厚生労働省は、管理栄養士国家試験の出題の範囲と水準を示す出題基準(ガイドライン)を4年ぶりに改めるため、有識者の検討会を設け、11月5日午前にオンラインで第1回会合を開く。同省が公表した資料によると、論点案の柱は多職種連携に必要な知識と技能、法律や制度の改正への対応の2つで、2027年2月に報告書をまとめる予定だ。改定後の基準の適用期間は第42回から第45回の試験と示されており、2027年2月28日に行う第41回の次の試験から切り替わる。この記事は会合の前に公表された資料に基づいており、会合での議論の内容は含まない。
論点案は「多職種連携」と「制度改正への対応」
資料3の改定の方向性(案)は、個人や地域の栄養の課題が「多様化・複雑化」する中で、多職種連携による対応が多くの領域で一層求められていると位置づけた。多職種連携とは、医師や看護師、薬剤師など職種の異なる専門職が協力して患者や住民を支えることを指す。管理栄養士には、関連する法律を正しく理解したうえで、そうした栄養管理に対応する力が必要だとしている。
検討事項は2段に分かれる。科目全体にかかる総論では、保健医療分野などの連携で各専門職に共通して必要となる基礎知識と、管理栄養士の活躍の領域や業務内容を踏まえた出題範囲の妥当性を挙げた。科目別では、関連法規や制度の改正への対応に加え、前回の改定後に行った令和5〜8年度の試験を踏まえた対応として、各科目の項目の表記や科目間の項目の調整を挙げている。
論点案は、全200問という出題数や、科目ごとの問題数の配分を変えるかどうかには触れていない。現在の配分は、科目を横断して考え方を問う応用力試験が30問で最も多く、人体の構造と機能及び疾病の成り立ち、臨床栄養学が各26問、食べ物と健康が25問と続く。第40回の合格基準は200点満点で120点以上だった。
検討会の構成員は、大学の教員と国立保健医療科学院の研究者を合わせた22人で、任期は報告書を作成するまでとしている。開催要綱によると、会議は原則公開で、事務は健康・生活衛生局健康課栄養指導室が担う。
おおむね4年ごとに改定、応用力試験は30問まで拡大
出題基準は、国家試験で問う範囲と水準を科目ごとの項目として示した文書である。2000年の栄養士法改正で管理栄養士の業務が明確になったことを受けて2002年に大幅に見直され、2010年の改定で、おおむね4年に1度改定することが望ましいとされた。以後の改定は次の表の通りである。
| 改定の年 | 適用の回 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2002年 | 第20〜25回 | 応用力試験を導入し、出題数を150問から200問へ |
| 2010年 | 第26〜29回 | 出題のねらいと項目を精査し、今後の改定の方向を記載 |
| 2014年 | 第30〜33回 | 応用力試験を10問から20問へ、最適解を選ぶ問題を導入 |
| 2018年 | 第34〜37回 | 10問を応用力試験へ移し、20問から30問へ |
| 2022年 | 第38〜41回 | 多職種連携や制度改正、国際化に対応。全200問と応用力30問は維持 |
| 2026年 | 第42〜45回 | 今回の改定 |
出典: 厚生労働省「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定の歩みと管理栄養士・栄養士を取り巻く状況」
前回の検討会が2023年1月5日にまとめた報告書は、「多職種連携の中で、他の職種にも分かる形で論理的に提案できるか」が一層問われるとした。保健医療の国際化を踏まえて、多職種連携で広く使う基礎的な英語用語の理解を確かめる問題の導入も求めている。今回の方向性(案)は、前回の総論と科目別の2本立てをほぼそのまま引き継いだ形である。
診療報酬や避難所の運営にも管理栄養士の名前
資料2は、前回の改定後の制度の動きを約50ページにわたって並べた。2024年度に健康日本21(第三次)が始まり、日本人の食事摂取基準(2025年版)が告示された。2026年度は食育基本法の改正と第5次食育推進基本計画の作成、診療報酬改定が続き、2027年度には介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定を予定している。
個別の制度でも、連携の中に管理栄養士が書き込まれている。2026年度の診療報酬改定は、入院時の食事の特別食加算(1食76円、1日3食まで)の対象に、飲み込む力が落ちた患者向けの嚥下調整食を加えた。要件の一つは、多職種が定期的に「ミールラウンド」を行って嚥下調整食の必要性を確かめ、普通の食事が適していれば速やかに切り替えることだ。
