国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会(第8回)が10月6日、持ち回りで開かれ、被災者支援システム、救急医療情報連携プラットフォーム、コンビニ交付サービスの証明発行サーバなど6件の業務・システムを、全国で共通化する対象の候補に選んだ。所管する府省庁は2027年2月末までに、共通化の方法と日程を記した「共通化推進方針案」をつくり、協議会と協議する。
選ばれた6件と所管府省庁
協議会は、2024年6月21日に閣議決定された「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づき、自治体ごとにばらばらに整備されている業務システムを全国共通のものへ寄せていくための場である。国と地方の双方が参加し、今回の会合には村岡嗣政・山口県知事、中野正康・愛知県一宮市長、美浦喜明・福岡県水巻町長、三角育生・デジタル庁デジタル監、小川康則・総務省自治行政局長らが出席した。
今回の候補は、基本方針が掲げる3つの視点ごとに整理されている。「データの可視化・活用による政策実施等の的確化」として、被災者支援システム(内閣府。防災庁の設置後は防災庁)、被災者支援システムに係る相互連携ツール(同)、コンビニ交付サービスの証明発行サーバ(総務省・法務省・デジタル庁)の3件。「デジタル化に伴う事業活動等の変容に即した行政手法の改革」として、救急医療情報連携プラットフォーム(厚生労働省。総務省消防庁と連携)の1件。「デジタルの活用により可能となる国・地方自治体関係の合理化」として、地方版アタックサーフェスマネジメント(ASM)システム(総務省)と、地方公務員給与実態調査システム(同)の2件である。
ASMは、インターネット側から見える自組織のサーバーやクラウドサービス、ネットワーク機器を攻撃者の視点で継続的に洗い出し、脆弱性や設定の誤りを評価する仕組みで、政府機関では既に構築・運用が始まっている。資料は、国が一括で整備すれば「各地方公共団体における専門人材の多寡にかかわらず」外部からの攻撃リスクを把握・対処できるようになるとしている。自治体側の人手不足への対応という点では、総務省も別途研究会を設けて検討を進めている(総務省、自治体のAI活用へ研究会を設置 深刻な人手不足に対応、「AXの在り方」検討へ)。
コンビニ交付は「約8割の市区町村、年4,000万枚」
6件のうち、すでに広く使われているサービスの土台を作り替える話が含まれている点は注目される。コンビニ交付サービスは、コンビニ等に置かれたキオスク端末で住民票や地方税、戸籍関係の証明書の写しを受け取れる仕組みで、資料によると全国の約8割の市区町村が参加し、2025年度の交付通数は約4,000万枚にのぼる。
課題は、各市区町村が構えている「証明発行サーバ」のインターフェース仕様がベンダーごとに異なることにある。証明発行サーバは自治体システムの標準化の対象外とされてきたため、標準準拠システム側にも受け渡すファイルの形式が定められておらず、両者をつなぐ際にベンダー間の調整に大きな労力がかかる場合があるという。総務省は法務省とデジタル庁と連携し、2027年2月末までに、仕様の見直しが必要かどうか、全体の費用を最小にできるかも含めて共通化が適当かを検討する。
救急医療情報連携プラットフォームは、救急隊が現場に着いてから受け入れ先の医療機関が決まるまでの間、地域によっては医療機関に電話を繰り返し、そのたびに傷病者の情報を説明する必要があり、現場滞在時間が延びている現状を改善しようとするものである。厚労省と消防庁は2024年度にモデル事業、2025年度に交付金による実証事業を行い、システム仕様書案の策定を進めてきた。救急や医療の情報をどこまで見える形にするかという論点では、デジタル庁が医療DXの進捗を公開する取り組みも並行している(デジタル庁、医療DXの進み具合を「見える化」 マイナ保険証や電子処方箋など5分野を公開)。
自治体61団体から175件、消極的な意見は3件
デジタル庁は候補案について、8月21日から9月8日まで自治体に意見照会を行った。意見等を出したのは61団体で、都道府県13、政令指定都市3、中核市14、政令指定都市と中核市を除く市28、特別区2、町村1という内訳である。件数は175件で、意見132件と質問43件に分かれる。
候補別では、救急医療情報連携プラットフォームが意見36件・質問19件の計55件で最も多い。被災者支援システムが30件・8件の計38件、コンビニ交付サービスの証明発行サーバが26件・2件の計28件と続く。地方版ASMシステムは意見5件・質問6件の計11件で、質問が意見を上回った唯一の項目だった。なお集計表には、2025年度に候補へ選ばれ今回の選定対象ではない奨学給付金申請システム(計9件)も、推進方針案の期限が同じであることから併せて載っている。
このうち、共通化そのものに消極的と分類された意見は3件だった。コンビニ交付については、政令指定都市と中核市を除く市が「現在、稼働しているコンビニ交付システムが、安定しているため、共通化は望まない」とし、インターフェース仕様の統一のために改修が必要になれば「標準化で多大な費用が発生した上に、本改修のためにさらに、費用が発生することが懸念される」と述べた。
地方公務員給与実態調査システムについては、中核市が「共通化による、調査票に入力を行う側の市町村のメリットが見えてこない」とし、年1回の調査のためのシステム改修に多額の税金を充てることは国民や市民の理解を得られないと指摘した。この調査は現在、総務省から送られてくる調査票ファイルに自治体が入力し、電子メールに添付して提出する方式がとられている。
救急医療情報連携プラットフォームについても、救急DXを導入済みという中核市が、プラットフォームに情報を登録してから電話で受け入れを要請する手順になると、従来より要請が遅れる可能性があると述べた。この消防本部は、受け入れ照会1回で決まる割合が96%であり全国的にもほぼ同様の数字だとして、現場滞在時間の延びへの対策としては効果が大きくないと推測し、医療機関側の負担増や誤入力による誤搬送の恐れにも触れている。
2027年6月ごろに同意、重点計画へ反映
デジタル庁は、意見照会の結果について「共通化候補の選定に対して一部に消極的な意見も見られるものの、共通化を前提とした意見や積極的な賛同が多数を占めている」とし、指摘された懸念にも対応策を講じられるものがあることなどから、「現時点でこれをもって共通化候補としないとすることは適当でない」と判断した。寄せられた意見への対応方針は、各府省庁がつくる共通化推進方針案の中で明らかにするなど、適切な時期に示すよう調整するとしている。質問への回答は後日、自治体に伝える。
今後の日程は、各府省庁が2026年12月に協議会へ中間報告を行い、2027年2月末までに推進方針案を提出。その後に協議を経て、同年6月ごろの同意をめざす。同意された推進方針は重点計画に反映され、共通のSaaSとして提供・利用拡大を図る流れになる。
共通化候補の選定は年度ごとの「クール」で進められており、今回は第3クールにあたる。第2クール(2025年度選定分)は2026年6月8日に共通化の対象として決定済みである。候補の洗い出しには地方分権改革の「提案募集方式」が連携しており、今回選ばれた6件のうち、コンビニ交付サービスの証明発行サーバと地方公務員給与実態調査システムは自治体側からの分権提案が、被災者支援システムに係る相互連携ツールと地方版ASMシステムは府省庁からの提案が出発点になっている。
