外務省は10月9日、国連安全保障理事会の決議で禁じられている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対し、フランスが海軍哨戒機「ファルコン50M」を派遣し、10月中旬から11月上旬までの間、警戒監視活動を行う予定だと発表した。国連軍地位協定に基づき、在日米軍嘉手納飛行場(沖縄県)を拠点に使う。フランスによる航空機での警戒監視は2019年以降7度目となる。日本政府は「こうした取組を歓迎します」とした。
哨戒機が嘉手納から約3週間 昨年は普天間を使用
外務省の発表によると、今回派遣されるのはフランス海軍の哨戒機「ファルコン50M」で、活動期間は10月中旬から11月上旬まで。国連軍地位協定に基づいて在日米軍嘉手納飛行場を使い、航空機による警戒監視活動を行う。
フランスは前年も同じ時期に同じ機種を送っていた。外務省が2025年10月16日に出した発表では、「ファルコン50M」が10月中旬から11月中旬まで、国連軍地位協定に基づき在日米軍普天間飛行場を使って、2019年以降6度目となる航空機による警戒監視活動を行う予定とされていた。今回は拠点が普天間から嘉手納に変わり、終わりの時期は11月中旬から11月上旬に早まった。
フランスは航空機だけでなく艦艇も出している。外務省の2025年11月25日の発表によると、フランスは海軍フリゲート「プレリアル」を派遣し、同年10月下旬から日本周辺の海域で、2019年以降8度目となる艦艇による警戒監視活動を実施した。航空機と艦艇は別々に回数を数えており、今回の「7度目」は航空機による活動の回数にあたる。
航空機による活動の発表では、在日米軍の飛行場を使う根拠として毎回、国連軍地位協定が挙げられている。艦艇の場合は「我が国周辺海域において」活動したと記され、拠点となる飛行場の記載はない。
「瀬取り」とは何か 安保理決議2375号が禁じる洋上の積み替え
「瀬取り」は、海の上で船から船へ物資を移し替えることを指す。外務省の解説ページによると、2017年(平成29年)9月に採択された国連安保理決議第2375号は、国連加盟国に対し、北朝鮮籍船舶に対する、または北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積み替えを容易にしたり、関与したりすることを禁じた。外務省は、同年12月に採択された決議第2397号を始めとして、国際社会が一致団結して北朝鮮の政策を変えさせなければならないとしている。
日本政府自身も、疑わしい事案を公表してきた。外務省の解説ページには、北朝鮮船籍のタンカーと他の船舶による「洋上での物資の積替えの疑い」として16件の発表が並ぶ。最も古いのは2018年(平成30年)1月20日付で、北朝鮮船籍タンカー「Rye Song Gang 1号」とドミニカ国船籍タンカー「Yuk Tung号」の事案。最も新しいのは2020年(令和2年)2月7日付の、北朝鮮船籍タンカー「CHON MA SAN(チョンマサン)号」と船籍不明の船舶による事案だった。相手側が「船籍不明の小型船舶」とされた事案も多い。
2026年は9件目の発表 8か国が日本周辺に
外務省の解説ページで2026年に入ってからの関係国による警戒監視活動の発表を数えると、今回のフランスで9件目になる。3月にオーストラリア(13日)、カナダ(23日)、ニュージーランド(25日)、6月にオランダ(15日)、カナダ(16日)、9月にニュージーランド(8日)、イタリア(17日)、オーストラリア(18日)の発表があった。
年の前半は艦艇と航空機が交互に入った。オーストラリアは海軍フリゲート「トゥーンバ」を派遣し、2月下旬から3月中旬まで日本周辺の海域で、2018年以降14度目となる艦艇による活動を実施した。カナダは哨戒機「CP-140」で、3月下旬から4月上旬まで嘉手納飛行場を使い、2018年以降15度目となる航空機による活動を予定した。6月にはオランダが海軍フリゲート艦「デ・ロイテル」で6月上旬から中旬まで2024年以降2度目の艦艇による活動を、カナダが海軍フリゲート「シャーロットタウン」で5月下旬から6月中旬まで2018年以降15度目の艦艇による活動を実施した。
9月以降の発表も、規模や手段は国によって異なる。オーストラリアは空軍哨戒機「P-8A」を派遣し、9月中旬から10月上旬まで嘉手納飛行場を使い、2018年以降17度目となる航空機による活動を行う予定とされた。イタリアは海軍多用途戦闘艦「ジョヴァンニ・デレ・バンデ・ネーレ」を派遣し、8月下旬から9月中旬まで日本周辺の海域で、2024年以降3度目となる艦艇による活動を実施した。ニュージーランドは海軍フリゲート「テ・マナ」と補給艦「アオテアロア」で、8月中旬から9月上旬まで2024年以降3度目の艦艇による活動を実施したほか、3月下旬から4月中旬には空軍哨戒機「P-8A」で2018年以降9度目となる航空機による活動を予定していた。
外務省の解説ページに発表が載っている国は、英国、フランス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、イタリア、オランダの8か国にのぼる。北朝鮮は10月12日朝にも弾道ミサイルを発射した(北朝鮮が12日朝に弾道ミサイル2発 1発は約910キロ超飛翔、変則軌道の可能性)。日本周辺の安全保障環境は防衛の全体像 予算は3年で3割増、装備の値段は5〜7割上がり自衛官は減るでまとめている。
日本政府は「歓迎」 情報収集を続け関係国と連携
外務省は今回の発表で、北朝鮮による「完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄」の実現に向け、国際社会が一致団結して安保理決議の実効性確保に取り組む観点から、フランスの取り組みを歓迎すると表明した。
あわせて、日本としても安保理決議違反が疑われる船舶の情報収集をしており、「引き続きフランスを含む関係国及び関係国際機関と緊密に協力を行ってまいります」とした。オーストラリアやイタリアについての9月の発表でも、同じ趣旨の文言が並んでいる。
外務省の解説ページは、北朝鮮の核・ミサイル開発を「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と位置づけている。そのうえで、米国や韓国だけでなく中国・ロシアを含む国際社会と密接に連携しながら、「瀬取り」への対応を含め安保理決議の実効性を確保していく必要があるとしている。