医療機関が都道府県に報告する医療機能情報提供制度では、2023年の見直しで、人員配置を報告する職種に管理栄養士・栄養士が加わった。2026年3月の被保護者健康管理支援事業の手引き第2版は、生活保護の担当部局が保健師や管理栄養士、歯科衛生士と連携を進める形を示している。防災基本計画は、医師、保健師、看護師、管理栄養士らによる巡回の頻度などを、市町村が避難所で把握するよう努めると定めた。
働く場所の広がりは配置の統計にも表れる。資料2によると、管理栄養士と栄養士の総数は11万553人で、病院・診療所が3万3379人と最も多い。
領域別の管理栄養士・栄養士の配置(人)
数値で見る(単位: 人)
| 項目 | 人 |
|---|---|
| 病院等 | 33,379 |
| 介護施設 | 22,321 |
| 保育所等 | 19,493 |
| 学校 | 13,665 |
| 福祉施設 | 8,036 |
| 行政 | 7,954 |
内訳を見ると、病院・診療所は2万7849人、介護保険施設は1万8849人が管理栄養士で、いずれも8割を超える。保育所等は5301人で3割に満たず、栄養士が1万4192人を占める。
合格率は4回続けて低下、養成校の基礎学力の研究も
改定の議論は、合格率が下がり続ける中で始まる。全体の合格率は、2022年の第36回の65.1%から56.6%、49.3%、48.1%と下がり、2026年の第40回は47.6%だった。受験者1万5927人のうち合格者は7582人である。養成課程の新卒者も、第36回の92.9%から第40回は79.3%となった。詳しい結果と第41回の出願の案内は、第41回管理栄養士国家試験、出願は12月4日消印まで 前回の合格率は47.6%で報じている。
資料2は、直近10年の平均を受験者約1万6000人、合格者約1万人、合格率約57%と示した。合格率が下がった理由は、公表された資料には書かれていない。論点案も、合格率を論点として挙げてはいない。
一方で資料2は、養成の側の課題として、厚生労働科学研究の一つを取り上げている。2024年度の厚生労働科学研究費の事業で、管理栄養士養成施設の学生の基礎学力の向上と養成教育の連動を研究する内容だ。研究費は年800万円程度とされた。公募要領は、職種や領域を超えて必須となる特に自然科学系の科目について、基礎学力を確実に身につけさせる必要があるとして、入学後の学び直しを含む支援の実態を調べるよう求めた。研究代表者の小切間美保・同志社女子大学教授は、今回の検討会の構成員にも入っている。
管理栄養士の養成施設は2026年4月時点で151校、管理栄養士課程を除く栄養士養成施設は128校ある。
報告書は2027年2月、第41回は現行の基準の対象
スケジュール案によると、検討会は月に1回のペースで4回開く。11月の第1回で基本的な方向性と進め方を確認し、12月の第2回で総論と科目別の改定を検討する。2027年1月の第3回で報告書案を示し、2月の第4回で取りまとめる。
| 回 | 時期 | 議題 |
|---|---|---|
| 第1回 | 2026年11月 | 基本的な方向性と今後の進め方 |
| 第2回 | 2026年12月 | 総論と科目別の改定の検討 |
| 第3回 | 2027年1月 | 報告書案 |
| 第4回 | 2027年2月 | 報告書の取りまとめ |
出典: 厚生労働省「令和8年度管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会スケジュール(案)」
出願が11月2日に始まった第41回の試験は2027年2月28日に行われ、資料2が示す現行の基準の適用範囲である第38回から第41回に入る。新しい基準の対象となる第42回の期日はまだ公示されていない。第38回が令和5年度、第41回が令和8年度の試験にあたるため、毎年1回の実施が続けば第42回は令和9年度の試験となる。4年制の養成課程で学び、新卒で第42回を受ける人は、いま3年生の学年にあたる。
前回は、2023年1月の報告書が、令和5年度に行う第38回から速やかに適用することが望ましいとした。今回の日程案どおりに報告書がまとまり、第42回が例年の時期に行われれば、報告書から最初の試験までの間隔は前回と同じ1年ほどになる。どの項目が加わり、どれが外れるのかは、第1回の資料にはまだ示されていない。
