宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月25日、諏訪理(すわ・まこと)宇宙飛行士が「クルードラゴン宇宙船運用14号機」に搭乗すると発表した。打ち上げは2027年3月以降を予定し、日程が決まり次第あらためて公表する。諏訪さんにとっては初めての宇宙飛行となる。

1月の指名から、乗る機体が決まった

JAXAは2026年1月9日、国際宇宙ステーション(ISS)に参加する各極の国際調整を踏まえ、諏訪さんをISS長期滞在の搭乗員に指名したと発表していた。滞在時期は「2027年頃」とされ、日本実験棟「きぼう」を含むISS各施設の維持・保全と、科学実験などの利用ミッションを担うと説明されていた。今回の発表は、その長期滞在で実際に乗り込む機体が固まった段階にあたる。

ISSは地上から約400キロ上空に建設された有人の実験施設で、日本やアメリカ、ロシアなど計15カ国が協力して運用している。

クルードラゴンは最大7人乗り、海に着水して回収

クルードラゴン宇宙船は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の商業乗員輸送計画(Commercial Crew Program)のもと、スペースX社が無人の物資補給船「ドラゴン」をもとに開発した有人宇宙船である。打ち上げ時の緊急脱出装置や生命維持装置を加え、ISSへの結合も、ロボットアームを使う無人型の方式から、ISS側の乗員に頼らず自動でドッキングする方式に改めた。搭乗できるのは最大7人で、機体の位置や軌道上の環境を表示する画面を備え、カリフォルニア州ホーソーンにある同社の管制センターから監視・制御できる。

任務を終えた機体は大気圏に再突入したあと、小型のパラシュートに続いて4つのメインパラシュートを開き、通常はフロリダ州の東の沖合に着水する。同社の回収船がクレーンで海面から引き上げる仕組みで、回収船には医療設備とヘリポートが備わり、着水後に体調が急変した場合は応急処置や病院への搬送もできる。

4127人が応募し、残ったのは2人

諏訪さんは2023年2月28日、米田あゆさんとともにJAXAの宇宙飛行士候補者に決まった。この選抜には4127人が応募し、書類選抜を通ったのは2266人。第0次選抜で205人、第一次選抜で50人、第二次選抜で10人と絞られ、最終の第三次選抜に残ったのが2人だった。JAXAが宇宙飛行士候補者を選んだのは、その前は2008年度だった。

諏訪さんは2026年1月時点で49歳。2007年6月にプリンストン大学大学院地球科学研究科を修了し、2008年1月に青年海外協力隊員としてルワンダへ派遣された。2010年11月に国連の世界気象機関(WMO)に入り、2014年3月に世界銀行へ移って2023年6月に退職。同年7月にJAXAへ入り、宇宙飛行士候補者の基礎訓練を始めた。

基礎訓練は、工学と宇宙機の知識、科学分野の知識、ISSと「きぼう」のシステムの理解、サバイバル技術や飛行機の操縦・語学・体力といった基礎能力の4分野で構成される。諏訪さんは2024年10月21日付で宇宙飛行士に認定された。2025年9月には、イタリアのマテーゼ近郊で行われた欧州宇宙機関(ESA)のCAVES訓練にも参加している。洞窟の中でチームとして動く訓練で、長期滞在に必要なチームワークやリーダーシップを鍛える狙いがある。

ISSの後を見据えた技術の蓄積

1月の指名に合わせて出されたJAXA理事長の談話は、ISSでの日本人宇宙飛行士の長期滞在で培った有人宇宙技術を土台に、有人与圧ローバーをはじめとする国際宇宙探査に役立つ技術実証や、国際協力の強化、民間との連携拡大を進めているとした。そのうえで、2030年以降の地球低軌道では民間が主体となる活動が活発になると見込み、新たな有人活動の形をつくる取り組みを加速させるとしている。輸送手段の面でも、JAXA、H3ロケット6号機の打ち上げ成功 低コスト「30形態」の試験機のように基幹ロケットの運用実績が積み上がっている。

諏訪さんは発表に合わせたコメントで「打上げまでには、まだ多くの訓練が待っています」としたうえで、「宇宙で得た経験や感動を地球へ持ち帰り、その魅力や価値を多くの方々にお伝えする」と述べた。打ち上げ日は決まり次第、JAXAが公表する。