文部科学省は、保護者や地域住民が学校運営に加わる「コミュニティ・スクール」の今後の在り方を話し合う有識者の検討会を設け、11月4日にWEB会議で第1回を開いた。公立学校での導入は2026年5月1日時点で2万3221校と全体の69.5%に達したが、導入した教育委員会の52.3%が「委員の固定化、新たな委員の担い手がいない」を課題に挙げ、38.7%が「形式的な開催になっている」と答えている。検討会は2028年3月末までに、学校運営協議会の役割と推進方策をまとめる。
2028年3月までの検討会、初回は現状と論点を確認
検討会は10月21日付の総合教育政策局長決定で設けられた。開催の趣旨によると、コミュニティ・スクールは2004年(平成16年)に制度化され、2017年(平成29年)に設置が努力義務となり、導入が進んできた。一方で、子供を取り巻く環境の変化や課題の多様化・複雑化で、地域全体で子供の学びや成長を支える必要性が高まっているとする。
直接のきっかけは、中央教育審議会生涯学習分科会が2026年8月21日にまとめた「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方について(審議経過報告)」である。報告は、子供の教育を「学校教育の比重が大きい状態」から、学校と地域や家庭が連携・協働して社会全体で担う環境へ転換する必要があると指摘し、コミュニティ・スクールの導入促進と運営の実効性向上を求めた。文科省の資料は、導入は着実に進んでいるものの「地域間や学校種間における導入率の差や形式的な運営等の課題も生じて」いると記している。
委員は7人で、座長は安齋宏之・ふくしま学校と地域の未来研究所代表が務める。京都市教育委員会の学校地域協働推進課長、千葉市立弥生小学校の校長、法政大学と東京学芸大学の研究者、NPO法人の代表、萩市の地域おこし協力隊員が加わる。全国コミュニティ・スクール連絡協議会の顧問と国立教育政策研究所の総括研究官がオブザーバーとして参加する。開催期間は2028年3月31日まで。庶務はこども家庭庁成育局と総務省地域力創造グループの協力を得て、文科省の地域学習推進課が担う。
第1回の議題は会議の運営、コミュニティ・スクールの現状、主な検討事項(案)の三つだった。文科省の現状説明に加え、こども家庭庁と総務省が説明資料を出し、委員2人が自らの取り組みの資料を提出した。会議はYouTubeで配信され、会場での傍聴は設けなかった。
法律が定める学校運営協議会の役割
コミュニティ・スクールは、学校運営協議会を置いた学校を指す。根拠は地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第47条の5で、教育委員会は所管する学校ごとに、学校の運営と運営への必要な支援について協議する機関として「学校運営協議会を置くように努めなければならない」と定めている。義務ではなく努力義務で、置くかどうかは教育委員会が決める。
協議会には法律上の権限がある。校長は、教育課程の編成などについて「基本的な方針」を作り、協議会の承認を得なければならない。協議会は学校運営に関する事項について教育委員会や校長に意見を述べることができ、教職員の採用など任用に関しても、教育委員会規則で定める事項について任命権者に意見を述べられる。任命権者はその意見を「尊重するものとする」とされている。
2017年の法改正では、設置の努力義務化に加え、協議の対象に「学校運営への必要な支援」を加えた。協議会の委員に地域学校協働活動推進員などを加えることや、協議の結果を積極的に地域に伝える努力も定めた。2025年6月の改正(2026年4月施行)では、校長が協議会の承認を得る基本方針に、教員の業務量の管理と健康の確保に関する措置を含めることになった。働き方改革の進め方も、地域の委員が加わる場で承認を得る形になった。
学校の教育課程をめぐっては、次期学習指導要領の審議で授業時数、標準より最大15%減らせる「調整授業時数制度」を創設へ 国への申請は不要に 小5で138コマ程度 次期学習指導要領の審議まとめが示されている。教育課程の編成は、校長が協議会の承認を得る基本方針の対象でもある。
公立校の69.5%が導入、高校は46.4%
文科省が毎年行う「コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査」によると、2026年5月1日時点で協議会を置く公立学校は2万3221校で、全体の69.5%だった。前年度から1212校増えた。小学校・中学校・義務教育学校に限ると2万579校で、76.4%に当たる。
学校種ごとの差は大きい。義務教育学校は288校のうち245校(85.1%)、小学校は1万7836校のうち1万3700校(76.8%)、中学校は8823校のうち6634校(75.2%)が導入した。これに対し、高校(中等教育学校を含む)は3437校のうち1596校(46.4%)、特別支援学校は1127校のうち666校(59.1%)、幼稚園は1886園のうち380園(20.1%)にとどまる。
