経済産業省は9月25日、2025年度(令和7年度)の消費者相談報告書を公表した。同省の消費者相談室が受け付けた相談は7220件で、前年度の7020件から2.8%増えた。全体の件数はほぼ横ばいだが、取引の種類ごとに見ると増減がはっきり分かれている。
訪問販売と通信販売は減り、電話勧誘販売が増えた
事項別で最も多いのは特定商取引法に関する相談で、4878件と全体の67.6%を占めた。前年度は4746件で、構成比は67.6%と変わっていない。
その内訳が動いている。件数が最も多い訪問販売は1452件から1372件へ、次に多い通信販売は1428件から1347件へと、いずれも減った。代わりに増えたのが電話勧誘販売で、867件から957件へ90件増えている。報告書は、2022年度に一時的な減少が見られたものの近年は増加の傾向が続いている、としている。
電話勧誘販売の相談の中身は、クーリング・オフに関するものが447件と約半数を占め、契約書面を渡されない・記載に不備があるという相談が177件、解約に関するものが160件と続いた。商品・サービス別では、副業支援コンサルタントなどを含む「その他の役務」が426件で44.5%を占める。
報告書が勧誘の手口として挙げたのは、「興味を持って登録したSNS等で、会議用アプリの参加URLが送られてきて、個別に勧誘を受けた」という形だ。電話をかけてくる相手を消費者がSNS経由で自ら登録している点が、従来の無差別な電話勧誘と異なる。副業スクールやAI講座の勧誘でも同じ経路が確認されており、国民生活センターは「AI講座」「副業スクール」の相談3,551件 5年で1,169件から3倍に SNS広告からWeb会議へ誘われた契約は平均87万円と報告している。
エステ・美容医療の中途解約が2割増
長期・高額の契約を規制する特定継続的役務提供も、611件から732件へ19.8%増えた。全体に占める割合は8.7%から10.1%に上がっている。
内訳は「教育・エステ」が638件で87.2%と大半を占めた。さらに細かく見ると、エステティックが257件で最も多く、美容医療が187件、学習塾が60件、語学教室が52件、結婚相手紹介サービスが43件と続く。相談の内容は解約に関するものが278件、クーリング・オフに関するものが266件で、あわせて約75%を占めた。報告書は、解約の拒否や違約金の支払いなど中途解約をめぐる相談が目立った、としている。
報告書が挙げた事例の一つは、1年間に20回の痩身エステを受ける契約をした30歳代の女性が、通っていた店舗の閉店が続いたため中途解約を申し出たところ、返金が半年後になると告げられた、というものだった。
このほか、事業者が自宅を訪ねて貴金属などを買い取る訪問購入が181件から232件へ28.2%増え、連鎖販売取引も119件から145件へ21.8%増えた。
相談の6割は50歳代以上
年代が分かる相談は2886件で、全体の40.0%にとどまる。そのうち50歳代が728件で25.2%と最も多く、40歳代が540件、60歳代が521件、70歳代以上が468件と続いた。50歳代以上を合わせると約6割を占める。
相談の寄せられ方は二つある。本人などの個人からが3688件(51.1%)、各地の消費生活センターなどからが3532件(48.9%)で、ほぼ半々だ。個人からの相談は通信販売が879件と多いのに対し、消費生活センター経由では訪問販売が1133件で最多となり、どの経路で届くかによって中身が違う。
クーリング・オフの期間は取引の種類で異なる
ここで出てくる取引の区分は、特定商取引法が定めたものだ。消費者庁の解説によれば、同法は訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入の7類型を対象に、勧誘前に事業者名と勧誘目的を告げる義務、虚偽の説明の禁止、契約時の書面交付義務などを課している。
無条件で契約を解除できるクーリング・オフの期間は類型ごとに違う。訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入は書面を受け取ってから8日以内、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は20日以内で、通信販売にはクーリング・オフの規定そのものがない。今回の相談でクーリング・オフ関係が各類型の最多項目に並ぶのは、この期間内に手続きが間に合うかどうかが争点になりやすいためとみられる。
SNSのメッセージを通じた勧誘については、消費者庁の検討会がSNSのメッセージ勧誘に8日間のクーリング・オフ 消費者庁検討会が中間取りまとめ 解約させない手口も規制対象にを示している。経産省の相談室は本省で2380件、全国の経済産業局で4840件を受け付けた。
