総務省消防庁は、崩落した建物の現場や建物の内部で情報を集める技術について、開発した企業と消防機関が共同で有効性を確かめる「最新技術活用検証会」を、10月15日と16日の2日間、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)で開く。7月の令和8年熊本地震で、崩落した大規模商業施設での情報収集に、屋内を飛べる情報収集用ドローンが使われたことを踏まえた。消防庁が10月9日に発表した。

屋内ドローンの活用を受け、検証の対象を絞る

消防庁の発表資料によると、検証会は、スタートアップ企業などが開発した最新技術を、企業と消防機関が共同で試すことで、現場への導入を促す場と位置づけられている。関係省庁とも連携して開く。

今回、検証の対象とするのは「崩落現場や建物内部等における情報収集での活用が期待される技術」だ。消防庁は趣旨の中で、令和8年熊本地震では崩落した大規模商業施設での情報収集活動に、屋内を飛行できる情報収集用ドローンが活用されたと説明している。こうした状況を踏まえ、同種の技術の有効性と実用性を検証するという。

参加するのは、検証する技術を持つ企業など、消防機関、関係省庁など。発表資料には参加企業の名前や、検証する個別の機器名は記されていない。内容は2本立てで、災害現場などを模擬したテストフィールドで、災害現場での有効性・実用性を確かめるほか、関係機関で意見交換を行う。担当は消防庁総務課の技術戦略室で、当日の取材対応は別途案内するとしている。

消防庁は3月にまとめた「消防技術戦略ビジョン」でも、ロボットやドローンで危険な場所での活動を代替し、隊員の安全を守りながら消防活動を続けることを重点分野の一つに掲げている(後述)。屋内を飛ぶドローンは、その具体策の一つになりうる。

震度7の熊本地震、救助は64件

消防庁の被害報(第66報、10月5日更新)によると、令和8年熊本地震は7月28日午後4時27分に発生し、熊本県の宇城市と氷川町で最大震度7を観測した。有明・八代海には津波注意報が出され、同日午後6時10分に解除された。その後も8月1日までに震度5弱の揺れが5回あった。

人的被害は5県で計414人にのぼる。死者は熊本県の38人で、内訳は八代市20人、嘉島町7人、氷川町5人、宇城市3人、甲佐町1人、災害による負傷の悪化などで亡くなった可能性のある人が2人。負傷者は重傷43人、軽傷等333人の計376人だった。住宅被害は全壊2,408棟、半壊7,802棟、一部破損5万9,394棟の計6万9,604棟。

消防本部と市町村からの情報では、救助事案は64件発生し、すべて対応済みとなっている。7月30日正午時点で、救助した人は地元消防本部が73人、緊急消防援助隊が25人の計98人、救急搬送は計620人だった。

消防庁長官は地震発生と同じ午後4時27分に、福岡、大分、宮崎各県の部隊などに緊急消防援助隊の出動を求め、同日午後6時20分には出動の「指示」に切り替えた。その後、岡山、広島、山口、鹿児島各県などの部隊にも出動を指示している。今回の検証会は、こうした大規模地震の現場で、建物の内部を安全に把握する手段をどう確保するかという課題に向き合うものになる。

昨年度から進む「最新技術活用検証事業」

消防庁は昨年度から、スタートアップなどの技術を消防の現場に取り込む取り組みを進めてきた。2025年9月12日に公表した資料では、令和7年度から「消防分野における最新技術活用検証事業」を実施するとしている。内閣府の事前防災対策推進費を使い、内閣府、文部科学省、経済産業省のほか、情報通信研究機構、防災科学技術研究所、福島イノベーション・コースト構想推進機構、消防機関と連携する枠組みだ。

