セルフ式ガソリンスタンドの消火設備に、有機フッ素化合物(PFAS)を含まない泡消火薬剤を使えるようにする告示の改正案を、消防庁が11月6日に公表した。現行の告示が認める2種類の薬剤にはどちらもPFASが含まれ、スタンドには含まない薬剤を選ぶ道が無かった。案には大型タンクの検査方法の追加と、リチウムイオン蓄電池の倉庫のスプリンクラーの見直しも入っており、3項目とも使える手段を増やす内容である。意見の受け付けは11月7日に始まり、12月7日に締め切る。
改正案は3項目、それぞれ別の検討会の結論に基づく
公表されたのは、危険物の規制に関する規則(省令)と、関連する告示2本の改正案である。危険物施設は全国に37万7,977施設(2025年3月31日現在)あり、ガソリンスタンド、石油タンク、危険物の倉庫はいずれもこの規制の対象になる。今回の3項目は、施設の種類も根拠となった検討会も異なる。
| 対象 | 現行 | 改正案 |
|---|---|---|
| セルフ式スタンドの泡消火薬剤 | 水成膜泡消火薬剤か機械泡消火薬剤に限定 | 消火性能を確認したものなら種類を問わない |
| 大型屋外タンクの底部溶接部の検査 | 磁粉探傷、浸透探傷、渦電流探傷 | 交流電磁場測定法を追加 |
| 蓄電池の屋内貯蔵所のスプリンクラー | 開放型ヘッドのみ | 一定の基準を満たす閉鎖型ヘッドも可 |
施行は公布の翌日とされ、消防庁は意見公募の結果を踏まえて公布する予定だ。公布の時期は資料に書かれていない。総務省は規制の事前評価で、タンク検査と蓄電池倉庫の2項目を規制の「緩和」に区分し、施行後おおむね5年以内に事後評価を実施するとしている。
セルフ式の消火剤、実験で1種類は5秒遅れた
セルフ式スタンドには、ガソリンが漏れて燃えた場合に備えるパッケージ型固定泡消火設備が置かれている。告示第18条はこの設備の薬剤を水成膜泡消火薬剤と機械泡消火薬剤に限ってきた。消防庁の検討会の報告書によれば、この2種類にはいずれもPFASが含まれている。
PFASは分解されにくく、生物の体内に蓄積しやすい性質があり、報告書は国際的に環境規制が強まっていると記す。国際条約の側の動きは「難燃剤DBDPE及びTBPH、POPs条約の審査で第1段階を通過 規制の決定は2027年4月のCOP13より後」で報じた。一方で、石油などを消火する力を高める目的で泡消火薬剤に使われてきた。検討会は、PFASを含まない薬剤の選択肢が存在しない施設としてセルフ式スタンドを取り上げ、2026年3月25日に公表した報告書で見直しの方向を示した。
検討会は、PFASを含まない合成界面活性剤泡消火薬剤2種類を、異なるメーカーから提供を受けて実験した。告示が定める試験は、自動車ガソリン20リットルに点火し、20秒後に泡を1分間放出して、放出開始から1分以内に消えれば合格とするものである。薬剤Aは43秒で消火し、基準を満たした。薬剤Bは30秒後に火炎をおおむね抑え、45秒後には装置の縁を除いて炎が消えたものの、消火までに65秒かかり、基準に5秒届かなかった。
報告書はこの結果から、PFASを含まない薬剤の中にも基準を満たすものがあると判断した。改正案も「PFAS非含有なら可」とは書かず、薬剤の種類の限定を外したうえで、試験による消火性能の確認を残している。案の文面に、現在使っている薬剤の入れ替えを義務づける規定は無い。報告書は、薬剤の交換や廃棄は関係法令を踏まえて適切に処理する必要があるとしている。
全国のセルフ式の給油取扱所は10,840か所で、給油取扱所全体の54,714か所の約2割にあたる(2025年3月31日現在の完成検査済みの施設)。このうち何か所がパッケージ型の設備を備えているかは、今回読んだ資料では確認できていない。また案が変えるのは告示第18条だけで、他の危険物施設の泡消火設備を定めた第17条は対象に入っていない。報告書は、PFAS規制の動向や技術開発を見ながら検討を続けることが適当だとしている。
タンク検査、塗膜をはがさず調べる方法を追加
2項目めの対象は、容量1,000キロリットル以上の屋外タンクを持つ特定屋外タンク貯蔵所である。全国に6,698か所あり、このうち最大数量が1万キロリットル以上のものなどが法定の保安検査を受ける。2024年度に実施された検査は193件で、10万キロリットル以上の容量帯が47件を占めた。
検査ではタンク底部の溶接部に傷が無いかを調べる。従来の磁粉探傷試験は、磁化した鋼材にまいた磁粉の模様で傷を見つける方法で、浸透探傷試験は表面に塗った液がしみ出す模様を見る方法である。どちらもタンク内部の腐食防止のコーティングをはがさなければならず、検査のたびに再塗装が必要になると評価書は説明する。
