文部科学省は10月7日、スタートアップの大規模な技術実証を支える「SBIRフェーズ3基金」事業の宇宙分野のうち、事業テーマ「民間ロケットの開発・実証」について、予算の追加配分を決めたと公表した。対象はインターステラテクノロジズの1社で、小型人工衛星の打ち上げロケット「ZERO」の技術開発・飛行実証にあてる。
公表資料によると、審査にかけられたのは1件で、追加配分を決めたのも1件。外部の有識者でつくるステージゲート審査委員会が臨時に開かれ、書面審査とプレゼンテーション審査を実施した。同社の第3段階(フェーズ3)は2028年3月末までが事業期間で、交付額の上限は73.7億円。ここに39.3億円の追加配分を決めた。
4社から2社へ、絞り込みの末に残った1社
この事業テーマは2022年度の補正予算で造成された基金を使い、2023年9月に4社の採択が公表された。インターステラテクノロジズ、SPACE WALKER、将来宇宙輸送システムの3社が第1段階の交付上限20.0億円、スペースワンが3.2億円という内訳だった。
その後、段階ごとに対象を減らす審査が重ねられた。文科省の資料は、2024年9月の審査で4社から3社へ、2026年3月31日の審査で3社から2社へ絞り込んだと記している。3月に第3段階への移行が認められたのはインターステラテクノロジズとスペースワンの2社で、移行が認められなかった将来宇宙輸送システムは、一定の技術力があると判断され、自ら事業継続の意思を示したことから第2段階の期間延長が認められた。
3月の時点でインターステラテクノロジズには第2段階で14.4億円の追加配分が決まっていたが、第3段階の追加配分額は示されていなかった。今回の39.3億円が、その空欄を埋めた形になる。各段階の交付上限と追加配分額を単純に積み上げると、同社に向けた支援枠は最大193.7億円となる。
条件は「2027年度中にTRLをレベル7へ」
SBIR(Small Business Innovation Research)は、スタートアップなどの研究開発を促し、その成果を国主導で社会実装につなげるための制度だ。文科省はこのうち大規模な技術実証にあたる「フェーズ3」向けに基金を造成し、宇宙、核融合、防災の3分野を対象にしている。基金を設置する法人には一般社団法人低炭素投資促進機構が選ばれた。
配分の目安額は宇宙分野が556億円で、内訳は宇宙輸送(民間ロケットの開発・実証)が350億円、スペースデブリ対策が206億円。核融合分野は65億円、防災分野は40億円とされている。
特徴は、段階の切り替わりごとに継続の可否を判定する「ステージゲート審査」を置き、支援先を絞っていく点にある。2026年3月の審査では、基本設計が完了しているか、技術の成熟度を段階で示すTRLを2027年度中にレベル7まで引き上げる計画になっているか、という2つを必須条件とした。そのうえで第2段階での成果、目標と計画の妥当性、実施体制、事業趣旨との整合性、必要経費の妥当性を採点し、点数の高い順に移行を認めている。今回の審査委員会は委員長と副委員長を含む6人で構成され、大学の航空宇宙・機械工学の研究者や投資・事業会社の役員が名を連ねた。
デブリ低減の3社にも追加配分
同じ基金のもう一つの宇宙分野の事業テーマ「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」でも、文科省は10月2日に追加配分を公表している。審査件数は3件で、3件すべてに追加配分を決めた。
内訳は、アストロスケールが第2段階で2.5億円、BULLが2.6億円。Pale Blueについては第2段階の追加配分額の記載がない。資料は、3社への追加配分を決めたうえで第2段階分の額を今回示したとしており、第3段階の追加配分額は第3段階への移行にかかる審査の結果とあわせて公表するとしている。アストロスケールは大型の衛星を対象に近づいて撮像・診断するミッション、Pale Blueは衛星の軌道離脱と衝突回避に使う超小型の水イオンスラスタとホールスラスタ、BULLは衛星がデブリになるのを防ぐ軌道離脱促進装置の開発・実証に取り組んでいる。
打ち上げ手段と、使い終えた衛星を軌道から安全に下ろす手段の両方に国の資金が入っている構図だ。衛星を運用する側の動きも活発で、アクセルスペース、地球観測衛星「GRUS-3」7機を打ち上げへ 7月以降、衛星群を10機超に増強のように、小型衛星を多数並べる事業が国内でも広がっている。
評価されたのは量産ノウハウと実証への統合計画
インターステラテクノロジズのZEROは、液化メタンを燃料とするロケットエンジンを新たに開発し、信頼性とコスト競争力の両立をめざす計画だ。文科省の資料は、同社が民間単独では日本初となる観測ロケットの宇宙空間到達を果たした実績を土台にしていると説明している。
2026年3月の審査で高く評価された点として、資料は、大手自動車メーカーとの業務提携などで量産に向けた製造ノウハウを取り入れていること、研究開発段階で選んだ要素技術や製造・運用方法をZERO初号機の位置づけを含めて具体的な実証へ統合する計画になっていること、開発途中で起きた問題への対応やリスク管理が進んでいることを挙げた。
事業全体の目標年度は2027年度だ。文科省は、国際競争力を持つロケットの開発と飛行実証を行うスタートアップを集中的に支援する枠組みとして2023年度に支援を始めたと説明している。今回の追加配分は、絞り込みを終えたうえで残った企業の第3段階に資金を上積みするものとなる。