事業の狙いは、消防活動に使える可能性がある技術を、消防機関との「マッチング」「現場検証」「横展開」を通じて導入する手法を確立することにある。資料に示された流れは、9月に技術の情報を集め(情報提供依頼=RFI)、10月に国が検証課題を決め、10〜11月に公募、12〜1月にテスト環境で検証し、3月以降に実地で検証するというものだった。情報提供の対象には、他分野向けに開発され消防への転用が期待できる技術や、すでに消防で使われているが別の使い方が見込める技術も含めていた。

消防庁が2026年1月30日に都道府県などへ出した事務連絡では、この事業でスタートアップなどが提案した新技術について、テストフィールドでの検証を実施したと報告している。今後は消防本部での実地検証を経て結果を公表するとし、各消防本部に導入検討の参考にするよう求めた。事業の予算は令和7年度当初で0.5億円。

同じ事務連絡によると、消防庁は新技術の関連で、令和7年度補正予算で「新技術現場実装モデル事業」(0.5億円)を新設し、令和8年度からは消防機関と企業の「マッチング支援事業」(当初0.5億円)を始める。消防防災科学技術研究推進制度には令和7年度補正で1.0億円、令和8年度当初で1.4億円を計上した。新技術の研究開発・実用化の推進にかける国費は、令和7年度の2.0億円に対し、令和8年度は1.9億円となっている。

消防庁はAI関連企業と消防機関のマッチング結果も公表しており(119番通報の自動応答、消防本部など15機関がAI企業6社と開発へ 消防庁が連携先を公表 救急出動は年771万件で4.1秒に1回)、企業の技術を消防の現場につなぐ取り組みが続いている。

技術戦略ビジョンは「人が近寄れない現場」を重点に

消防庁が2026年3月にまとめた「消防技術戦略ビジョン」は、外部有識者と消防関係者でつくる「消防技術戦略会議」(2025年6月から開催)の議論を踏まえ、研究開発の5つの重点分野を定めた。AIによる判断支援、ロボット・ドローンの活用、人間拡張技術、IoT技術による連携強化、CBRNE(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)テロや災害への備えの5分野だ。

このうち「ロボット・ドローンの活用による活動可能範囲の拡大」では、危険な場所での活動をロボットなどで代替し、隊員の安全を守りながら活動を続けることを掲げた。具体的な技術のイメージとして、建物の崩壊などで被害の恐れがある場所で要救助者の体温や声、ガス濃度を検知して捜索する技術を挙げ、「倒壊した建物内の瓦礫等の狭隘空隙に進入して要救助者を捜索」する姿を示している。ドローンについては、空中からの映像取得や被災地の状況把握、要救助者の探索など、災害対応での有効性が高まっていると記した。

ビジョンは最新技術活用検証事業についても触れ、他分野で導入が進む技術のうち消防活動に使えるものを、関係府省庁と連携して消防に取り入れる手法を確立するとしている。今回の検証会が対象とする崩落現場や建物内部での情報収集は、ビジョンが重点に掲げた「人が近寄れない現場」の課題と重なる。

会場は災害現場を再現した国の実証拠点

検証会の会場となる福島ロボットテストフィールドは、福島イノベーション・コースト構想に基づいて整備された、陸・海・空のロボットの開発・実証拠点だ。運営側の説明によると、インフラや災害現場など実際の使用環境を再現し、ロボットの性能評価や操縦訓練ができる。

南相馬市復興工業団地内の東西約1,000メートル、南北約500メートルの敷地に「無人航空機エリア」「インフラ点検・災害対応エリア」「水中・水上ロボットエリア」「開発基盤エリア」を設け、浪江町の棚塩産業団地には長距離飛行試験用の滑走路もある。2021年度には、試験用プラントと試験用トンネルで、ワールド・ロボット・サミット2020のインフラ・災害対応カテゴリーの競技が開かれた。

福島イノベーション・コースト構想推進機構は、最新技術活用検証事業の連携先の一つにも名を連ねている。消防庁は、企業と消防機関による共同の検証を通じて、こうした技術の現場への導入を促すとしている。