三菱商事は11月4日、自己株式を上限1兆円取得し、取得した全数を消却すると発表した。11月5日から2027年7月31日まで、東京証券取引所の市場で買い付ける。同日発表した2027年3月期中間期(2026年4〜9月)の連結決算は、純利益が前年同期比74.2%増の6197億円だった。通期の純利益予想は5月1日公表の1兆1000億円から1兆2000億円に引き上げた。年間配当予想の1株125円は据え置いた。
取得枠は1兆円、全数を来年8月に消却
自己株式の取得と消却は、同日の取締役会で決議した。発表文によると、取得価額の総額は1兆円、取得する株式の総数は4億2000万株をそれぞれ上限とする。取得の方法は東京証券取引所での市場買付で、取得した株式は全数を2027年8月31日に消却する。
自己株式の取得は、会社が自ら発行した株式を買い戻すことを指す。消却すると発行済株式の数そのものが減るため、1株当たりの利益の計算では分母が小さくなる。
同社は、11月2日の終値で取得すると仮定した場合、1兆円で買える株数は発行済株式総数(自己株式を除く)の約6%に相当すると説明している。9月30日時点の同総数は36億6335万8124株で、上限の4億2000万株はその約11.5%に当たる。11月2日の終値のままなら、株数の上限に届く前に金額の上限に達する計算になる。
取得の理由について、発表文は「経営戦略2027」における株主還元及びキャッシュフロー配分の考え方に基づき、「資本効率の向上を図るものです」と説明した。あわせて、財務健全性を維持しつつ、成長戦略の実現に向けた規律ある投資を「引き続き積極的に検討していく方針」だとしている。
1兆円は、今回引き上げた通期の純利益予想1兆2000億円の約83%に当たる。同じく通期予想として示した営業収益キャッシュ・フロー1兆3800億円と比べると約72%で、9月末の現金及び現金同等物1兆4840億円の約67%になる。
同社の自己株式の残高は、この半年で大きく減っていた。決算短信によると、2026年3月末に3億6742万7682株あった自己株式は、9月末に4717万618株となった。金額では1兆1135億円から1107億円に減っている。中間期の間に9980億円分を消却したことが主な理由だ。
消却に伴い、自己株式を含む発行済株式数は3月末の40億2892万6353株から、9月末の37億1052万8742株に減った。
前年同期(2025年4〜9月)の中間期には、自己株式の取得と処分が純額で5996億円あった。今回の中間期は取得がほとんどなく、キャッシュ・フロー計算書の自己株式の増減は900万円の支出にとどまった。財務活動によるキャッシュ・フローの支出が前年同期の4218億円から2105億円に減ったのは、前年度の自己株式取得などの反動だと短信は説明している。
純利益74%増、要因は市況上昇と事業売却 7部門すべて増益
4〜9月期の収益は10兆4104億円で、前年同期比20.5%増えた。税引前利益は77.9%増の8158億円、純利益は前年同期の3558億円から2639億円増の6197億円だった。基本的1株当たり中間利益は91円87銭から169円21銭に増えた。
短信は増減の要因を項目ごとに挙げている。売上総利益は7065億円から9736億円に増えた。要因は市況の上昇とした。有価証券損益は398億円から1049億円に増え、エム・シー・ヘルスケアホールディングスの株式売却に関連する利益と、千代田化工建設を持分法適用会社にしたことに伴う再評価益を計上した。
固定資産の除却・売却損益は90億円の損失から167億円の利益に転じた。豪州の原料炭事業の売却に関連する損益が要因だ。持分法による投資損益は2369億円から2880億円に増えた。銅価格の上昇と、海外の食品原料事業での傘下事業の売却に関連する損益を理由に挙げた。資源関連の投資先からの受取配当金も増え、金融収益は1595億円から1956億円になった。
費用も増えている。販売費及び一般管理費は5838億円から6796億円に増えた。円安に伴う為替換算の影響と貸倒引当金の増加による。金融費用は社債と借入金の増加による金利の増加で818億円から1145億円になり、法人所得税は669億円から1662億円に増えた。
部門別の純利益は、7部門すべてが前年同期を上回った。
| 部門 | 前年同期 | 今期 |
|---|---|---|
| エネルギー&パワーソリューション | 1053億円 | 1901億円 |
| 金属資源 | 466億円 | 1358億円 |
| S.L.C. | 527億円 | 768億円 |
| 社会インフラ | 438億円 | 666億円 |
| モビリティ | 400億円 | 593億円 |
| 食品産業 | 357億円 | 449億円 |
| マテリアルソリューション | 214億円 | 285億円 |
出典: 三菱商事「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」
最も大きいエネルギー&パワーソリューションは1901億円で、前年同期の1053億円から848億円増えた。増加の幅が最も大きいのは金属資源の892億円で、466億円から1358億円へ約2.9倍になった。この2部門を合わせると3259億円で、全社の純利益の半分を超える。短信は部門ごとの増減要因を示していない。
通期予想は1兆2000億円、下期は5803億円の想定
通期の純利益予想は、5月1日公表から1000億円(9.1%)増やして1兆2000億円とした。前期比では49.9%の増益になる。同社は修正の理由について、「市況の追い風をとらえた」エネルギー&パワーソリューションや金属資源などの増益を見込むと説明している。稼ぐ力を測る指標として同社が示す営業収益キャッシュ・フローの予想も、1兆2500億円から1兆3800億円に増やした。
中間期の純利益は新しい通期予想の51.6%に当たる。通期予想から中間期の実績を差し引くと、下期(2026年10月〜2027年3月)の純利益は5803億円となり、中間期の6197億円を下回る想定だ。
配当の予想は変えていない。中間配当は1株62円で、12月1日に支払いを始める予定だ。期末配当63円と合わせた年間配当は125円で、前期の110円から15円増える。1株当たりの当期利益の予想は330円43銭とした。
同業の住友商事も11月2日、5月1日公表の6300億円だった通期の純利益予想を6700億円に引き上げた(住友商事、通期純利益予想を6700億円に上げ 年間配当44円に増配)。
投資の支出は1兆円超、フリーキャッシュ・フローは赤字
中間期の現金の動きを見ると、利益の増加と同時に投資の支出も増えた。営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期の4280億円から9913億円に増えた。営業収入の増加と運転資金の負担の減少が要因だ。一方で投資活動による支出は1988億円から1兆1280億円に増え、両者を合わせたフリーキャッシュ・フローは前年同期の2292億円の黒字から1367億円の赤字に転じた。
投資の支出が増えた主な要因は、米国のシェールガス事業の株式取得と、千代田化工建設の持分法適用会社化に伴う現預金の減少だ。TOYO TIREの株式売却による収入はあった。連結の範囲では、Diamond Resources III LLCなど2社が新たに加わり、千代田化工建設とエム・シー・ヘルスケアホールディングスの2社が外れた。
シェールガス事業の連結開始で、3月末に13兆9800億円だった非流動資産は9月末に15兆1406億円に増えた。リース負債を除くネット有利子負債は3兆8882億円から4兆4318億円へ5436億円増えている。9月末の現金及び現金同等物は、3月末から3575億円減った。総資産は24兆2576億円で、親会社所有者帰属持分比率は39.1%から40.4%に上がった。
今回の1兆円の取得は11月5日に始まるため、これらの数字には含まれていない。中間期には配当として2014億円を支払っている。買付の資金をどのように手当てするかについて、発表文と短信に記載はない。
