特許庁がまとめたAI関連発明の出願状況調査によると、AI技術そのものに特徴がある「AIコア発明」の特許出願は、2023年に中国へ10万1459件が出された。米国への1万9336件の5.2倍、日本への3612件の28.1倍にあたる。2014年は中国が1226件、米国が2733件で、中国は米国の半分以下だった。9年で中国が約83倍に膨らみ、順位が入れ替わった。

この調査は特許庁の審査第四部 審査調査室が「令和7年度簡易型技術動向調査」として令和7年10月に公表したもので、2023年までの出願データを使っている。特許庁は2019年7月からこの調査を続けており、ページの最終更新は2026年3月30日。

「AIコア発明」と「AI関連発明」は別の数え方

調査は対象を二段に分けている。AIコア発明は、特許庁の分類(FI)で「特定の計算モデルに基づく計算装置」を指すG06Nが付いた出願で、量子コンピューティングのG06N10は除いてある。機械学習やニューラルネットワークの仕組みそのものを発明とするものがここに入る。

これに、AIを画像処理や製造、医療などの各分野へ応用した「AI適用発明」を加えたものが「AI関連発明」だ。同じ「AIの特許」でも、どちらを数えるかで件数が大きく変わる。

日本国内を見ると、AI関連発明の出願は2023年に1万1445件。2014年以降に急激に増えている。一方、AIコア発明だけを取り出すと2023年は2397件で、特許庁は「近年は横ばい」としている。AIの基礎技術そのものを出願する動きは伸びが止まり、増えているのは応用側という構図になる。

なお、国内の推移を示した図と各国比較の図は使っている特許データベースが異なるため、日本のAIコア発明の2023年の件数が前者では2397件、後者では3612件と一致しない。国同士を比べるときは後者の数字、日本国内の時系列を追うときは前者の数字を使う必要がある。

増えているのはビジネス向けの情報通信技術

出願をもっとも適切に表す分類(主分類)で内訳を見ると、2014年から2021年はG06NのAIコア技術と、画像処理・画像認識のG06T・G06Vが付いた出願が目立って増えた。それ以外の分類でも増加傾向で、特許庁は「AI技術の適用先が拡大していることがうかがえる」としている。

変化が出たのは2022年から2023年で、ビジネスに適合した情報通信技術のG06Qが付いた出願の増加が顕著になった。特許庁はこの傾向について、生成AIに関する技術やサービスの急速な発展に起因すると考えられるとしている。AIの研究そのものではなく、業務や商取引にAIを組み込む側の出願が増えたということだ。

深層学習の技術名で出願書類を検索した集計も付いている。画像認識に使われるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)と、時系列を扱うRNN・LSTMに言及する出願は2021年にかけて増えたあと減少に転じた。対して、生成AIの土台になっているトランスフォーマに言及する出願だけは増え続けている。特許庁は、トランスフォーマは2017年に論文が発表された技術のため、2017年以前のデータはノイズの可能性が高いと注記している。

中国への出願は91.3%が中国籍

どの国の出願人がどこで権利を取ろうとしているかを見た集計もある。2014年から2023年の累計で、日本への出願は3万215件。うち日本国籍の出願人によるものが1万3637件で45.1%を占め、次が米国籍の8659件で28.7%、中国籍が2477件で8.2%だった。日本市場向けの出願のうち3割近くを米国籍が占めている。

中国への出願は36万6612件で、そのうち33万4621件、91.3%が中国籍の出願人によるものだった。米国籍は1万7398件で4.7%、日本国籍は3888件で1.1%にとどまる。米国への出願13万3040件のうち米国籍は9万4056件で70.7%で、中国よりは外国からの出願の比率が高い。

日本国籍の出願人が国外へ出したAIコア発明は、米国が7196件、欧州特許庁が3978件、中国が3888件、韓国が913件。特許は出願した国・地域でしか効かないため、この数字はそのまま「日本企業がどの市場でAI技術の権利を確保しようとしているか」を示す。日本のAI分野の研究開発の規模については、AIの研究開発費は2021年度1744億円から2024年度3235億円へ ただし研究開発費全体に占める割合は1.4%で3年横ばい 1主体あたりはAI以外の10分の1のとおり、金額は増えているが研究開発費全体に占める割合は動いていない。

出願先ごとの2014年と2023年の伸びを並べると、日本は535件から3612件へ約6.8倍、米国は2733件から1万9336件へ約7.1倍、欧州特許庁は593件から4279件へ、韓国は249件から1万474件へ増えた。出願人の国籍を問わないPCT国際出願も816件から9174件になっている。伸び率では各国・地域が7倍前後で並ぶなかで、中国だけが約83倍という別の桁で動いた。なお、国内の特許出願をどんな主体が担っているかについては、中小企業の特許出願は全体の13.4%に低下 前年の16.0%から 企業数では99.7%を占めるのに 特許行政年次報告書2026年版のとおり、大企業への集中が進んでいる。