学校種別のコミュニティ・スクール導入率(2026年5月1日時点)(%)
数値で見る(単位: %)
| 項目 | % |
|---|---|
| 義務教育 | 85.1 |
| 小学校 | 76.8 |
| 中学校 | 75.2 |
| 特別支援 | 59.1 |
| 高校 | 46.4 |
| 幼稚園 | 20.1 |
地域による差もある。資料の都道府県・指定都市別のグラフでは、導入率100%のところから0%のところまで開きがあり、全国平均の69.5%を下回る県も少なくない。
協議会と対になる仕組みが「地域学校協働活動」である。2017年の社会教育法改正で定義された活動で、地域住民や団体が学校と連携して登下校の見守り、授業の補助、部活動の支援などを行う。活動の体制である地域学校協働本部を整えた公立学校は2万4074校(72.1%)で、活動の企画や調整を担う地域学校協働活動推進員などは3万8699人と、前年度から3453人増えた。このうち協議会の委員を兼ねる人は1万5947人だった。
「委員の固定化」52.3%、未導入の理由は「類似制度がある」
導入が進んだ一方で、運営の課題も資料に並んだ。協議会を置く1568の教育委員会に課題を尋ねた2026年度の調査(複数回答)では、「委員の固定化、新たな委員の担い手がいない」が52.3%で最も多かった。「校長や管理職以外の教職員の理解や参加が進んでいない」が44.8%、「開催時期や議事内容が毎年同じで、形式的な開催になっている」が38.7%、「学校からの説明や報告が中心となっており、委員との協議が十分に行われていない」が32.6%と続いた。
協議会からの意見の中身にも偏りがある。2025年度調査で協議会から教育委員会への意見の申し出を尋ねた結果では、「学校への必要な支援」や「地域学校協働活動」に関するものが比較的多かった。一方、「学校の予算編成」「校務分掌」「教職員の人事(任用意見以外)」は、意見が「多くあった」と「ややあった」の合計が1割に届かなかった。法律が認める権限のうち、学校運営の中心に関わる部分はあまり使われていない。
成果を感じている教育委員会は多い。「保護者や地域住民等の学校に対する理解が深まった」は94.8%、「特色ある学校づくりが進んだ」は90.3%が、成果が「多くあった」か「ややあった」と答えた。これに対し、「不登校対策等の生徒指導上の課題解決が進んだ」で同様に答えたのは計39.9%、「放課後児童対策が進んだ」は計43.1%で、分野によって差が出た。不登校をめぐっては、学校外での支え方を含めて課題が残っている(不登校の子の健康診断、中学校は2割が全科目受けず 学校医の医療機関でも受診可は52校中23校)。
導入していない288の自治体に理由を聞いた2025年度の調査(上位3つまで選択)では、「学校評議員制度や類似制度があるから」が74.4%、「地域連携がうまく行われているから」が64.4%だった。「管理職や教職員の負担が大きくなるから」は26.8%、「コミュニティ・スクールの成果が明確でないから」は25.8%、「運営費や謝金等の予算がないから」は18.1%、「学校運営協議会委員となりうる人材がいないから」は17.1%あった。
検討事項は協議会の機能と放課後との連携、次回は12月4日
文科省が示した主な検討事項(案)は二つの柱からなる。一つは「コミュニティ・スクールの在り方」で、地域全体で子供を支える必要性が高まる中で求められる役割、それを実現するための協議会の位置付け、協議事項などの機能、多様な関係者の参画、地域学校協働活動と連携するための仕組みを論点に挙げた。もう一つは「推進方策」で、協議会が新たな役割を果たすための支援策と、協議の結果を踏まえた地域学校協働活動の充実や実施体制の整備を検討する。
放課後の子供の居場所も論点に絡む。こども家庭庁の説明資料によると、放課後児童クラブの登録児童数は160万2037人で、利用できなかった児童(待機児童)は1万4713人だった。同庁と文科省は、ピークとなる2030年ごろの約165万人分の受け皿確保を目指し、学校施設の活用や、放課後児童クラブと文科省所管の放課後子供教室の連携を進めるとしている。教育委員会の成果実感で「放課後児童対策が進んだ」が半数に届かなかったこととも重なる。
今後の日程は、第2回が12月4日、第3回が12月21日で、第4回を1〜2月ごろ、第5回を3〜4月ごろ、第6回を4〜5月ごろに開く予定だ。文科省は、日程は検討の状況によって変わる場合があるとしている。
協議会は、地域の人が学校の方針を承認し、意見を述べる仕組みとして20年余り続いてきた。導入率が7割に近づいた今、課題として挙がっているのは数ではなく、委員の顔ぶれが固まり、報告を聞くだけの場になっている運営の中身である。検討会が協議会の機能と担い手の確保にどこまで具体策を示すかが、残る3割の学校と、形式化した協議会を抱える学校の双方に関わる。
