総務省の有識者会議「利用者情報に関するワーキンググループ」は10月9日、第43回会合をウェブ会議で開き、ウェブサイトやアプリが利用者の情報を外部に送る際のルール「外部送信規律」の遵守策をまとめた第2次報告書案を議論した。アプリを提供していないウェブサイトでは遵守率が43.2%にとどまるとして、総務省が最低限の記載例となる「雛形」を策定・公表し、遵守状況を定期的に調べて結果を公表するよう求めている。大手プラットフォーム4社の利用者情報の扱いを点検したモニタリング結果案も示された。

外部送信規律とは何か

外部送信規律は、令和4年の電気通信事業法改正で導入された。ウェブサイトを閲覧すると、利用者の端末に保存された情報が、広告配信や行動分析のために閲覧先とは別の事業者のサーバーへ送られることがある。Cookieや、ページに埋め込まれた広告・解析用のタグがその典型だ。

規律は、こうした送信を行う電気通信事業者などに対し、送信する情報の中身、利用目的、送信先を利用者に知らせることを求める。方法は「通知または公表」「同意の取得」「オプトアウト(事後に送信や利用を止められる手段)の提供」のいずれかで、報告書案は通知または公表が最低限求められると説明している。利用者に確認の機会を与え、安心して通信サービスを使える環境を保つのが目的とされる。

報告書案によると、導入から3年がたち、遵守状況に課題があるとの指摘が出たことから、ワーキンググループで取り組みと今後の課題を検討してきた。

アプリの無いサイトは遵守率43.2%

根拠の一つが、総務省が令和7年12月に実施した委託調査だ。規律の対象となる事業者のウェブサイトやスマートフォン用アプリのうち、アクセス数が多いものを抽出して調べた。ウェブサイトはアプリに比べて規律を十分に守れていない傾向があり、アプリによるサービス提供を行っていないウェブサイトでは遵守率が43.2%だった。報告書案は、守れていないサイトの大半は「対応はしているものの一部不十分」だったとし、法令解釈を示す総務省のガイドライン解説が事業者にとって分かりやすいものになっていないことも一因とみている。

利用者側の意識についても調査結果を引いた。令和7年3月の委託調査では、自分の情報の扱いに関心がある利用者は約5割だった一方、全体の約8割はプライバシーポリシーを流し見する程度か、読んでいなかった。読まない理由は「読みにくい」「内容が難しい」が最も多く、約5割を占めた。情報の自己管理については「関心はあるが、難しそうなので何もしない」が約4割で最も多かった。

会合では事業者側から、利用者の反応が乏しく、利用者の意識を前提に対応すべきではないかとの考えも示されていた。報告書案は、多くの利用者は外部送信の仕組みを十分に理解していないとして、利用者の意識を前提にするのは適切でなく、利用者の理解をゴールに据えるべきだと整理した。

雛形の策定と定期調査、手引き案も添付

報告書案が示した法令遵守の方策は三つある。一つは、総務省が規律を最低限満たすための「雛形(記載例)」を策定・公表すること。二つ目は、遵守状況を定期的に調べて結果を公表し、対応が不十分なウェブサイト運営者に改善を求めること。三つ目は、これらを業界団体と連携して進めることだ。

構成員からは「法令をそもそも遵守していないという事業者が多数見られることは非常に重要な問題」「総務省には権限があるので、具体的に執行に向けて動いて、計画を練っていただきたい」(山本主査)との意見が出ていた。

法令の一歩先の取り組みとしては、同意の取得やオプトアウトといった利用者が関与できる機会を設けることを「ベストプラクティス」と位置付けた。これらを分かりやすくまとめた「ウェブサイト等における利用者情報の外部送信に係る法令遵守事項及び望ましい対応事項(手引き)(案)」を別添とした。スマートフォンアプリ向けの既存の指針とは別の形式で示し、法令上の義務と望ましい対応を混同されないよう留意するとしている。

中長期の検討事項には、規律の適用対象の簡素化・明確化、ブラウザなどの画面レベルでのオプトアウトの規制、Cookieに頼らずに利用者を特定する技術やAIが与える影響の検証を挙げた。今後の法執行の状況や令和8年の個人情報保護法改正も踏まえ、制度改正も排除せずに検討するのが適当だとした。個人情報の扱いをめぐっては、漏えい報告の件数や国が社名を公表した事例もまとまっている(個人情報の漏えい報告は3年で4万8315件、勧告は6件・命令は1件 国が社名を公表したのはトヨタ・ドコモ・LINEヤフー・損保4社など 「報告が著しく遅滞」の記述は3年連続)。

報告書案への意見募集は8月20日から9月18日まで行われ、24件の意見が寄せられた。日本シーサート協議会の法制度研究ワーキンググループ、新経済連盟、KDDI、一般社団法人MyDataJapanなど6団体と、個人18件だった。

大手4社のモニタリング、TikTokを今年度から追加

会合では、Google、LINEヤフー、Meta、TikTokの4社を対象としたモニタリング結果案も示された(会合後に一部修正された版が掲載されている)。TikTokは、取引透明化法のデジタル広告分野の規律対象に新たに指定されたことを受け、今年度から加わった。書面での確認を原則とし、結果は10月下旬までに経済産業省へ提出する予定だ。

アカウント作成時にターゲティング広告への利用を断れるかでは、Googleは登録時にオプトアウトできると確認された。LINEヤフーは広告関連では登録時のオプトアウトができず、Metaは登録直後に専用画面で同意するかを確認する方式、TikTokは登録時のオプトアウト機能を提供していなかった。結果案は、Google以外の3社の動向を注視するとした。

4社とも、自社の広告ツールを使う外部の事業者に対し、利用規約で同意取得や通知を含む法令遵守を求め、違反には是正措置やアカウント停止を行っていると説明した。ただ結果案は、是正の実態は明らかでなく、一部の事業者は利用者への説明方法の適正化を規約上求めていないと指摘した。欺瞞的な説明や表示を規約で明示的に禁じているのはGoogleとMetaで、LINEヤフーとTikTokは明示していなかった。