デジタル庁は11月6日、妊娠から死亡までの出来事ごとに行政サービスの現状と提供予定をまとめた「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画(国民向け行政サービスロードマップ)」の最新版を公表した。今回の改定で、マイナンバーカードを介護保険の被保険者証として使えるようにする時期を2027年度以降、離婚調停の申し立てをオンラインでできるようにする時期を2028年6月めどとして新たに載せた。
計画は何を示し、どこが変わったのか
この計画は、妊娠、出生・こども、引っ越し、就職・転職、結婚・離婚、医療・健康、介護、死亡、給付、税金、年金の11分野に分け、いつどの手続きが便利になるかを利用者の側から一覧にした資料である。デジタル庁は、内容は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」からの抜粋で、一部を除くと説明している。重点計画の最新の統合版は2026年7月21日に閣議決定された。
同時に公表した「昨年度版からの主な改定箇所」によると、変わったのは次の項目である。
| 分野 | 新たに載った内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 全分野共通 | カード機能のスマートフォン搭載の時期を明記 | iPhone 2025年6月以降、Android 2026年10月以降 |
| 全分野共通 | 「マイナアプリ」の提供開始 | 2026年8月 |
| 就職・転職 | 利用者が受けられるサービス9項目を追加 | 項目ごとに記載 |
| 結婚・離婚 | 離婚調停の申し立てをオンライン化 | 2028年6月めど |
| 医療・介護 | カードを介護保険の被保険者証として利用 | 2027年度以降 |
| 給付 | 年金口座を公金受取口座として登録 | 2025年6月(年金請求)、2026年8月(年金受給者) |
| 給付 | 公金受取口座で給付金等を迅速に受け取る | 2027年度以降 |
出典: デジタル庁「(参考)昨年度版からの主な改定箇所」、導入計画の本体(2026年11月6日)
スマートフォン搭載の利用状況はスマホのマイナンバーカード979万枚 デジタル庁、利用者の離脱箇所「定量的に把握していない」で報じた。
介護保険証は健康保険証の登録と連動、紙も残る
介護保険の被保険者証をカードで代えられるようにする仕組みの土台は、厚生労働省が整備している「介護情報基盤」である。自治体、利用者、介護事業所、医療機関などが介護情報を電子的に閲覧できるようにするもので、2023年5月に公布された法律による介護保険法の改正を受けて整備が進んでいる。
厚労省が2026年7月22日の自治体向け説明会で示した資料によると、カードの健康保険証利用を登録している人は、手続きをしなくても介護保険証として使えるようになる。自治体が基盤を使い始める際の設定で、健康保険証の登録が「有」なら介護保険証も「有」になるためである。登録が無い人は、マイナポータルか自治体の窓口で登録する。介護保険証の登録の解除は窓口でできる。介護事業所は専用のアプリでカードを読み取る。
ただし、カードだけになるわけではない。厚労省は説明会の質疑で、紙の被保険者証とカードの両方を使える運用を想定しているとし、証類の発行は「これまでどおり行い、なくなりません」と答えた。紙の被保険者証は65歳で一斉に交付している現在の運用を、要介護認定の申請時に交付する運用へ改めることを検討しているとも説明している。
使い始められる時期は、住んでいる市町村で異なる。厚労省は2028年4月1日までに全市町村で基盤の活用を始めることを目指しているが、同じ資料が示す2026年7月10日時点の見込みでは、2028年4月の時点で利用を始めるのは1545自治体で全体の約88.7%、被保険者の数では約2627万人で約73.2%にとどまる。利用する自治体は2026年11月から増え始めるという。
離婚調停の申し立て、法改正の全面施行に合わせる
離婚調停は、夫婦の話し合いがまとまらないときなどに家庭裁判所で行う手続きである。裁判所の案内によると、現在は申立書とその写し1通を、相手方の住所地の家庭裁判所か当事者が合意で定めた家庭裁判所に出す。費用は収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手で、郵便料は裁判所ごとに異なる。
オンライン化の根拠は、2023年6月14日に公布された、民事関係手続のデジタル化を進める法律である。家事調停事件も対象で、法務省の資料は、申立書などをインターネットで出せるようになると説明している。弁護士などの代理人はインターネットでの提出と受け取りが義務になる。全面施行は公布から5年以内の政令で定める日で、法務省のページでは具体的な施行日を「今後決定」としている。計画の「2028年6月めど」は、この期限の範囲にある。
調停そのもののオンライン化は先に進んでいる。2025年3月1日に施行された改正で、裁判所に出向かなくてもウェブ会議で離婚の調停を成立させられるようになった。計画もこれを実現済みの項目に挙げている。今回の項目が実現すれば、申し立ての入り口もオンラインになる。
失業給付の通知や確定申告、医療費助成も変わる
就職・転職の分野で計画が今後の項目に挙げるのは、雇用保険受給資格通知をマイナポータルで受け取れるようにすることで、時期は2027年1月以降である。この通知は、失業給付の手続きでマイナンバーカードの本人認証を選んだ人に、受給資格者証の代わりに手続きの都度渡している紙である。2025年1月に始まった離職票のオンライン受け取りの対象を広げ、再交付の申請機能も加える。
給付の分野では、2027年度以降の項目として、公金受取口座の情報を正確に保ち、給付金などを速く受け取れるようにすると記した。公金受取口座の登録数は2026年7月末時点で約6400万件である。登録の伸びについては公金受取口座の登録率、64.3%から61.1%へ 登録は1年で34万件しか増えず、マイナンバーカードは571万枚増 口座のないカードは4066万枚で報じた。デジタル庁の資料は、下記の支援金の導入に向けて、給付の前に登録済みの口座が実在するかを一括で確かめる仕組みを整えるとしている。
同じ分野には、政府の法律案が定める就業者負担軽減支援金も載っている。計画は、給付支援サービスや公金受取口座を使い、申請から受け取りまでを簡便にできるとしている。法律案は施行日を2027年4月1日とし、公金受取口座の登録者については市区町村長の職権で支給を認定できるとする。
税金の分野では、確定申告で給与の情報を自動入力できる範囲を2027年2月以降に広げる。現在の対象は原則として500万円を超える給与所得の源泉徴収票で、これを給与支払報告書の情報へ拡大する。
医療の分野では、カードを医療費助成の受給者証として使う仕組みを2026年度以降に全国規模で導入する。予防接種の予診票の電子化も、2026年度以降の全国展開を掲げた。
「時期未定」のまま残る項目
一方、計画には実現の時期を示していない項目も残る。
出生の分野では、医療機関から自治体へ出生証明書を電子的に出し、紙の受け渡しをなくす項目と、出生・子育て関連の一部手続きをオンラインで一括申請する項目が「時期未定」である。引っ越しの分野では、転入の手続きを含む完全オンライン化は「検討も含め必要な取組を行う」との記載にとどまる。転出の手続きは2023年2月以降、原則として窓口に行かずに済むようになったが、転入で同時に実現したのは事前の予約までである。
死亡の分野では、一部の自治体で死亡届と死亡診断書をオンラインで提出できるようにする検討と、電子署名の活用を含むデジタル技術を使った遺言の方式の検討も「時期未定」とされた。確定申告で医療保険や介護保険の保険料などの社会保険料控除を自動入力する項目も同じ扱いである。
