飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%に下げる制度をめぐり、国税庁は6日、免税事業者向けの説明動画(約16分)を特設サイトに掲載した。売上げの税率が1%、仕入れの税率が10%となる事業者は、消費税の還付を受けられる可能性がある。ただし免税事業者のままでは還付を受けられず、課税事業者になる手続きが要る。国税庁の説明はいずれも法案の成立が前提で、法案は6日に衆院を通過し、参院の議案情報には委員会への付託がまだ載っていない。

売上げ1%、仕入れ10%で生じる還付

消費税の納付額は、売上げにかかる税額から仕入れにかかる税額を差し引いて計算する。この差し引きを仕入税額控除という。仕入れの税額の方が大きければ、差額が事業者に戻る。これが還付である。

引き下げの期間は2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間で、適用税率は次の表のとおりになる。対象の範囲は、いま税率8%の飲食料品と同じだ。持ち帰りや出前は1%の対象で、店内飲食と酒類は10%のままとなる。

区分 消費税 地方消費税 合計
飲食料品 0.78% 0.22% 1%
新聞の定期購読 6.24% 1.76% 8%
その他 7.8% 2.2% 10%
2027年4月1日から2029年3月31日までの適用税率

出典: 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」

免税事業者は、基準期間(個人は前々年、事業年度が1年の法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下で、消費税の納税義務を免除された事業者を指す。納税しない代わりに仕入税額控除もできず、還付も受けられない。

数字で見ると次のようになる。仮に税抜きの売上げ900万円がすべて税率1%の飲食料品で、税抜きの仕入れが食材400万円(税率1%)と、10%の対象となる経費200万円だったとする。売上げの税額は9万円、仕入れの税額は4万円と20万円を合わせて24万円で、差額の15万円が戻る計算になる(数字は説明のための仮のもので、計算は本紙による)。

もっとも、還付の計算に使えるのは受領・保存したインボイス(適格請求書)に基づく税額である。売上げの税額の方が多ければ、差額を納める義務が生じる。国税庁も「還付を受けられる可能性」という書き方にとどめている。

課税事業者になる手続きは2通り

原則では、課税事業者を選ぶ届出書は、その課税期間が始まる前日までに出す。個人が2027年分から課税事業者になるなら、2026年12月31日が期限となる。だが、2027年4月1日を含む課税期間がすでに始まった事業者は、減税を受けて還付申告に移ろうとしても、現行制度では移れない。政府の大綱はこの点を挙げて特例を設けるとした。

特例を使うと、飲食料品を販売する免税事業者は、4月1日を含む課税期間の中で届出書を出せば、その課税期間の初めから課税事業者になれる。もう一つは、現行のインボイス登録の経過措置を使う方法である。国税庁のQ&Aは、個人事業者の場合の違いを次のように示している。

項目 届出書の特例を使う インボイス登録の経過措置を使う
提出するもの 課税事業者選択届出書(参考事項に「飲食料品特例」) 適格請求書発行事業者の登録申請書(登録希望日は2027年4月1日)
提出の期限 2027年4月1日を含む課税期間中 2027年3月17日まで
課税事業者になる日 2027年1月1日 2027年4月1日
免税事業者に戻れない期間(原則) 2028年12月31日まで 2029年12月31日まで
免税事業者に戻る手続き 2028年中に不適用届出書を提出 2029年12月17日までに登録取消届出書を提出
インボイスの交付義務 なし あり
個人事業者が2027年中に課税事業者になる2通りの手続き

出典: 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」問3-1

違いは申告の範囲に表れる。届出書の特例では1月1日から課税事業者になるため、1月から3月までの飲食料品の売上げも税率8%で申告する。インボイス登録の方法なら、この3か月は申告の対象外だ。その代わり、取引相手の課税事業者から求められればインボイスを交付する義務を負う。

どちらの方法でも、課税期間を3か月または1か月ごとに短くする特例を併用すれば、減税が終わる2029年3月31日で課税事業者をやめられる(基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが前提)。短くすると還付も早く受けられるが、この特例は2年間やめられない。税抜き1,000万円以上の棚卸資産などの高額特定資産を仕入れ、一般課税で申告した場合は、原則3年間、免税事業者に戻れないとQ&Aは注記している。届出書は、法案が成立すれば2027年4月1日より前でも出せるようになる予定である。

簡易課税の事業者には計算の特例

すでに課税事業者でも、簡易課税制度を使っていると還付は受けられない。簡易課税は、売上げの税額に業種ごとの「みなし仕入率」(小売業は80%、飲食店業を含む第4種は60%など)を掛けて仕入れの税額とする仕組みで、実際の仕入れの税額を使わないためである。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選べる。

還付を受けるには一般課税に移る必要がある。特例では、4月1日を含む課税期間の中で不適用届出書を出せば、その課税期間から移れる。参考事項には同じく「飲食料品特例」と書く。簡易課税を選ぶと2年間は続ける必要があるが、この課税期間に限り、飲食料品を販売する事業者には適用しない。

