主要7か国(G7)の首脳は10月2日、テレビ会議を開き、国際エネルギー機関(IEA)を通じて石油備蓄1億バレルを4か月かけて協調放出することで合意した。最初の20日間は軽油(ディーゼル)を前倒しでまとめて放出する。2026年のG7議長国フランスのマクロン大統領が、同日付の首脳声明として公表した。

声明は「前例のない原油市場の変動に直面している。価格の急騰が経済の安定と国民の暮らしを脅かしている」とし、「当面のエネルギー供給を安定させ、家計と企業を価格の衝撃から守り、世界のエネルギー体制の長期的な強靱さを高める」ための「断固とした協調措置」で合意したと述べている。1バレルは約159リットルで、1億バレルは約1590万キロリットルにあたる。

製油所の修理日程も調整、輸出規制はしないと再確認

放出のほかに、声明は次の措置を挙げた。G7の製油所の定期修理の日程を調整して稼働が同時に落ちるのを避け、可能なところでは稼働率を一時的に引き上げる。精製能力の大きい国に働きかけ、軽油を中心に石油製品の生産を増やすよう促す。G7の間ではエネルギーと石油製品の輸出規制をしないことを再確認し、すべての産油国に対しても市場の緊張を強めるような禁輸を控えるよう求める。

IEAには、措置がエネルギー安全保障と市場の安定に与える影響と、各国が約束を実行しているかを監視するよう求めた。20日以内にフォローアップの報告を出させ、そこには今後の対応を強化するための具体的な提言と、取り崩した備蓄を積み戻す方策を含めるとしている。追加の軽油放出についても、数日内にIEAの枠組みで集まって協議する。

イランについては「近隣諸国への攻撃を続け、国際貿易、エネルギー安全保障、世界経済を妨害している」と非難し、ホルムズ海峡での航行の権利と原則の「即時かつ完全な回復」を求めた。海峡で商流を保つ米国の取り組みは称賛した。ロシアへの制裁は維持し、燃料・ガスなどの市場への波及をIEAや各国と協力して防ぐとした。

3月に決めた4億バレルのうち8割超はすでに放出済み

会議はマクロン大統領の招請で開かれ、IEAのビロル事務局長が出席した。IEAの発表によると、ほかに出席したのは米国のトランプ大統領、ドイツのメルツ首相、カナダのカーニー首相、イタリアのメローニ首相、欧州委員会のフォンデアライエン委員長、英国のミリバンド外相で、日本からは遠藤和也外務審議官(経済)が出席した。日本以外は首脳または閣僚が出席している。

ビロル氏は、ホルムズ海峡の危機がエネルギー市場に与える影響は依然として深刻で、とくに軽油の市場で強いと指摘した。3月11日に発表したIEA加盟国の協調放出4億バレルのうち、これまでに約3億2500万バレルが放出され、当初の約束の8割を超えたと説明した。この放出が供給の穴を埋め、市場を落ち着かせるうえで大きな役割を果たしたとしている。

一方で、中東からの原油輸出はかなり回復したものの、精製された石油製品の流れは依然として強く制約されており、ウクライナによるロシアの製油所への攻撃が軽油の需給を一段と悪化させているという。IEA、今年の世界石油供給を日量570万バレル減に下方修正 湾岸の回復は2027年へ先送り 米軽油は開戦前の1.94倍で示されたように、原油より石油製品の方が値上がりが激しい状況が続いている。

今回の1億バレルは、新たな上積みというより3月の約束の実行として位置づけられている。声明は「すでに果たされた約束を考慮に入れ、IEAを通じた1億バレルの協調放出によって我々の約束を実行する」と書いている。IEAによれば、協調放出は同機関の設立以来6回で、1991年の湾岸戦争の前、2005年のハリケーン「カトリーナ」と「リタ」による被害、2011年のリビア内戦、2022年のロシアによるウクライナ侵攻での2回に続き、6回目が今年3月の中東情勢を受けたもので、これが過去最大となる。

日本の国家備蓄は半年で44日分減った

日本も3月の協調放出に加わっている。外務大臣談話は3月11日、IEAが合計4億バレルの協調放出を決めたことを「我が国として歓迎します」とし、「国民生活の基盤となるエネルギーの安定的供給及び市場の安定化に向けてIEA加盟国が連帯して対応する決意を示すもの」と位置づけた。経済産業省は4月、石油備蓄法(石油の備蓄の確保等に関する法律)第31条に基づく「第2弾」として、約20日分にあたる約580万キロリットル(約3650万バレル)の国家備蓄原油を放出すると発表した。同条は、日本への石油の供給が不足する事態が生じるおそれがある場合に、経済産業大臣が国家備蓄石油を売り渡したり貸し付けたりできると定めている。

備蓄は目に見えて減っている。資源エネルギー庁が公表している「石油備蓄の状況(推計値の速報)」によると、9月29日時点の備蓄日数は国家備蓄が102日分、民間備蓄が91日分、産油国共同備蓄が4日分で、合計197日分だった。協調放出が決まる直前の3月14日時点は国家備蓄146日分、民間備蓄90日分、産油国共同備蓄6日分の合計242日分で、半年あまりで国家備蓄が44日分、全体で45日分減ったことになる。

日本は原油輸入の大半を中東に頼っており、原油調達多角化の法案、臨時国会に提出へ 高市首相が会見で表明 原油輸入の94.7%が中東から、ホルムズ海峡は「自由で安全な航行が困難」のとおり、調達先を広げる法案が臨時国会に提出される見通しとなっている。

IEAは国際エネルギー計画(IEP)協定に基づき、加盟国に純輸入量の90日分以上の石油備蓄を持つ義務を課している。義務を満たす形は各国に委ねられており、緊急時用の備蓄だけでなく民間が商売のために持つ在庫や、二国間の取り決めで他国に置いた在庫も算入できる。協調放出の際の各国の分担量は、IEA加盟国全体の石油消費に占めるその国の割合に応じて決まる。カナダ、メキシコ、ノルウェーは石油の純輸出国のため、この備蓄義務は負わない。