文部科学省は10月9日、令和9年度から医学部医学科の収容定員を増やす私立大学23校の学則変更認可申請の一覧を、大学設置・学校法人審議会のページで公表した。23校の増員は合わせて314人。参考資料として示した大学別の一覧によると、国公立大学を含めて68大学が令和9年度に計940人の臨時増員を予定している。増員のうち902人は、都道府県の奨学金と組み合わせて地域医療を担う学生を選ぶ「地域枠」に充てる。

私立23校、岩手医科大と順天堂大が30人超

申請一覧によると、私立23校のうち増員が最も多いのは岩手医科大学(岩手県矢巾町)で、増員前の95人に35人を上乗せして130人とする。順天堂大学は105人に34人を加えて139人、自治医科大学(栃木県下野市)と昭和医科大学はいずれも23人、埼玉医科大学は20人を増やす。少ない方では大阪医科薬科大学が2人、金沢医科大学と久留米大学が3人だった。

一覧の「令和8年度入学定員」と並べると、23校の多くは令和9年度も令和8年度と同じ定員を保つ形になる。たとえば岩手医科大学は令和8年度も130人で、臨時増員を外すと95人に戻るところを、申請によって130人を維持する。一方、藤田医科大学は令和8年度の122人から120人に、関西医科大学は121人から116人に、久留米大学は114人から113人に減らす計画だ。近畿大学は107人から110人に増える。

東京都内に医学部を置く順天堂大学、昭和医科大学、帝京大学、東京医科大学、東邦大学、日本大学、日本医科大学の7校には、備考に特例の記載がある。「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」は、特定の地域にある大学の学部の定員増を抑えている。7校の申請は、この抑制の除外規定を適用した特例とされた。

申請一覧の注記によると、今回の増員は「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)などに基づき、令和14年度までの期限を付けたもので、地域の医師確保と研究医の養成を目的とする。国立大学については37校の設置計画の一覧が別に示され、増員は計534人で、いずれも基準に「適合」、判定案は「可」とされている。

国公立と合わせて68大学・940人

文科省が参考に付けた「大学別医学部入学定員等一覧」は、医学部を置く81大学の令和9年度の定員をまとめている。臨時増員を除いた定員の合計は8396人で、ここに940人を上乗せし、令和9年度の入学定員は9336人となる計画だ。令和8年度の9377人より41人少ない。

設置者別に見ると、増員は国立大学が534人、公立大学8校が計92人、私立大学23校が計314人となる。一覧から集計すると、臨時増員を予定するのは68大学で、残る13大学は増員がない。増員がないのは北海道大学、旭川医科大学、東京大学、九州大学、宮崎大学、慶應義塾大学、東京慈恵会医科大学、東京女子医科大学、杏林大学、国際医療福祉大学、東北医科薬科大学、産業医科大学、福岡大学だった。

1校あたりの増員が最も多いのは福島県立医科大学で、増員前の85人に45人を加えて130人とする。筑波大学が36人、岩手医科大学が35人、順天堂大学が34人、新潟大学が32人で続く。新潟大学は令和8年度の140人から132人に定員が下がる。

940人の内訳は、地域枠が66大学で902人、研究医枠が19大学で38人。研究医枠は、研究医を養成・確保するため、複数の大学と連携して学部と大学院を通した教育に取り組む大学に、1校3人以内の増員を認めるものだ。令和8年度は地域枠が935人、研究医枠が43人だった。

地域枠は都道府県の奨学金と組み合わせ

地域枠は、都道府県が医療計画などに基づいて奨学金を設け、大学が地域医療を担う意思を持つ学生を選抜する仕組みだ。文科省の資料によると、令和8年度の地域枠935人のうち、自治医科大学を除く406人は、地域で不足する診療科を示して学生に選んでもらう「診療科選定地域枠」として増員された。

各大学の取り組みをまとめた資料には、増員する人数を都道府県ごとに割り振った内訳と、教育内容の概要が並ぶ。弘前大学は27人全員を青森県の枠とし、1年次から地域医療の実習を組み込んでいると記している。他県の大学が県外の地域枠を受け持つ例もあり、1つの大学が複数の県の枠を抱える形になっている。

医師の地域偏在は数字にも表れている。厚生労働省の立入検査では、医師数が医療法の標準に届かない病院157か所 北海道・東北が55で最多 厚労省の立入検査、7618病院を調査のとおり、医師数の標準を満たさない病院は北海道・東北に最も多かった。文科省の資料は、地域枠を「地域の医師確保の観点からの定員増」と位置づけている。

定員は抑制から増員、そして上限へ

医学部の定員は長く抑えられてきた。文科省の資料によると、昭和57年と平成9年の閣議決定で入学定員は7625人までに抑制された。医師不足が問題になると、平成18年の「新医師確保総合対策」で青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の10県に各10人、平成19年の「緊急医師確保対策」で全都道府県に原則各5人の増員が認められ、平成20年度の定員は7793人になった。

平成21年度には「経済財政改革の基本方針2008」を踏まえて8486人に増やし、平成22年度以降は地域の医師確保などを理由に、最大で9420人まで増えた。

令和9年度については、医学部の総定員を令和7年度の9393人を上限とし、令和8年度末が期限だった臨時増員の枠組みを令和9年度末まで1年延長することとされた。文科省の資料は増員期間を「令和9年度限り」と明記している。令和9年度の計画9336人は、この上限を57人下回る。

審議会の審査を経て認可へ

国立大学と私立大学では手続きの形が異なる。私立大学は学則の変更について認可を申請し、国立大学は収容定員を増やす設置計画を示す。文科省が参考に付けた国立大学37校の計画一覧では、校地・校舎と教員について各校とも基準に「適合」とされ、判定案はすべて「可」、附帯事項は付いていない。37校の1年次の入学定員は、臨時増員を除くと3584人で、534人を上乗せして4118人とする。令和8年度の4128人より10人少ない。2年次への編入学定員は令和8年度の174人から164人となる。

私立大学の今回の一覧は、大学設置・学校法人審議会の審議にかける申請を示したもので、審査を経て認可の可否が決まる。文科省は問い合わせ先として、諮問については高等教育局高等教育企画課大学設置・評価室、医学部の定員増については高等教育局医学教育課を挙げている。

令和10年度以降の医学部定員の扱いは、今回の資料には示されていない。臨時増員の枠組みが令和9年度で区切られているため、地域枠を含む940人分の定員をどう扱うかが次の焦点となる。今回の申請と計画は、令和9年度に入学する学生の定員そのものにかかわる。