デジタル庁は11月5日、マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載に関する検討会の第8回会合の資料と議事概要をホームページに掲載した。会合は8月20日にオンラインで開かれた。7月30日時点の保有件数は、iPhoneが約820万件、Androidの電子証明書が署名用で約58万件、利用者証明用で約61万件だった。iPhoneの申請件数は4月に前月の半分以下へ減っており、事務局は、搭載の途中で利用者が離脱している箇所を「定量的に把握していない」と説明した。

iPhoneは1年で約820万件、Androidは3年で約60万件

スマートフォンへの搭載は2段階で始まった。2023年5月11日にAndroid端末で、電子署名と電子認証の機能を持つ電子証明書の搭載が始まった。2025年6月24日には、iPhone端末で電子証明書に加え、氏名、住所、生年月日などを提供する属性証明機能の搭載が始まった。資料1によると、Android端末の方は2026年秋ごろに属性証明機能を加えて「Androidのマイナンバーカード」へ刷新する予定とされていた。

資料2と資料3から読むと、開始から約1年のiPhoneの保有件数は、開始から3年余りのAndroidの利用者証明用電子証明書の約13.5倍にあたる。Androidの保有件数は6月から7月にかけて、署名用が58万5000件から58万3000件へ、利用者証明用が60万8000件から60万7000件へ、それぞれ減った。

月 iPhone 保有件数 iPhone 申請件数 Android 利用者証明用 保有件数
2026年2月 609万3000件 101万7000件 53万2000件
3月 705万7000件 117万7000件 57万7000件
4月 743万3000件 53万6000件 58万9000件
5月 768万4000件 41万2000件 59万9000件
6月 793万5000件 40万1000件 60万8000件
7月 819万6000件 43万8000件 60万7000件
スマートフォンのマイナンバーカードの保有件数と申請件数(千件未満四捨五入。7月は30日までの実績)出典: デジタル庁「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載に関する検討会(第8回)」資料2・資料3

iPhoneの使い道は民間にも広がっている。資料2は、NTTドコモのd払い、auペイメントのau PAY、メルペイ、日本生命などの本人確認での利用例を載せた。米国株取引アプリを運営するWoodstockは、口座開設の手続き完了率が約70%改善したと紹介されている。

伸びは4月に鈍り、8月から戻った

議事概要によると、構成員の1人は、iPhoneの保有件数の伸びが4月以降鈍っているように見えると指摘した。事務局は、2月と3月の伸びが大きいのは確定申告によるもので、実物のカードと同じく例年この時期に申請が増えると答えた。携帯電話の本人確認を厳しくする制度については、経過措置の期間で義務になっていないことなどから、影響はなかったと推測していると述べた。

会合の後の数字は、デジタル庁のダッシュボードで追える。iPhoneとAndroidを合計したスマートフォンのマイナンバーカードの保有枚数は、5月分から7月分まで前月より約26万枚ずつ増えていた。これが8月分で51万6401枚、9月分で47万2467枚の増加に変わった。9月分の保有枚数は979万1610枚で、カード本体の1億472万9857枚の約9.3%にあたる。ダッシュボードは増え方が戻った理由を示していない。

スマートフォンのマイナンバーカードの保有枚数(万枚)

6007008009001,0001,100662.5979.22月4月6月8月9月
iPhoneのマイナンバーカードとAndroidスマホ用電子証明書の登録件数の合計出典: デジタル庁「マイナンバーカードの普及と利活用に関するダッシュボード」(2026年10月30日更新)
数値で見る(単位: 万枚)
項目万枚
2月662.5
3月763.5
4月802.2
5月828.3
6月854.3
7月880.3
8月931.9
9月979.2

離脱の箇所は「定量的に把握していない」

構成員は、搭載までのどの段階で利用者がやめているのか、約820万件の主な用途は何か、使われていない割合はどの程度かを尋ね、今後の広報と操作性の改善の指針になると理由を述べた。

