5.4%分を基準として給付との報道もありますが、事実ですか」「その給付金は誰がいつ、どのように配るのでしょうか。税務署ですか、農協ですか」と制度設計をただした。農協の組合員でない農家も受け取れるのか、課税事業者にならなくても受け取れるのかも確かめ、「今回の減税で離農を促す結果になりませんか」と述べた。課税事業者になった農家には還付までの資金繰りが課題になるとして、地元の卵農家から還付額が3000万円から1億5000万円に跳ね上がると言われたと紹介し、利子を含めた対応を明確にするよう求めた。
外食については、外食とテイクアウトの価格差が現在の2%差から9%差に広がり「外食離れ」が進むとの懸念を挙げた。政府の対策が「影響の及ぶ業態などを見極めた上で」とされ、減税を実施してからの後回しになっていると批判し、掲げられている「テイクアウト等の多角化支援」では「利益率の高い生ビールなども出せず、外食支援策とは言えません」と述べた。党としては2年間クレジットカードの手数料負担を補助することを提案し、平均3%超で先進国では最高水準という手数料の引き下げが効果の高い支援になると主張した。
「支援金」の対象年収と金額を国会で示すよう要求
新設される「就業者負担軽減支援金」について、玉木氏は首相が「本丸」としてきた「給付付き税額控除」が「税額控除なき給付」になっていると指摘し、「一体、年収いくらの人が何円もらえるのか、この場で具体的に示してください」と求めた。金額と対象所得層は政令で定めることとされており、これが分からないと2年後に税率を8%へ戻すときに誰が実質的な増税になるかが分からないとして、国会で明らかにすることが「法案審議の前提条件だ」と述べた。支給の回数や国と地方の費用負担の決まり方は「就業者負担軽減支援金」の支給は年1回 2029年度だけ4月と秋の2回に分けて半年分ずつ 費用の負担割合は年末までに国と地方で協議で伝えたとおりで、骨組みは固まりつつあるが、金額と対象年収は決まっていない。
玉木氏は、支援金の対象が報道で年収300万円以下とされていることから「年収300万円の壁」ができると述べ、控除額の引き上げによって所得税・住民税を年4万〜5万円程度減らす「現役世代減税」を提案した。具体策としては、所得税の「103万円の壁」を178万円へ引き上げる措置の継続、住民税の「119万円の壁」の178万円への引き上げ、そのうち生活保護水準である160万円までは速やかに上げることを挙げた。給付の時期についても、今月から3000品目以上の食料品が値上がりし電気・ガスへの補助金も先月末で終了したのに、減税は2027年4月から、1%分の給付は報道では2027年秋ごろだとして、予備費や補正予算を使って年内に給付すべきだと述べた。
財源については、減税の財源に限れば首相の「御心配には及びません」という答弁に同感だとしつつ、防衛力強化、成長投資、金利高騰による利払費の増加とインフレによる社会保障給付の増加という3つを「歳出3兄弟」と呼び、消費税減税と合わせた一体的な説明がなければ市場の信認は得られないと主張した。首相は所信表明で減税と給付の財源を「特例公債に頼らずに確保する」と述べている。この特例公債が何かは首相が言う「特例公債に頼らず」の特例公債とは 財政法が原則禁じる赤字国債 2026年度は当初22兆8680億円、補正後は25兆9815億円 発行には5年ごとの特例法が要るで整理した。
なお、今回確認できたのは質問の側だけである。党の公式サイトは質問全文を掲載しているが、首相や各大臣の答弁は載せていない。衆議院の会議録が公開されるまでには数週間かかるため、本記事では政府側の答弁には触れていない。
