政府は10月2日午前10時45分から10分間、総理大臣官邸2階大ホールで第45回復興推進会議を開いた。議事は「復興加速化への取組について」の1件で、復興庁が同じ題名の資料を配布した。この資料に、東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難指示が出た福島県12市町村の人口が、住民票の人数と実際に住んでいる人数の2本立てで載っている。
住民票はあるが、そこに住んでいない
12市町村の住民基本台帳の人口は、2026年5月1日時点で合計15万5347人。これに対し、実際にその市町村で暮らしている「実居住人口」は合計11万2897人で、72.7%にあたる(いずれも本紙で合算)。差し引き4万2450人は、住民票を残したまま別の場所で生活している計算になる。
割合は自治体によって大きく開く。最も低い双葉町は住民票5029人に対し実居住243人で4.8%。次いで大熊町が9763人に対し1207人で12.4%、浪江町が1万3944人に対し2482人で17.8%、富岡町が1万903人に対し2792人で25.1%、飯舘村が4297人に対し1509人で35.1%、葛尾村が1194人に対し470人で39.4%と続く。
一方で、避難指示の対象が一部にとどまった自治体の差は小さい。田村市は3万1991人に対し3万1332人で97.9%、南相馬市は5万4356人に対し5万1994人で95.7%、川俣町は1万1038人に対し1万498人で95.1%、広野町は4492人に対し4093人で91.1%である。帰還が進んだかどうかが、同じ「被災12市町村」の中で二極化している。
震災前との比較でも落差は残る。12市町村の住民票人口は2011年3月時点で合計20万9746人だった(本紙で合算)。現在そこで実際に暮らしている11万2897人は、震災前の住民票人口の53.8%にあたる。
なお復興庁は、数字の出どころについて市町村のホームページや市町村への聞き取りに基づくと注記しており、南相馬市・浪江町・大熊町・楢葉町の4市町は2026年4月30日時点の値を使っている。
避難者は47万人から2.5万人へ
全国の避難者数は、発災当初の47万人から2026年8月時点で2.5万人まで減った。うち福島県全体が2.2万人を占める。応急仮設住宅の入居者は2012年4月の31.6万人を最大に、2026年5月時点でゼロになった。
住まいとインフラの整備は数字の上では終わっている。復興道路・復興支援道路は計画延長570キロメートルが2021年12月に全線開通し、災害公営住宅2万9654戸と高台移転による宅地造成1万8226戸は、いずれも2020年12月に計画戸数を満たした。避難指示区域の面積は2013年8月の1150平方キロメートルを最大に、2023年5月時点で309平方キロメートル(27%)まで縮んでいる。
産業の側では、福島県浜通り地域などへの企業立地が2026年9月末までの累計で452件、雇用創出数は5327人。日本産の農林水産物・食品に輸入規制をかけている国・地域は、最大の55か国・地域から2025年11月時点で5か国・地域に減り、50か国・地域が規制を撤廃した。
ただし総生産(建設業を除く)で見ると、岩手県と宮城県は震災前の水準におおむね戻った一方、福島県は県全域で震災前の水準にとどまり、12市町村はさらに低い水準に置かれたままだと復興庁は資料に明記している。ハードの整備率とは別の指標で、復興の遅れがどこに残っているかがはっきり分かれている。
除去土壌、2045年3月までに福島県外で最終処分
会議のまとめで高市首相は、除染で出た土(除去土壌)の扱いに時間を割いた。「除去土壌等の県外最終処分の実現に向けては、理解醸成を通じた『復興再生土』の利用を促進するため、全閣僚が全面的に協力するようお願いします」と述べ、「また、福島県外最終処分に向けた2030年以降の道筋を具体化していきます」と続けた。
中間貯蔵・環境安全事業株式会社法第3条第2項は、国は「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」と定めている。環境省はこれを2045年3月までと説明している。期限まで18年半を切ったが、処分先はまだ決まっていない。
中間貯蔵施設は大熊町と双葉町にまたがる約1600ヘクタールの区域にあり、2026年6月末時点で約1400万立方メートルの除去土壌等を保管している。居住率が4.8%と12.4%で最も低い2町が、県内の除去土壌を引き受けている構図である。
この量を県外へ運び出す前に減らす手段が「復興再生利用」である。除去土壌のうち放射能濃度が1キログラムあたり8000ベクレル以下のものを「復興再生土」と呼び、公共事業などで使い直す。8000ベクレルという線引きは、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下に収まる濃度として設定された。環境省によると、この基準に収まる土が全体の約4分の3を占める。残る4分の1が県外最終処分の対象になる。
実際の施工は官公庁の敷地から始まった。首相官邸では2025年7月19日と20日に、7メートル四方の範囲へ復興再生土約2立方メートルを埋め、上から20センチメートルの土をかぶせた。霞が関では中央合同庁舎第3号館(国土交通省・海上保安庁)の正門駐車場花壇、第6号館(法務省・検察庁ほか)の北側駐車場の花壇、第2号館(総務省・警察庁・消防庁ほか)の中庭花壇、外務省南庁舎入口の盛土で使われ、2026年4月には防衛省市ヶ谷地区と最高裁判所の正門側緑地帯でも施工された。復興庁の資料は、官邸と霞が関の中央官庁など12か所に続いて地方支分部局へ広げる段階だとしている。2026年8月29日に仙台合同庁舎B棟、8月30日にさいたま新都心合同庁舎1号館で施工が済んでいる。
環境省は施工地点の空間線量率を工事後1か月間は週1回、その後1年間は月1回測ると定めている。これまでの測定結果は施工前と比べて1時間あたりマイナス0.02〜プラス0.06マイクロシーベルトの範囲で変動し、平均では0〜プラス0.04マイクロシーベルトだったとして「人体への影響を無視できるレベル」と評価している。
首相は「東日本大震災」と「福島第一原子力発電所の事故」から15年6か月が経過したとしたうえで、「福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし」と締めくくった。死者は震災関連死を含め1万9787人、行方不明者は2549人(2026年3月1日時点)に上る。
第3期の5年間、事業規模は1.9兆円程度
2026年度は「第3期復興・創生期間」の初年度にあたる。2025年6月20日に閣議決定された復興の基本方針は、2021〜2025年度の第2期に続く2026〜2030年度の5年間を第3期と位置づけ、「今の5年間以上に力強く復興施策を推進していくための財源を確保する」と明記した。5年間の事業規模は1.9兆円程度を見込み、このうち福島県分は第2期の規模を十分に超えると見込んでいる。政府の予算編成全体の方針は、経済財政諮問会議、令和9年度予算を「責任ある積極財政元年」に 補正予算依存からの脱却を提言 令和7年度補正の物価高対策約3兆円は見直し 長期金利は3%程度 で示されている。
第3期の中身として基本方針が挙げるのは、帰還困難区域内の森林整備の本格復旧、2030年度末までに約1万1000ヘクタールを目標とする営農再開の加速化、福島国際研究教育機構(F-REI)の施設整備の前倒しなどである。営農再開が可能な農地は津波被災農地1万9610ヘクタールのうち1万8960ヘクタール(97%)まで戻っており、残るのは原子力災害で手が付けられない区域が中心になる。
基本方針は、第3期の開始から3年後をめどに必要な見直しを行うと定めている。2026年度が初年度なので、次の節目は2028年度である。