この負担を減らす手段として、コーティングの上から調べられる渦電流探傷試験が2025年12月23日公布の省令で加わった。今回の案は同じ位置づけで交流電磁場測定法(ACFM)を追加する。電磁場の働きで表面の傷が生む磁場の変化を2つの検出コイルでとらえ、デジタルデータから傷を視覚的に確認する方法である。検討会は2026年3月25日付の報告書で、渦電流探傷試験と同様に導入できると結論づけた。
評価書によると、10万キロリットル級のタンクなら、磁粉探傷試験などに比べて1基あたり工期を約1〜2か月、費用を約1,500万〜3,000万円減らせる見込みである。
使える場面には条件がある。過去に磁粉探傷か浸透探傷で基準への適合が確認された溶接部に限られ、合格の基準は渦電流探傷と共通で、長さ4ミリ、深さ1.5ミリの基準の傷が出す信号を超えないこととされた。報告書はコーティングについても、磁性と導電性が無く、膨れや割れ、はがれが無いものに適用範囲を絞っている。どの試験を使うかは事業者が選ぶ。
検査の緩和と安全の関係では、2025年中の危険物施設の流出事故448件のうち、原因で最も多かったのは腐食疲労等劣化の148件(33.0%)だった。この数字はタンクに限らない全施設の集計である。評価書は、現行と同等の検査が行えることを確認しており、新たな負担は見込まれないと説明する。
蓄電池の倉庫、閉鎖型スプリンクラーも認める案
リチウムイオン蓄電池の電解液は消防法上の危険物にあたり、一定量以上を保管するには、基準を満たす貯蔵所が要る。屋内貯蔵所は全国に4万9,444か所ある。第4類の危険物を扱う屋内貯蔵所では通常スプリンクラーが認められていないが、2023年12月6日公布の政省令で、蓄電池だけを保管する倉庫に特例が設けられた。
その特例は、2022年12月に消防庁の検討会が行った実験に基づく。火を付けた蓄電池は約6分で破裂して周囲へ飛び散り始め、ラック式倉庫の国内基準のスプリンクラーでは、作動後もしばらく火勢が衰えなかった。米国の保険会社とドイツの保険会社連合の基準に沿った天井のスプリンクラーでは、作動後に火勢を抑え込むことができた。報告書はこれを受け、早く確実に放水できるよう開放型のヘッドを感知器と連動させることを求め、2023年の特例も開放型に限った。
開放型は、感知器の作動などに連動して区域全体へ一斉に放水する。これに対し閉鎖型は、火熱で一定の温度に達すると感熱体が作動し、そのヘッドが放水する。評価書によると、米国の消火実験で閉鎖型でも一定の基準を満たせば消火性能があると分かり、電気自動車の普及で蓄電池の需要が高まる中、事業者から使用を認めるよう要望があった。
案が閉鎖型に課す基準は次のとおりである。ヘッドは標示温度が75度未満で感度が一種のものとし、防護対象物の各部分から1つのヘッドまでの水平距離を2.1メートル以下にする。水源はヘッド1個あたり33.6立方メートルとし、個数の上限を12個とするので、最大で403.2立方メートルになる(蓄電池の積み方によっては床面積で算定する別の基準が適用される)。同時に使った場合に、各ヘッドの先端で放水圧力0.24メガパスカル以上、放水量毎分560リットル以上を出す性能も求める。
閉鎖型の方がヘッドの間隔を広く取れ、同じ面積でも個数が少なくなるため、設置費用の減少が想定されるという。ただし評価書は、設置状況がさまざまで効果を定量化するのは困難だとし、金額を示していない。総務省は、基準を満たす場合に限る特例なので安全性は緩和前と変わらないとの見解で、貯蔵所の新設が進めば蓄電池の普及拡大や国際競争力の向上に寄与すると説明する。
意見の提出は12月7日まで、郵送も必着
意見はe-Govの意見提出フォーム、電子メール、郵送で受け付ける。消防庁はウイルスメール対策のためe-Govの利用を促しており、郵送も締切日の必着である。氏名と住所、連絡先の記入が必要で、意見が1,000字を超える場合は要旨を添える。意見を出す際は、対象の案の名称とページも書くよう求めている。個別の回答はしない。
案の全文は準備が整い次第、e-Govと総務省の報道資料欄に掲載され、消防庁予防課危険物保安室の窓口でも配布される。提出された意見はe-Govと総務省のホームページに掲載される。法人や団体は名称と代表者の氏名が公表される場合があり、匿名を望むときはその旨を書く必要がある。個人の氏名は公表の対象に含まれない。期間を過ぎて届いた意見や、案の対象以外の意見は、提出意見として扱わないことがある。
同じ規則のタンク検査を改めた前回の渦電流探傷試験の公募では、提出された意見は3件だった。2023年の蓄電池の特例などをまとめた公募は6件である。今回の評価書によると、タンク検査の案については検討会で関係業界団体から特段の異論は無かった。
