総務省の有識者会議「利用者情報に関するワーキンググループ」(WG)は、Google、LINEヤフー、Meta、TikTokの大手4社が利用者の情報をどう扱っているかを確かめた2026年度のモニタリング結果をまとめた。今年度は広告配信でのAIの使い方を新たに調べ、Metaが18歳以上の利用者と対話型AI「Meta AI」とのやり取りを広告に使っていることや、LINEヤフーが対話型AIの画面で質問の内容に沿った広告を出していることを確認した。WGは、対話型AIなどが扱う利用者情報について、AIの学習や広告への使い方の実態を早期に確かめる必要があると総務省に提言した。
対話型AIの会話、広告に使うかは4社で分かれる
モニタリングは、総務省の「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」と、巨大IT企業に取引条件の開示などを求める取引透明化法に基づく。原則として書面で各社に質問し、回答を確かめたうえで追加の質問をする方式で、結果は経済産業省のモニタリング会合にも渡される。対象はデジタル広告の分野で同法の規律対象になっている事業者で、TikTokは今年度から加わった。アカウント作成時の広告の断り方など、結果案の段階で示された項目は10月の会合の時点でも報じた(Cookieの外部送信ルール、アプリの無いサイトは遵守率43.2% 総務省WGが雛形と定期調査を提言)。
今年度に新しく加えた観点の一つが、広告配信でのAIの活用だ。結果によると、4社とも広告の最適化やターゲティングの精度向上、センシティブ(慎重な扱いが要る)情報の検知にAIを使っている。利用者の興味や属性を推し量る「プロファイリング」にAIを使っていないのはTikTokだけだった。
対話型AIとの会話を広告に使うかどうかは、4社で扱いが分かれた。Metaは、18歳以上の利用者によるMeta AIとのやり取りを広告に使っており、プライバシーポリシーで説明済みだとした。結果は、Meta AIでのやり取りを広告の最適化に使っていると明示したことを「昨年からの変更」と記している。
LINEヤフーは、対話型AIの画面で検索連動型広告とディスプレイ広告を出しており、質問(プロンプト)の内容に沿った広告を表示している。過去のやり取りを広告に使うことは検討中だという(8月時点)。会話を広告に使われないようにする手段(オプトアウト)は「現時点は不可」とされた。
Googleは、対話型AIでの広告配信として検索連動型広告を出している(9月時点の事務局の調べ)一方、対話型AI「Gemini」との会話の内容はターゲティング広告には使っていないとした。TikTokは、会話の内容を広告のパーソナライズに使っていないと答えた。
| 確認した事項 | LINEヤフー | Meta | TikTok | |
|---|---|---|---|---|
| 対話型AIでの広告配信 | 検索連動型広告を実施 | 検索連動型・ディスプレイ広告を実施 | 無し | 無し |
| 会話の内容を広告に使うか | ターゲティング広告には使わない | プロンプトに沿った広告を表示 | 18歳以上の利用者のやり取りを使う | 広告のパーソナライズには使わない |
| AIの学習に使う利用者情報 | Geminiへのプロンプトやファイル、連携アプリの情報など | 使っていない | 投稿や写真、Meta AIとのやり取り、第三者からの情報 | 利用者が作ったコンテンツなど |
| 学習への利用を断れるか | 可能(要ログイン) | ― | Meta AI自体に選択肢は無く、他の手段で可能 | 可能 |
出典: 総務省「利用者情報の取扱いに関するモニタリング結果」
AIの学習、LINEヤフーは利用者情報を使わず
AIの学習データとして利用者情報を使っているかも確かめた。Googleは、Geminiに利用者が送るプロンプトや共有するデータファイル、フィードバック、連携するアプリの情報などを学習に使う。第三者を経由して集めた情報も原則として使うが、個人情報には配慮しているとした。アクティビティの設定を切れば学習への利用を止められるが、ログインが要る。
Metaは、自社の製品で共有された投稿や写真、キャプション、Meta AIとのやり取りに加え、第三者から提供された情報を学習に使っている。Meta AI自体に学習への利用を断る選択肢は無いが、Metaが用意する外部ツールなどのオプトアウトの手段で止められるという。TikTokは、利用者が作ったコンテンツなどを、投稿の監視や広告の最適化のために使っているとした。LINEヤフーは、利用者情報も第三者経由の情報も学習には使っていないと答えた。
メールやメッセージと連動するAIの機能では、電気通信事業法が守る「通信の秘密」に当たる情報を扱う場合がある。LINEヤフーは初回の利用開始時に個別に同意を取り、Googleは「スマート機能」が切れているときに画面で知らせ、利用者が設定を入れることで同意を取っている。Metaの回答は非公表とされた。
