環境省は10月26日、田村市や双葉町など福島県12市町村を含む地域を対象とする令和8年度「脱炭素×復興まちづくり」実証事業について、応募7件のうち3件を採択したと発表した。トレーラーハウスを使った「動く脱炭素モデルハウス」、生活物資を運び災害時にも使えるドローン配送、地域での体験や企業・人材とのマッチングを組み合わせる仕組みづくりの3件で、いずれも環境省の委託業務として行う。
応募7件から3件、9月24日の審査委員会で選ぶ
発表によると、公募は8月17日から9月4日まで行い、計7件の応募があった。外部の有識者でつくる公募審査委員会を9月24日に開いて審査し、3件の採択を決めた。
8月17日付の公募要領は、費用を「1件当たり20百万円を上限として、2~3件程度」採択すると定めていた。1件あたりの上限は2000万円で、採択件数は想定の上限にあたる3件になった。採択された3件それぞれの契約額は、発表には書かれていない。
応募できるのは法人格を持ち、環境省の競争参加資格(全省庁統一資格)の「役務の提供等」のうち「調査・研究」でA・B・Cのいずれかの等級を持つ事業者に限られる。複数の事業者が組む場合は、代表業務責任者1者が応募者となり、環境省と直接委託契約を結ぶ。ほかの事業者は「共同事業実施協力者」として加わる形をとる。同じ業務内容で環境省やほかの省庁の補助金を受けていないことも条件とした。
採択された3件の顔ぶれ
採択された3件の代表事業者・共同事業者と事業名は次のとおり。
| 代表事業者 | 共同事業者 | 事業名 |
|---|---|---|
| エックス都市研究所 | 図図倉庫、コムテック地域工学研究所 | 「動く脱炭素モデルハウス(トレーラーハウス)」に係る実証 |
| 日本エヌ・ユー・エス | 小笠原工業所 | 地域住民の生活物資配送を補完し、災害時にも活用可能な地域物流モデルの構築に向けたドローン配送実証 |
| 福島交通 | 福島交通観光、孫の手、おてつたび、オトナリ、コムテック地域工学研究所 | 現地での体験や地域との対話、企業・人材とのマッチングに係る「環境共創エコシステム(仮称)」構築に係る実証 |
1件目は、移動できるトレーラーハウスを脱炭素型の住まいの見本として使う実証になる。2件目は、ふだんは地域住民の生活物資の配送を補い、災害が起きた時にも使える物流の形をドローンで組み立てる。3件目は福島交通が代表となり、現地での体験や地域との対話、企業や人材との結び付けを組み合わせた「環境共創エコシステム(仮称)」をつくる。コムテック地域工学研究所は1件目と3件目の両方に共同事業者として名を連ねる。
どの市町村で何をするのか、どれだけの規模で行うのかは、発表には書かれていない。公募要領によると、採択された提案の内容は委託契約の仕様書に記載され、契約後は情報公開法に基づいて、個人情報などの不開示情報を除き開示される場合がある。
対象は双葉町・大熊町など12市町村を含む地域
環境省が「福島県12市町村」と呼ぶのは、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の12市町村を指す。各市町村の住民の状況は既報で伝えている(原子力災害の被災12市町村、実際に住む人は双葉町4.8%・大熊町12.4% 12市町村あわせて住民票15万5347人に対し11万2897人 政府が第45回復興推進会議)。
公募要領は、事業を「福島県12市町村を含む地域」で行うことを求め、事業の内容が主にこの地域で取り組まれるものであることを要件にした。12市町村での事業に関連する取り組みは「積極的に評価」するとしている。複数の市町村にまたがる場合は、支障が出ないだけの実施体制を組む見込みがあることも条件になる。
要件にはこのほか、具体的な実証計画を示すこと、脱炭素や資源循環、自然共生、復興まちづくりに関する実績と知見を持つこと、提案した市町村と協力して進める体制を組めること、経費の内訳を根拠とともに示すこと、二酸化炭素(CO2)の削減効果をどう評価するのかを具体的に示すこと、が並ぶ。机上の検討だけでなく、現地での調査や簡易な試験を行い、その結果を業務に反映させることも審査で見る点に挙げた。
審査は「事業性」と「地域の復興への貢献」を重く見る
審査基準及び採点表によると、委員は7つの確認項目をそれぞれ採点する。項目は「業務の意義・目標の妥当性」「事業計画」「実施体制」「モデル性」「事業性」「地域の復興への貢献」「CO2削減効果に関する評価方法」で、5つは配点10点、「事業性」と「地域の復興への貢献」の2つは配点15点とされた。合計点は、7項目の平均点と、経費の妥当性も含めた総合評価点を半分ずつ合わせて出す。
「事業性」では、社会実装を実現するための構想に事業として成り立つ見込みがあるか、地域の需要や地域経済を踏まえて収益を生む工夫が示されているかを問う。「地域の復興への貢献」では、地域のステークホルダーとの協働や、地域課題の解決と地域資源の活用への貢献に加え、地元企業などの参画で復興に貢献することが見込まれるかを見る。国の委託で実証して終わるのではなく、その後に地域で事業として続くかどうかを審査の重い項目に据えた形になる。
事業経費は、A(妥当)、B(やや経費過剰)、C(非常に経費過剰)の3段階で評価し、BかCとした委員は理由を書く。審査は非公開で行う。
環境省と福島県の協定のもとで進める
事業の位置付けについて、環境省は発表と公募要領で、東日本大震災から15年が過ぎ、除染などの環境再生に加えて、環境省と福島県が2026年3月に結んだ「福島の復興に向けた未来志向の環境施策推進に関する連携協力協定」のもとで「未来志向の取組」を進めていると説明している。産業の創出や、それをきっかけとした復興まちづくりを通じて、福島の復興と創生を進める狙いだという。
あわせて、2024年5月に閣議決定した「第六次環境基本計画」が、持続可能な地域づくりを通じて環境・経済・社会を一体で良くすることを目指している点を挙げた。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)に向けて、再生可能エネルギーの導入を含む脱炭素で地域に貢献する事業の社会実装が求められているとして、「脱炭素」「資源循環」「自然共生」の3つの視点を踏まえた先進的なモデルとなる事業を生み出すことを目的に掲げている。
実施期間は、公募要領で原則として契約日から2027年3月26日までの単年度とされた。複数年度での応募は2026年度から3年以内とし、採択した年度の年度末に開く委員会で実施状況や目標の達成状況を評価して、次の年度に続けるかどうかを決める。期待される成果が認められなければ、業務計画の見直しを指示することもある。複数年度の実施は各年度に予算が確保されることが前提だとしている。成果は環境省の施策に生かせるものであることを求めている。
福島県内では、除染に関わる国の指定の解除も続いている(環境省、福島・川俣町の汚染状況重点調査地域を解除 46例目、指定は58市町村に)。今回の3件は、除染などの環境再生とは別に、脱炭素を地域の事業と暮らしに結び付けられるかを試す取り組みになる。
