政府は9月25日の定例閣議で決定した政令のうち2本は、農業近代化資金融通法に関するものだった。改正法の施行期日を令和8年10月1日と定める政令と、同法施行令を改める政令で、9月28日の官報にそれぞれ政令第299号、第300号として掲載された。農業近代化資金は、農業者が畜舎や農機具、果樹の植栽などの設備投資に充てる長期・低利の制度融資である。10月1日から、個人の農業者が借りられる上限は1800万円から2億円になり、返済にあてる期間の上限も原則15年から20年に延びる。
個人は1800万円から2億円、法人・団体は2億円から7億円
限度額の引き上げは、法律と政令の二段構えで決まった。改正の土台は令和8年5月7日に公布された法律第17号で、農業近代化資金融通法第2条第3項第1号にある金額をそれぞれ書き換えている。政令で定める農業者に貸し付ける場合の上限は「二億円」から「七億円」へ、それ以外の農業者に貸し付ける場合の上限は「四千万円」から「二億円」へ改められた。
法律が定めるのは枠の上限で、実際にいくらまで貸せるかは政令が決める。9月28日に公布された政令第300号は、この「それ以外の農業者」に適用される施行令第4条の額を「千八百万円」から「二億円」に改めた。つまり新しい法律の上限いっぱいまで引き上げたことになる。農林水産省が制度の概要をまとめた「逆引き事典」でも、これまでの借入限度額は個人1800万円、法人・団体2億円、農協等15億円と説明されていた。10月1日以降は個人が2億円、法人・団体が7億円となり、個人の枠はおよそ11倍、法人・団体の枠は3.5倍になる。農協や農協連合会などに貸す場合の15億円は変わらない。
農業近代化資金の金利は、農林水産省の同じ資料で令和8年8月20日現在3.20%とされている。認定農業者が借りる場合は当初5年間、最大2%の金利負担軽減を受けられる仕組みがある。
返済期間は一律20年、据置期間は7年のまま
政令第300号は、施行令第2条にある資金の種類ごとの償還期限の表も書き換えた。畜舎・果樹棚・農機具など農産物の生産や流通、加工に必要な施設の資金、果樹その他の永年性植物の植栽・育成の資金、乳牛など家畜の購入・育成の資金、一定規模までの農地・牧野の改良や造成の資金、経営規模の拡大や生産方式の合理化に伴う資金、農林水産大臣が特に必要と認めて指定する資金――これらはいずれも償還期限が「十五年」から「二十年」に改まる。
これまでは同じ資金でも借り手によって期限が分かれていた。施設資金では、認定就農者が認定就農計画に従って使う「特定資金」が18年、農協等に貸し付けるものが20年という例外が置かれ、永年性植物の資金でも特定資金は18年とされていた。今回の改正でこれらの区分はなくなり、20年に一本化される。あわせて、2種類以上の資金を同時に借りるときは最も長い償還期限を適用するという第2条のただし書きも削られた。据置期間は7年のままで変わらない。
農林中央金庫が過半を持つ会社も借りられるように
貸付の対象も広がる。改正法は、農業近代化資金を借りられる「農業者等」の範囲を定めた第2条第1項第4号に「農林中央金庫」を書き加えた。これまでは農業を営む者や農協、農協連合会、地方公共団体が主たる構成員や出資者になっている団体・法人に限られていたが、農林中央金庫が主たる出資者になっている団体・法人も対象に入る。
政令第300号はこれを受け、施行令第1条第8号の株式会社の要件に「又は農林中央金庫が」を加えた。農業の振興に資する事業を主な事業とする株式会社について、農業者や農協だけでなく農林中央金庫が総株主の議決権の過半数を持つ場合も、借り手になれるということだ。あわせて、これまで株式会社と一緒に書かれていた持分会社(合同会社など)は第9号として独立させ、農業者や農協が業務を執行する社員の過半を占めるという従来の条件をそのまま残した。持分会社には農林中央金庫の出資による要件は加えられていない。
法案に反対したのはれいわ新選組の5人
改正法案は令和8年3月17日に内閣が衆議院へ提出した閣法第29号で、所管は農林水産省と財務省である。参議院の議案要旨は、提出の理由を「農業者における規模拡大、生産性向上、付加価値向上等を図る取組の進展に伴い資金需要が拡大している状況に鑑み」と記している。設備が大型化して1件あたりの投資額が膨らみ、従来の枠では足りなくなったという認識だ。
審議は速かった。衆議院農林水産委員会が4月8日に付託を受けて4月14日に可決し、本会議は4月16日に起立多数で通した。参議院は4月20日に付託、農林水産委員会が4月23日に可決し、4月24日の本会議で押しボタン投票にかけられた。投票総数242のうち賛成237、反対5。自民、立憲民主、国民民主、公明、維新、参政、共産、日本保守党、沖縄の風、チームみらい、社民の各会派はいずれも反対者を出さず、反対したのはれいわ新選組の5人(伊勢崎賢治、大島九州男、奥田ふみよ、木村英子、天畠大輔の各氏)だけだった。
この2本を決めた9月25日の閣議では、米の民間備蓄、大手事業者に常時保有を義務化 基準保有量は前年の出荷量の10%が上限 全社の合計は国の備蓄目標のおおむね25%までで伝えた改正食糧法の政令3本も決まっている。備蓄や流通の仕組みと並んで、設備投資を支える資金の枠も同じ時期に組み替えられた形だ。農政の目標の側では、有機食品の国産シェア53%に低下、国は2030年に84%へ引き上げる目標 市場は3595億円に拡大したが輸入が先行 農水省が基本方針を変更のように、国産の生産量を増やす計画が相次いで示されている。農業近代化資金は国や都道府県の利子補給を受けて融資機関が貸す借入金で、金利は令和8年8月20日現在3.20%である。
