外務省は10月1日、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水をめぐり、国際原子力機関(IAEA)の枠組みに基づく2件の監視を10月に実施すると発表した。10月6日から16日まではIAEAの専門家が海水や水産物の採取に立ち会い、10月7日には中国、韓国、ロシア、スイスの分析機関の専門家が参加して12回目の試料採取が行われる。

名前の似た2つの枠組みは、始まった年が違う

2件は別の枠組みである。

10月6〜16日の「2026年海洋モニタリング」は、IAEA海洋環境研究所の海洋モニタリング専門家が来日し、発電所近傍での海水と海底土の採取、福島県での水産物の採取、採取した試料の前処理について、その実施状況を確認するものだ。外務省によると、この事業は福島第一原発の廃炉について2013年度にIAEAがまとめた報告書の助言を受けたフォローアップとして、2014年から第三国の分析機関も加えて続いている。今年の第三国分析機関は中国、韓国、スイスの3か国が参加する予定である。

一方、10月7日の「追加的モニタリング」は、2024年9月に日本とIAEAが実施することで一致した新しい枠組みで、2024年10月15日の海水採水が第1回だった。今回が12回目になる。

外務省が公表している実施実績を見ると、何を採るかは回ごとに入れ替わっている。海水だけを採る回、水揚げされた水産物を選ぶ回、ALPS処理水そのものを海水で薄める前に構内の「測定・確認用タンク」から採る回、薄めた後で海洋に放出する前に採る回がある。直近の第11回は2026年9月11日に、希釈前のALPS処理水を採水した。参加機関の顔ぶれも固定ではない。第10回(2026年7月9日)は中国・韓国・ロシア・スイスの4か国の分析機関が加わったが、第11回は中国・韓国・スイスの3か国だった。

見ているのは、薄める前と薄めた後のトリチウム濃度

ALPS処理水とは、建屋内にたまった放射性物質を含む水を多核種除去設備(ALPS)などで浄化し、トリチウム以外の放射性物質の濃度を規制基準値未満まで下げた水を指す。トリチウムはALPSでは取り除けないため、放出時に海水で大幅に薄める。IAEAと第三国の分析機関が「薄める前」と「薄めた後」の両方を採りに来るのは、この2段階がそれぞれ基準を満たしているかを突き合わせるためである。

東京電力は、放出する水のトリチウム濃度を1リットルあたり1500ベクレル未満に抑えるとしている。国の規制基準である告示濃度限度は同6万ベクレル、世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインは同1万ベクレルで、1500ベクレルはその両方を下回る。年間の放出量は、事故前の福島第一原発の放出管理目標値である年間22兆ベクレルを当面の上限としている。

東京電力が公表している2026年度の放出実績では、9月18日までに5回の放出が終わった。1回あたりの放出量は7863〜7927立方メートル、トリチウムの総量は約1.3兆〜約1.9兆ベクレルだった。希釈前の処理水のトリチウム濃度は同16万〜24万ベクレルで、海水で薄めた後は最大223〜353ベクレルまで下がっている。1回の放出に19〜20日間をかける進め方は、福島第一原発の処理水、通算21回目の海洋放出を開始 7月24日まで約7800トン 2026年度は年8回計画で伝えた7月6日からの3回目でも同じで、同回は7月24日までの19日間に7894立方メートルを放出した。6回目に向けた分析は10月1日に行われ、希釈前の濃度は同15万ベクレル、トリチウム以外の放射性物質は告示濃度比の総和が0.30だった。規制基準は1である。

海の側の数字も公表されている。2026年度の海域モニタリングの迅速測定では、発電所から3キロ以内の海水のトリチウム濃度は最大27ベクレル/リットルで、4回目は「検出せず」だった。発電所正面から10キロ四方内は5回とも「検出せず」である。東京電力は放出を止める判断の目安を同700ベクレルとしており、実測値はこれを大きく下回っている。迅速測定は、トリチウムの検出下限値を1リットルあたり10ベクレル程度として測定時間を短縮した方法だ。

IAEAは9月24日、日本の採取手順を「適切な基準に従っている」と報告

外務省は9月28日、IAEAが9月24日に「分析機関間比較」の結果に関する報告書を公表したと発表した。2025年にIAEAと日本が共同で行った採取活動で得た海水、海底土、魚の試料を、IAEA、日本の分析機関、フランス・韓国・スイスの分析機関がそれぞれ分析し、結果をIAEAが突き合わせたものである。報告書でIAEAは、日本の試料採取手順は代表的な試料を取得するために必要な適切な基準に引き続き従っており、2025年の比較と過去に得られた正確な結果は、日本の分析機関の高い能力とこれまでのモニタリング結果の信頼性を示していると報告した。

追加的モニタリングの分析結果も回ごとに報告書になる。2026年4月30日にIAEAが公表した報告書は、2025年6月に採水した希釈前のALPS処理水をベルギー、中国、韓国、ロシア、スイスの分析機関が分析した結果を扱っている。各機関が報告した結果は、ALPS処理水が計画通りに海洋放出された際の人および環境に対する放射線影響は無視できるほどであるとした2023年7月のIAEA包括報告書の結論と整合している、と記された。採水から公表までは約10か月かかっている。

中国は両方の枠組みに入り、10都県の輸入停止は続いている

中国の分析機関は、海洋モニタリングと追加的モニタリングの両方に参加している。農林水産省の説明によると、この追加的モニタリングは、2023年8月のALPS処理水の海洋放出に伴って中国が日本産水産物の輸入を停止した後、2024年9月に日中両政府が「日中間の共有された認識」を発表したことに伴って実施されることになったものだ。両国はその後4回の技術協議を重ね、2025年5月28日に北京で開かれた4回目の協議で、中国向け輸出再開に必要な技術的要件について合意した。

2025年6月29日には、全都道府県産の水産物の輸入が一時停止されていた状態から、37道府県産の輸入停止措置が解除された。ただし放射性物質に関する証明書等の添付が条件で、水産物の輸出には加工・保管・包装施設と養殖場の登録も必要になる。セシウム137と134、ヨウ素131は輸出ロットごとに中国の基準に適合することの証明が要る。

福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野、新潟の10都県については、新潟県産の精米を除くすべての食品・飼料等が今も輸入停止のままだ。中国は10都県以外の野菜・乳製品・茶葉・果実などについても、ストロンチウム90等の分析報告が必要だとして合意に至らず、農林水産省は「実質輸入停止」と記している。

第12回の追加的モニタリングの試料採取は10月7日、2026年海洋モニタリングの現地確認は10月16日までの日程で、外務省は結果をそれぞれ報道発表で公表している。