国税庁は11月4日、国税の電子申告・納税システム「e-Tax」で不審な通信を検知し、確認のための機器メンテナンスに入ったと公表した。メンテナンスの間、e-Taxは利用できない。終了の時期は示されておらず、5日午前0時50分の時点でも再開の案内は出ていない。通信の中身や、利用者の情報が外部へ流れたかどうかについて、お知らせは触れていない。

19時の追記で「不審な通信」と説明

e-Taxのホームページは「緊急のお知らせ」の欄に「緊急メンテナンスのお知らせ」を掲げている。11月4日付で、「令和8年11月4日 19時 追記」の見出しの下に「本日、e-Taxにおいて不審な通信を検知したため、現在、確認のための機器メンテナンスを実施しております」と記した。同じページの追記の下には、検知には触れず、緊急メンテナンスの実施だけを伝える文面も残る。どちらの文面も、終了時期は改めてホームページで知らせると結んでいる。

公表された内容はここまでだ。検知した時刻、メンテナンスを始めた時刻、通信の相手や種類、外部からの攻撃かどうか、申告データや利用者の情報に異常があったかどうかは、いずれも書かれていない。国税庁の報道発表の一覧にも、この件の掲載はなかった(5日午前0時台に確認)。

このため、現時点で確かなのは「不審な通信を検知した」「確認のために機器を調べている」「その間は使えない」の3点になる。情報が流出したとも、流出していないとも、国税庁は述べていない。

e-Taxは、確定申告などの国税の申告や申請、納税をインターネットで行う仕組みだ。ホームページの案内では、メンテナンスの時間を除いて24時間利用できる。9月の緊急メンテナンスは「9月25日午前0時から4時まで」と日時を示して告知された。今回は終了の時期を示しておらず、その点で異なる。

所得税申告の77.4%、法人税申告の91.8%が通る仕組み

e-Taxがどれだけの手続きを担っているかは、国税庁が10月に公表した令和7年度の利用状況で分かる。個人の所得税申告は2111万4863件がe-Taxで出され、オンライン利用率(手続きの総件数のうちe-Taxで行われた割合)は77.4%だった。法人税申告は290万6217件で91.8%に上る。

手続き e-Taxでの件数 オンライン利用率
所得税申告 2111万4863件 77.4%
法人税申告 290万6217件 91.8%
消費税申告(法人) 237万8162件 92.6%
消費税申告(個人) 202万6836件 80.3%
相続税申告 18万406件 70.2%
令和7年度のe-Tax利用状況

出典: 国税庁「令和7年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等について」

納付の面でも、e-Taxからの口座振替である「ダイレクト納付」が686万件あり、国税の納付全体の13.6%を占めた。一方、金融機関や税務署の窓口での納付は2270万件(45.0%)で、コンビニエンスストアでの納付は269万件(5.3%)だった。利用の推移と目標は「相続税の電子申告が7割に 前年度50.3%から急伸 国税庁の令和7年度e-Tax実績」で伝えた。

法人の一部にとって、e-Taxは選択肢ではなく義務でもある。法人税法は、資本金が1億円を超える法人などの「特定法人」に、法人税の申告を電子情報処理組織、つまりe-Taxで行うよう定めている。

11月の期限と、間に合わないときの制度

停止が長引くと、11月の期限が問題になる。給与などから天引きした源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに国へ納める。10月に支払った分の期限は11月10日で、公表の6日後に当たる。給与の支給人員が常時10人未満の事業者は、納期の特例の承認を受ければ、給与などの分の納付を年2回にまとめられる。

法人の確定申告は、事業年度の終了の翌日から2か月以内が原則だ。9月決算の法人は11月30日が期限になる。所得税の予定納税も、第2期分の納期が11月1日から30日までとなっている。

e-Taxを使う事業者や税理士にとっては、電子申告の送信もダイレクト納付も、再開までは手続きができない。ただ、国税庁のお知らせは、期限の扱いや代わりの手続きを案内していない。

国税通則法11条は、災害その他やむを得ない理由で期限までに申告や納付ができないとき、その理由がやんだ日から2か月以内に限って期限を延ばせると定める。国税庁の通達は、この理由の一つに、国税庁が運用する電子申告のシステムの「期限間際の使用不能」を挙げている。

延ばし方は、e-Taxに関わるものでは2通りある。一つは「対象者指定」で、システムが使えず手続きのできない人が多数に上ると認めたとき、国税庁長官が対象者の範囲と期日を指定する。指定された範囲に入る人は申請が要らず、指定は官報に載る。もう一つは「個別指定」で、納税者が所轄の税務署長に申請する。

e-Taxの義務がある特定法人には別の定めもある。電気通信回線の故障、災害その他の理由でe-Taxの使用が困難な場合、所轄の税務署長の承認を受ければ書面で申告できる(法人税法75条の5)。事前に申請書を出す必要があり、指定を受けたい期間の開始日までに処分の通知が無ければ承認があったものとみなされる。

前例もある。令和4年(2022年)3月14日から15日にかけて、e-Taxにログインしにくい、送信できないといった接続障害が断続的に起きた。確定申告の時期で、原因はデータベースへの処理の負荷だった。国税庁は個別に期限を延ばすこととし、申告書に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨を書く方法を示した。3月18日までに期限を迎える申告などについて、この方法で延ばす期間を4月15日までとした。今回の停止にこれらの制度を当てはめるかどうかについて、国税庁はまだ何も示していない。

システム更改から41日後の停止

国税庁は今年9月24日に国税システムを更改したばかりだ。更改に合わせ、9月19日午前0時から24日午前8時30分までと、26日の終日をe-Taxの利用できない時間として告知していた。その間の25日にも、午前0時から4時まで障害対応の緊急メンテナンスを告知した。11月2日には、e-Taxソフトで一部の様式が誤って表示される不具合を解消する更新を行った。この不具合で申告の内容に誤りが生じることはないという。

今回の不審な通信とシステム更改の関係について、お知らせに記述は無く、関連があるかどうかは分からない。

国税庁は以前から、e-Taxをかたるメールへの注意を呼びかけており、10月16日にも案内を更新した。e-Taxから送るメールは原則として本文にURLを載せず、送信元の表記は「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」に「info@e-tax.nta.go.jp」が付く形に限られる。国税庁は、再開の時期をホームページで知らせるとしている。

調査結果を待たずに期限の扱いを示すべきではないか

国税庁は令和8年度末の目標を所得税申告で80%、法人税申告で92%に置き、e-Taxの利用を進めてきた。大法人には法律で利用を義務付けてもいる。納税者に電子の手続きを求める以上、それが止まったときの説明も国税庁の職務に含まれる。

通信の中身や情報流出の有無は、調べなければ答えられない部分があるだろう。だが、期限の扱いは調査の結論を待たなくても決められる。11月10日の納付期限までの日数は限られている。期限を控えた事業者や税理士の立場に立てば、対象者指定を使うのか、個別の申請を求めるのか、窓口での納付に切り替えるよう案内するのかを、再開の見通しと合わせて早く示すべきではないか。流出の有無についても、確認できた範囲と確認中の範囲を分けて公表することが、納税者が自分の情報を守る判断の前提になる。