事務局は、スマートフォンのマイナンバーカードを使うサービスについて、現時点でデータ分析のためのツールを導入しておらず、「ユーザーの離脱が起きている箇所を定量的に把握していない」と答え、今後分析を進める必要があるとの認識を示した。定性的には、iPhoneへの搭載時の顔写真の撮影と署名用電子証明書のパスワード入力が原因として考えられるとし、今後は定量的な値を取得できるようにしたいと述べた。

別の構成員は、何をきっかけに搭載したのかを尋ねた。カードそのものを外へ持ち歩かずに済むことが最も重要だとして、外出先で使う健康保険証などを中心に議論すると普及を進めやすいと述べた。署名用の機能についても、実印と同様の効力があることを場面ごとに周知するよう求める意見が出た。事務局は、スマートフォンに電子証明書を搭載する際に注意書きで伝えていると答えた。マイナンバー行政の全体像 カード保有84.5%、自治体システムの3割は移行遅れは、カード全体の制度と普及の状況をまとめている。

救急と運転免許証はカードと同じに使えない

スマートフォンだけでカードの用途をすべて賄える段階には至っていない。資料2と資料3は、スマホ用電子証明書をマイナ保険証としてマイナ救急で利用できると記している。ただし事務局は議事の中で、スマホ用電子証明書は本人が端末で認証することを前提にしており、救急の現場で本人の意識が無い場合の対応を検討していると説明した。暗証番号なしの認証ができないことが課題だとし、マイナ救急を念頭にカードを持ち歩くよう呼びかけているという。

医療機関の対応も途上にある。スマートフォンをマイナ保険証として受け付けられる医療機関・薬局は、2026年8月2日時点で12万8577か所だった。構成員は小規模な医療機関でスマートフォンに対応した読み取り機の設置が遅れている印象があると述べ、事務局は厚生労働省と共有すると答えた。デジタル庁の案内ページは、iPhoneとAndroidのマイナンバーカードはマイナ免許証として利用できないとしている。

端末を手放す際の扱いも取り上げられた。事務局によると、Android端末はリセットしても証明書が残るため、リユース事業者などへガイドラインを出して消去の手続きを取っている。iPhoneはリセットで証明書が消えることを確認している。売却した端末に証明書を残して困っているという問い合わせは受けていないという。

Android版は重大な脆弱性に絞って利用を止める

資料4は、「Androidのマイナンバーカード」の基本方針を示した。端末が条件を満たせば、電子証明書に加えて、カードの代わりとなる電子データも搭載できる。条件を満たさない端末は「機能限定版」として、これまでと同じく電子証明書だけを使う。事務局によると、この電子データにはカードの基本4情報、顔写真、マイナンバーが格納される。

デジタル庁は「2026年10月20日から『Androidのマイナンバーカード』を開始予定」と告知しており、詳細は「Androidのマイナンバーカード」2026年10月20日に開始予定 デジタル庁が発表 本人確認と年齢確認ができる「属性証明機能」を追加が伝えた。同庁の案内ページは10月20日付の更新で、Android端末に入れて利用できるマイナンバーカードとして紹介している。ダッシュボードの保有枚数は9月分までで、10月20日以降の利用状況は今回確認した資料からは読み取れない。

安全対策として、資料4は耐タンパ性のあるチップに鍵を保管し、第三者機関の脆弱性検査でチップとアプレットの安全性を確かめるとした。チップやアプレットなどに重大な脆弱性が確認された場合に、即時に利用を制限するサーバーを構築する。Google Play Integrity APIで、root化やカスタムROMなど正規の状態にない端末を検知する。構成員の1人は、2025年の検討会ではセキュリティパッチの水準に応じて利用を制御する案が示されたが、無関係の脆弱性で突然使えなくなるおそれがあると指摘しており、チップなどに直接関係する脆弱性に絞った今回の方針を評価した。

一方、議事次第に載った「Android脆弱性検査レポート評価結果」(資料5)は「構成員等限り」で公開されていない。資料4のシステム構成の部分も「構成員限り」と記されている。そのため、脆弱性検査の評価の中身は、公開された資料からは確認できない。安全性の説明については、構成員から新旧方式の差分を含めて具体的に示す資料が必要だとの意見が出た。事務局は「現状は対応が足りてない部分もある」として、案内を工夫する考えを示した。