デジタル庁は10月6日、政府相互運用性フレームワーク(GIF)のバージョン2.4を公開し、行政分野の実装データモデルに「見積」を新しく加えた。国や自治体がシステムを調達するときに受け取る見積書の情報を、人の作業にあたる「役務明細情報」、クラウド利用料などの「経費明細情報」、一般管理費などの「諸費用明細情報」の3つに分解して整理するためのひな形である。文書名は「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-451-9 実装データモデル(行政)見積(β版)」で、改定履歴には「2026年10月06日 全体 β版」の1行だけが載る。

デジタル庁は作成の背景として、政府・自治体等が調達するシステム開発費用とシステム運用保守費用が上昇傾向にあるといえると述べている。そのうえで、見積情報に標準的な構造がないため分解することができず「見積金額の総額ベースでの比較にとどまらざるを得ない」と現状を説明し、作業量の工数が増えているのか、役務の単価が上昇しているのか、為替等の影響でクラウドサービスの利用料が上がっているのか、インスタンス構成の変更によるものなのかを切り分けられないことを課題に挙げた。

見積を3つの明細に分ける

見積情報は、宛先組織名・案件番号・件名・作成日・見積有効期限・法人番号・法人名・法人住所などの基本項目に、3種類の明細情報がぶら下がる構造になっている。

役務明細情報の項目は、役務分類(記入例は「設計経費」。ほかに開発経費、テスト経費、プロジェクト管理支援経費など)、役務細分類(「基本設計」など工程で分ける)、役割(「プロジェクトマネージャ」「システムエンジニア」「プログラマ」など9種類を例示)、ランク、単価、数量、単位(人月、人日、人時など)、明細金額。経費明細情報は、経費分類(「サービス利用料」「ソフトウェア買取経費」)、品名(記入例は「Amazon EC2」)、品名詳細(「Linuxサーバー × 2」)、単価、数量、単位(ヵ月、個など)、明細金額が並ぶ。諸費用明細情報は一般管理費、交通費、旅費などが対象で、詳細欄の記入例には「役務費用の〇%として算出」が示されている。

消費税は各明細の明細金額には含めず、見積情報に消費税額として明示したうえで見積金額に含める。経費明細情報の備考欄の記入例には「1ドル=160円で積算」と、為替の前提を書き残す例も挙がっている。

再委託先の法人番号と「再々委託フラグ」

役務明細情報には、委託先法人名、委託先法人番号、再々委託フラグ(0=無し、1=有り)の3項目が置かれた。再委託は委託先情報を記載し、再々委託以降の多段階の再委託はフラグに「1」を立てる。ただし再々委託先以降の企業名・金額等は「本データモデルの管理対象外」とされている。

役割の等級を示す「ランク」には、情報処理推進機構(IPA)のITスキル標準(ITSS)に基づくL1〜L7の7段階、S・A・B・C・Dの5段階、上級・中級・初級、シニア・ミドル・ジュニアの4体系が例として示された。事業者独自の体系を使う場合は、備考欄にITSSのスキルレベルとの対応関係やランクの定義・基準を明記することが望ましいとしている。

「見積書の様式を標準化するものではない」

ガイドブックは、適用範囲をかなり狭く書いている。本書は参考ドキュメントであり、各機関が受領する見積書の記載項目や記載内容を一律に規定するものではない、「見積書」そのものの様式・フォーマットを標準化するものではない、と明記した。項目・分類・役割・ランクもあくまで例示で、各機関や事業者の実情に合わせてカスタマイズすることを前提とする。データモデルの「項目必須」欄は項目の定義が必須であることを示すもので、値の入力を必須とするものではないとも補っている。対象範囲は見積書の記載内容に限られ、見積における前提条件や諸条件は含まない。

行政分野は8本から9本へ

GIFは、デジタル社会推進標準ガイドラインに基づいてデジタル庁が公開しているデータモデルのひな形(参照モデル)である。日付や住所など共通して出てくる項目の書式を定めた「コアデータパーツ」、個人・法人・連絡先・住所・施設といった共通のデータ構造を定めた「コアデータモデル」、分野ごとに特化した「実装データモデル」の3層でできている。実装データモデルは行政・金融・教育・防災の4分野がある。防災は2.3(2026年3月24日公開)で新しく加わった分野で、逆に地域サービスの実装データモデルは2.2(2026年1月8日公開)から「掲載内容の見直し」でGIFの管理対象から外れ、データマネジメントや文字環境などの実践ガイドブック群とともに今後の更新と公式説明の対象外になっている。

行政分野の実装データモデルは、2.3では申請、証明・通知、事例、行政サービス・制度、イベント、報告書、行政サービス拠点・支援機関等、調達の8本だった。今回の見積が9本目で、番号は調達(451-8)の次の451-9にあたる。2.4ではほかに、コアデータモデル全体概要に見積データモデルを追加し、コアデータモデル解説書の個人とDMDに「ID群、国籍、性別」の記入例を加えた。自治体システムをどこまで全国でそろえるかという議論でも、同じ「データの相互運用性」が土台になる。デジタル庁は10月6日に被災者支援・救急医療・コンビニ交付など6件、自治体システムの「共通化候補」に 国・地方デジタル共通基盤 61団体から175件の意見、「共通化は望まない」も決めている。

GitHubを使えない人向けにダウンロードサイト

GIFはこれまで、2022年10月13日に始めたGitHubでの公開が主な配布経路だった。デジタル庁は10月6日、専用のダウンロードサイト(gif.digital.go.jp)を新設し、GitHubが使えない環境からも資料一式を取得できるようにした。資料一式のZIPは20,176キロバイト(約20メガバイト)。サイトには2.00から2.4までの6つの版が並ぶが、最新版は2.4だとした上で「旧版については公式説明の対象外となります」と断っている。

ライセンスはCC0 1.0 Universalで、文書・データ定義・スキーマ等の権利を法律上可能な範囲で放棄し、日本のように放棄が認められない法域では権利を行使しないと宣言している。商用利用も可能で、許可や帰属表示は不要とされている。