AIは不適切な広告を排除する側でも使われている。4社とも広告審査に自動化の技術を使い、詐欺広告などを事前に見つけている(LINEヤフーはYahoo!JAPANのサービスのみ)。Googleは、即時に配信を止める仕組みにより、2025年に83億件を超える不適切な広告を削除したと説明した。AIで検知して制御するセンシティブ情報の例として、健康状態、人種、信教、性的指向、政治的な傾向が挙げられている。
広告への利用を断っても、情報は消えない
結果は、利用者が広告への利用を断った後に情報がどう扱われるかも整理した。4社とも、オプトアウトしても情報は自動では削除されず、プライバシーポリシーの範囲で広告以外の目的に使われる場合があると答えた。
Googleは、広告のカスタマイズを無効にすると広告用のプロファイルづくりには使わないが、広告効果の測定や不正使用の防止には使う。TikTokは、TikTokの外での行動に基づく広告を断っても、社内業務や安全の確保、法的な要請への対応、一般的な広告配信には使う場合があるとした。利用者がTikTokの中での行動に基づく広告を受け取ることは変わらない。自分で消せるかどうかでは、Metaはプライバシーセンターを通じて削除を求められるが、最大90日かかるとされた。
アカウントを作る時点でターゲティング広告を断れるのはGoogleだけだった。LINEヤフーは、通信の秘密に関わる情報や位置情報の利用は登録時に断れるが、広告関連はできない。Metaは登録の直後に専用の画面で同意するかを確かめる方式で、TikTokは登録時に断る機能を設けていない。結果は、Google以外の3社の動向を注視するとした。
ほかの事業者のサイトやアプリに組み込まれた広告や分析のツール(タグ)を通じた情報の収集では、4社とも収集した情報をターゲティング広告に使うことを断る手段を用意している。ただ、アカウントを持っていない人向けにこの手段を設けているのはGoogleとLINEヤフー(Yahoo!JAPAN)の2社だけだった。4社とも、断っても情報の送信自体は止まらない。例外はLINEヤフーの位置情報で、断ると送信が止まる。
アカウントの無い人の情報、Metaの一部は非公表のまま
結果は、アカウントを持たない人やログインしていない人の情報の扱いも比べた。4社とも、こうした人の情報をCookieや端末固有のIDで集めている。Metaは集めて保存するがプロファイルには使わないとし、TikTokは長期間保存せずに削除するとした。TikTokはログインしていないときやアカウントが無いときに、集めた情報をアカウントと結び付けておらず、アカウントを持たない人の情報は第三者に提供しないとした。
一方、4社を比べた表では、アカウントの有無による情報収集の違いを記す欄のうち、Metaについては、アカウントを作った時点で過去に集めた情報と結び付けるかどうかの部分が「非公表」となっている。メール審議では構成員の森氏が、Metaの回答の一部について模範的な対応も含まれ、非公表とする内容ではないのではないかと意見を述べた。総務省が該当する事業者に確かめたところ、企業の営業秘密や競争上の機密情報に関わる内容が含まれるとの回答があり、引き続き非公表とした。
TikTokについては、アカウントの有無による扱いの違いがプライバシーポリシーに明記されておらず、注視が必要だとした。18歳未満の利用者に対しては、Googleが広告のパーソナライズを禁じ、LINEヤフーが年齢や行動に基づくターゲティングを禁じている。MetaとTikTokは特定の話題のターゲティング広告を制限している。
このモニタリングの結果案は10月9日のWG会合で示され、10月19日から21日のメール審議を経て、取りまとめは山本主査に一任された。外部送信の規律そのものについては、WGの第2次報告書が11月4日に公表されている(Cookieの外部送信、手引きから「案」取れる 利益を得る個人ブログも対象と例示 総務省WG報告書)。
WG「AIの実態を早期に確認」、通信の秘密も論点に
WGは結果の末尾で、総務省に今後のモニタリングのあり方を提言した。デジタル広告の分野に限らず利用者情報の扱いを継続して確かめるべきだとし、AIやサードパーティーCookieに代わる技術といった新しいターゲティングの手法を踏まえて確認を続けるよう求めた。アカウントを持たない人への説明やオプトアウトの提供がどこまで進んでいるかも引き続き確かめるとした。
対話型AIをはじめとする各社のAIについては、AIの学習データや広告配信での利用者情報の使われ方の実態を把握し、通信の秘密との関係にも留意しながら、利用者が関与できる機会や保護の措置が適切か「早期に確認していく必要がある」と明記した。
構成員の意見も結果に収められた。山本主査は、対話型AIでは相談やセラピーのような対話もあり、利用者が悩みや心の内を明かすこともあるとして、そうした情報が広告などにどう使われるかの実態把握を早急に進める必要があると述べた。呂氏は、アカウント作成時に多数の同意をまとめて取る中で、利用者がAIによるメッセージや通話の分析への同意をどれだけ認識しているか、何年にもわたって最初の同意だけでよいのかに疑問を示した。寺田氏は、AIの技術の進化が速く、問題が起きてからの是正も難しくなっているとして、問題を見つける段階から対応策を決める段階へ進むことが重要だとした。
(日本時事新聞編集部)
