川崎市は11月4日、まちづくり局の担当部長(59)が同日、価格漏洩に伴う官製談合と入札妨害の容疑で逮捕されたと発表した。市は警察の捜査に全面的に協力するとしている。福田紀彦市長は全職員に服務規律の遵守と綱紀の粛正を指示し、「事実が明らかになった際には厳正に対処してまいります」とのコメントを出した。
市の発表と市長のコメント
発表は、まちづくり局の報道発表資料として公表された。資料は「法令を遵守すべき立場にある本市職員が逮捕され、このような事態を招いたことについては、非常に重く受け止めております」と記している。
市は同日午後6時30分、資料に市長のコメントを追加した。福田市長はコメントで「警察から公表された内容については承知しておりますが、本件は現在捜査中であり、詳細は把握しておりません」と述べた。
逮捕は捜査の段階の手続きで、担当部長の有罪が確定したわけではない。市も、処分は事実が明らかになってからの対応としている。
工事名や金額は資料に記載なし
市の資料が示す容疑は「価格漏洩に伴う官製談合及び、入札妨害」という表現にとどまる。対象の工事や入札の名称、時期、金額、漏れたとされる価格の種類、情報を受け取った相手、適用された条文、担当部長の認否は記載が無く、本紙は確認できていない。
資料は問い合わせ先を3つ挙げている。職員や事案についてはまちづくり局総務部庶務課、工事についてはまちづくり局施設整備部施設計画課、入札・契約については財政局資産管理部契約課である。
施設計画課が属する施設整備部は、市営住宅等を除く市有建築物の工事を担う部署だ。2026年4月の市議会まちづくり委員会の資料によると、市有建築物の新築や増改築、学校施設の予防保全や再生整備、川崎病院の再編整備について、設計と工事監理を受け持っている。ただし今回の容疑がどの工事に関わるのかは、市の資料からは分からない。
「官製談合」を罰する法律
官製談合は、国や自治体の職員が入札談合に関与することを指す。公正取引委員会によると、職員の関与の事例を踏まえて入札談合等関与行為防止法が制定され、2003年1月6日に施行された。2007年3月14日には、職員による入札等の妨害の罪を設けた改正法が施行された。
同法は、入札や契約に関する情報のうち秘密として管理されているものを、特定の者に教えたり示唆したりする行為を、関与行為の一つに挙げている。職員に対する罰則は第8条に置かれ、予定価格など入札の秘密を教えて入札の公正を害した場合が対象になる。
入札の妨害には刑法の規定もある。第96条の6(公契約関係競売等妨害)は、偽計または威力を用いて公の入札の公正を害した者を罰する。今回どの規定が適用されたのかは、市の資料には書かれていない。
| 法律 | 対象となる行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 入札談合等関与行為防止法 第8条 | 職員が職務に反し、談合を唆す、予定価格などの秘密を教えるなどして入札の公正を害する | 5年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金 |
| 刑法 第96条の6 第1項 | 偽計または威力を用いて公の入札の公正を害する | 3年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金、または併科 |
出典: e-Gov法令検索(入札談合等関与行為防止法、刑法)
川崎市の入札で価格はどう扱われるか
市の令和8年度の入札・契約制度の資料によると、工事の一般競争入札は原則として予定価格(税込)1000万円以上の案件で実施する。財政局契約課の入札は、原則として電子入札システムで行う。
工事では、案件ごとに予定価格の80〜95%の範囲で最低制限価格を設定し、これを下回る金額の入札を無効とする方式がある。最低制限価格は落札決定後に公表する。別の方式である低入札価格調査の基準も、同じ範囲で設定し、落札決定後に公表する。
落札者の決定後には、入札結果、入札参加者、入札金額などに加え、予定価格と、最低制限価格または低入札調査基準価格を公表する。財政局と上下水道局の落札結果は、市のサイト「入札情報かわさき」に載る。
処分の目安は免職か停職
市の「市長事務部局における懲戒処分について」は、処分量定の標準の一つに「入札談合等に関与する行為」を置いている。市の契約に関し、職務に反して談合を唆すことや、予定価格など入札の秘密を教えることなどが事例で、目安となる処分は免職か停職である。
入札談合等関与行為防止法は第1条で、公正取引委員会による発注機関への改善措置の要求、関与した職員への損害賠償の請求、懲戒事由の調査といった措置を定めると規定している。今回これらの手続きが取られるかどうかは、現時点で市の資料に記載が無い。
市は今後の対応として、捜査への協力と、事実が明らかになった際の厳正な対処を挙げている。対象の工事や再発防止の方法については、4日の資料では触れていない。
