警察庁は、4月に始まった自転車の交通反則通告制度(青切符)を悪用し、警察官をかたって運転者に金銭を求める詐欺事案が確認されているとして、ウェブサイトで注意を呼びかけている。「警察官が取締りの場で反則金を徴収することはありません!」と明記し、その場で支払わずに110番通報するよう求める。本物の反則金は、現場で渡される納付書を持って銀行や郵便局の窓口で納める。導入から7か月がたつ制度で、取締りの場で現金を受け取る手続きは存在しない。

警察庁「取締りの場で反則金は徴収しない」

注意喚起は、警察庁交通局のページに「自転車の交通違反に対する反則金(青切符)名目の詐欺事案の発生について」の題で載っている。警察官をかたり、取締りと称して自転車の運転者にお金を支払うよう求める事案が確認されたという内容で、異変を感じた場合は警察に相談するよう促す。

ページに掲載日の記載は無い。ウェブ保存サービス「インターネットアーカイブ」には4月23日時点の記録が残っており、遅くともこの日には公開されていた。制度の開始から1か月足らずで、警察庁が警告を出していたことになる。11月6日時点でも、同局のトップページに案内が載っている。

都道府県警察も同じ趣旨の呼びかけを続ける。愛知県警は「全国各地で発生しています」とし、チラシに「『現場で支払い』は詐欺(サギ)ですのでその場で110番してください」と記す。長野県警も、全国各地で事案が確認されていると案内する。熊本県警は、その場で現金を警察官に支払うよう求めるのは「詐欺」だと言い切り、警察官が違反者から直接、反則金を受け取ることは「絶対にありません」と説明している。

広島で発生、兵庫県警は「2,000円」の例を示す

実際に発生を公表した県もある。広島県警察本部の生活安全総務課は4月27日付のチラシで、青切符を悪用した詐欺事案が「当県で発生しました」と記した。このチラシは広島市のサイトに掲載されていたもので、現在は同じアドレスでは開けず、本紙は保存版で内容を確かめた。チラシに発生場所や被害額の記載は無い。

奈良県警は4月15日付の資料で「他府県で発生しました」と伝え、岐阜県警も5月1日付の資料で「他県で発生しています」と注意を促した。岐阜県警の資料によると、犯人は「違反だから●●円を支払う必要がある」などと言い、その場で現金をだまし取る。

金額を具体的に示したのが兵庫県警のチラシで、「違反だから2,000円を支払う必要がある」などと言われて現金をだまし取られる被害が他県で発生したと説明する。警察庁のルールブックが違反ごとに示す反則金は3,000円から1万2,000円までで、2,000円という額はルールブックの記載に見当たらない。

全国の発生件数と被害総額について、本紙が確認した警察庁と各県警の資料に記載は無かった。青切符の導入から現在までの告知件数を示す警察庁の資料も、確認できていない。

本物は納付書を渡すだけ、支払いは窓口で

本物の手続きは、ルールブックに順を追って書かれている。違反者は警察官から、違反の内容を記した「青切符」(正式には交通反則告知書)と「納付書」の2種類の書類を受け取る。現場で動くのは紙だけで、お金は動かない。

違反を認めるなら、取締りを受けた翌日から原則7日以内に、納付書を銀行や郵便局の窓口へ持参して反則金を仮納付する。仮納付をすれば刑事手続きに移らず、起訴されることも、いわゆる前科がつくこともない。

仮納付をしなかった場合は、青切符に記された期日に交通反則通告センターへ出頭し、通告書と納付書を受け取る。通告の翌日から原則10日以内に納めれば、同じく刑事手続きには移らない。納めなければ刑事手続きに移る。

主な違反の反則金は次のとおりである。最も高いのは、スマートフォンを手に持って通話や画面の注視をする行為の1万2,000円だ。

違反 反則金
運転しながらのスマホ(手に持っての通話・注視) 1万2,000円
信号無視 6,000円
右側通行 6,000円
横断歩行者等妨害 6,000円
一時不停止 5,000円
無灯火 5,000円
傘差し運転 5,000円
イヤホンをしながらの運転 5,000円
2人乗り 3,000円
並進(横に並んで走行) 3,000円
歩道徐行義務違反 3,000円
自転車の主な違反と反則金

出典: 大阪府警察「自転車の交通違反への『青切符』制度の開始について」、警察庁「自転車ルールブック」

対象は16歳以上、基本は今も「指導警告」

青切符の対象は16歳以上である。ルールブックは、16歳未満の違反を指導警告の例に挙げる。導入の後も、自転車の違反に対しては基本的に指導警告を行い、交通事故の原因となるような悪質・危険な違反を検挙する考え方は変わらない。変わったのは検挙の後の手続きだと、警察庁は説明している。

単に歩道を走っているだけの違反も、通常は指導警告にとどまり、基本的に取締りの対象にはならない。スピードを出して歩行者を驚かせて立ち止まらせた場合や、警告に従わずに続けた場合は別である。

制度の背景には、事故と検挙の増加がある。自転車が関わる事故は年7万件前後で横ばいが続き、2024年の自転車乗用中の死亡・重傷事故7,125件のうち、75%にあたる5,375件で自転車側にも法令違反があった。自転車の交通違反の検挙件数は、2022年の2万4,549件から2023年に4万4,207件、2024年に5万1,564件へ増えた。従来は検挙されると赤切符などによる刑事手続きしかなく、取調べの出頭など負担が大きいうえ、不起訴となって責任の追及が不十分だと指摘されていた。そこで2024年の道路交通法改正(令和6年法律第34号)で自転車にも青切符が導入され、2026年4月1日に施行された。

警察官を名乗る詐欺は被害額842.8億円

警察官を名乗る手口は、電話やSNSを使う特殊詐欺でも被害額が増えている。警察庁によると、2026年9月末時点(暫定値)の特殊詐欺は3万3,329件、被害額は2,610億4,000万円にのぼる。このうち「ニセ警察詐欺」は7,334件、842億8,000万円で、被害額は前年同期より25.6%増えた。銀行と警察の対策は詐欺の振込先口座の情報、警察庁が30金融機関に一元提供へ 9日開始、振り込んだ客に警察が接触で伝えた。

この統計に路上の青切符名目の事案が含まれるかどうかは、資料からは確認できていない。公的機関の名をかたる点は、国民生活センターかたる「最終確認通知書」ハガキに注意 訴訟・差し押さえで電話促すの手口とも重なる。

見分ける基準は単純である。警察庁は電話の手口について、警察がSNSで連絡することや、ビデオ通話で警察手帳を見せて取調べをすることは無いと説明している。自転車の取締りでは、警察官が現場で現金を受け取ることが無い。岐阜県警の資料は「現場で渡すのは『仮納付書』等の書面です」と記す。

取締りと称して現金を求められたら、払わずに110番通報する。反則金は警察官に手渡すものではなく、銀行か郵便局の窓口で納めるものである。