簡易課税を続ける事業者には計算の特例がある。業種にかかわらず、1%対象の飲食料品の売上げにかかる税額と同額を仕入れの税額に計上する。パンフレットの例では、飲食料品の小売2,000万円(税額20万円)、雑貨の小売300万円(同30万円)、店内飲食100万円(同10万円)の事業者の場合、売上げの税額60万円から、飲食料品の20万円と、残りにみなし仕入率を掛けた30万円を差し引き、納付税額は10万円となる。特例が無ければ飲食料品の分も80%で計算するため14万円になり、4万円の差が出る(比較の計算は本紙による)。いわゆる2割特例・3割特例を使う事業者にも同じ扱いが適用される。

中間申告にも特例が入る。前の課税期間の税額をもとに納めると、中間納付の額が過大になると想定されるためだ。2027年4月1日以後に始まる中間申告の対象期間では、前の課税期間の飲食料品に1%を当てはめて計算した額で、仮決算による申告書を出せる。パンフレットの例では、3月決算の法人の中間納付が70万円から35万円に下がる。2029年4月1日以後は、8%に戻す形で同じ扱いを認める。

値札、定期便、請求書の扱い

店頭の値札にも特例がある。課税事業者が消費者に示す価格は税込みの総額表示が義務で、免税事業者はこの義務の対象から外れている。特例では、夜間の貼り替えに対応できない、商品パッケージに価格が印字されているといった事情がある場合、2027年2月1日から5月31日まで、税率8%でも1%でも税込価格を表示できる。ただし実際の支払額と誤認させない掲示が条件となる。国税庁は例として、棚に「レジでは税率1%で精算いたします」と掲げる方法を示す。税抜き100円の商品なら108円の値札のまま、レジで101円となる。2029年2月1日から5月31日も同じ扱いで、税抜き価格だけの表示は引き続き認められない。

4月1日以後の販売でも、8%のまま残る取引がある。2027年1月1日より前に結んだ定期供給契約で4月1日より前に代金を受け取っている分、たとえば先払いの食材の定期便がこれに当たる。同じく1月1日より前に販売条件を示し、4月1日より前に申し込みを受けた通信販売も対象で、お中元などのカタログ販売が例に挙がる。この扱いは選択制ではない。1%を前提にした契約であることが確認できれば1%となり、Q&Aは契約に「令和9年4月1日以後に販売を行うものは消費税率1%による」旨を記す例を挙げている。

切り替わりの日の細かな扱いも決まっている。午前1時で売上げを締めるスーパーが、4月1日の午前0時から1時までの売上げを3月31日分に計上するなら、その時間帯も8%で差し支えない。3月31日までに仕入れた商品は、4月以後に売っても仕入れの税率は8%のままである。8%で売った商品が4月以後に返品された場合は8%で調整する。

請求書の記載事項は、税率が1%になる点を除いて変わらない。15日締めのように8%と1%が1枚に混在する場合について、Q&Aは3月分と4月分に分けて発行する例を示している。10月9日に公表した申告書様式のドラフト版には「0.78%適用分」の欄が入った。正式な様式は後日掲載する。レジやシステムの開発事業者には、税制面の質問に答える専用の窓口を2027年4月ごろまで置く。

説明会の日程は「準備中」、法案は参院へ

法案は10月9日に内閣が提出し、11月6日に衆院財務金融委員会と本会議で可決された(食料品の消費税1%法案が衆院通過 起立多数で可決、与党過半数割れの参院へ)。採決は起立によるもので、多数で可決された。国税庁の資料はいずれも成立した場合の内容と断っており、成立までは届出書の扱いも確定しない。

特設サイトは9月15日に開設され、概要版の動画(約2分30秒)、10月6日に詳細版(約28分)、11月6日に免税事業者向け版が加わった。政府の大綱が、制度の詳細をできる限り早く公表して周知するよう関係府省庁に求めたことを受けている。各省庁の準備の状況は食料品1%と支援金、13府省庁の連絡会議が初会合 レジ改修は詳細公表から5〜6か月でも伝えた。

4日にはオンライン説明会の案内も載った。Zoomによる配信で参加費は無料、定員は各日程とも先着200人とする。全体を扱う詳細編は45分程度、免税事業者向けは30分程度を予定する。8日午前時点では、案内のページの開催日程と資料はいずれも「準備中」となっている。個別の取引に関する質問は、最寄りの税務署に電話して個別相談を予約するよう求めている。

一般的な質問は、消費税軽減税率・インボイスコールセンターの専用ダイヤル(0120-205-553)で受け付ける。受付時間は午前9時から午後5時までで、土日祝日は休みとなる。

事業者への支援も大綱に盛り込まれた。簡易課税事業者や免税事業者である農林漁業者、食品事業者、外食事業者が一般課税(本則課税)に移る際の相談対応と税理士費用などの支援で、内容は予算編成の過程で具体化するとしている。一般課税への移行が難しい農林漁業者には、売上高を踏まえた金額を給付する仕組みも導入する。