キヤノンは10月27日、2026年1〜9月期の連結決算(米国会計基準)を発表した。売上高は前年同期比4.0%増の3兆4333億5700万円、営業利益は8.4%増の3276億8400万円、当社株主に帰属する純利益は12.2%増の2464億900万円だった。ネットワークカメラやカメラを扱うイメージング事業が売上高を16.7%伸ばし、全体の増収増益をけん引した。一方、医療機器を手がけるメディカル事業は、プリント基板と電子部品の不足で生産が正常化せず、通期の業績予想を下方修正した。同社は10月30日、監査法人による期中レビューが完了し、27日に発表した四半期の財務諸表に変更は無いと公表している。

キヤノンは12月決算で、事業をプリンティング(オフィス複合機・レーザープリンター・インクジェットプリンター・商業印刷向けのデジタルプリンターなど)、メディカル(CT・MRI・超音波診断装置など)、イメージング(レンズ交換式カメラ・ネットワークカメラなど)、インダストリアル(半導体露光装置・FPD露光装置など)の4つのビジネスユニットに分けて開示している。売上高の約8割は海外で、1〜9月期は国内が6991億円と前年同期並みだったのに対し、米州は6.1%増の1兆1232億円、欧州は4.9%増の9084億円、アジア・オセアニアは3.4%増の7024億円だった。

7〜9月の売上高は第3四半期として過去最高

7〜9月の3か月間で見ると、売上高は前年同期比4.9%増の1兆1588億円となり、第3四半期として過去最高を更新した。営業利益は10.3%増の971億円、純利益は18.2%増の752億円だった。売上高に対する売上総利益の比率は、前年同期の46.4%から46.9%に上がった。

説明会資料によると、市況は米国が堅調だった一方、中東情勢の影響を受ける欧州と、個人消費が低迷する中国で弱含んだ。会社は、第2四半期に回復の兆しが見えていたプリンティング機器の業績が改善したことと、ネットワークカメラの伸びを増収の理由に挙げている。

営業利益が前年同期の880億円から971億円へ91億円増えた内訳も示した。プラスの要因は、販売数量の増加と製品構成の変化が209億円、ドル・ユーロともに10円以上の円安が157億円、販売価格が78億円、コストダウンが55億円。マイナスの要因は、メモリー価格の上昇が198億円、中東情勢の影響による販売減と原材料価格の上昇が185億円、経費の増加が23億円、関税が2億円だった。メモリーは、生成AI向けのデータセンター需要で価格が上がっている部材で、メモリー大手の業績では販売単価の上昇として表れている(関連記事:キオクシアHD、初の配当は1株90円 中間期純利益2兆1979億円)。1〜9月期の平均為替レートは1ドル=158.57円(前年同期は148.06円)、1ユーロ=184.07円(同165.56円)だった。

イメージングが利益の柱に ネットワークカメラが伸びる

1〜9月期のビジネスユニット別の売上高と営業利益は次のとおり。

ビジネスユニット 売上高 前年同期比 営業利益 前年同期比
プリンティング 1兆8674億円 2.3%増 2082億円 3.0%増
メディカル 4074億円 1.2%減 108億円 40.6%減
イメージング 8476億円 16.7%増 1444億円 33.2%増
インダストリアル 2189億円 10.7%減 301億円 24.8%減
キヤノンのビジネスユニット別業績(2026年1〜9月期)出典: キヤノン「2026年12月期 第3四半期決算短信」

イメージングは、売上高が前年同期の7264億円から8476億円に、営業利益が1084億円から1444億円に増えた。売上高に占める比率は22.0%から24.7%に上がった。7〜9月の説明によると、レンズ交換式カメラは中東紛争と中国の市況悪化で販売台数を落としたが、フルサイズの新製品の販売が増え、需要が多いコンパクトカメラは上期に続いて5割以上の増収だった。ネットワークカメラは、サイバーセキュリティーやAIによる映像分析に強い製品をそろえ、データセンターや小売店向けなどで売上を大きく伸ばした。

キヤノンの事業別営業利益(2026年1〜9月期)(億円)

プリンティング2,082イメージング1,444インダストリアル301メディカル108
出典: キヤノン「2026年12月期 第3四半期決算短信」
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プリンティング2,082
イメージング1,444
インダストリアル301
メディカル108

売上高の半分余りを占めるプリンティングは2.3%の増収、3.0%の増益だった。第2四半期に見られた商談の活発化が第3四半期に実際の販売につながり、新製品も売上に加わり始めたという。インダストリアルは、半導体露光装置がAI関連の需要拡大でメモリー向けを中心に前年を上回ったものの、液晶・有機ELパネルの製造に使うFPD露光装置は、パネルメーカーが投資判断を先送りした影響で販売台数が減り、ユニット全体では減収減益となった。

医療機器は部材不足で生産が戻らず 年間の売上影響は約900億円

業績予想の下方修正の主因は、メディカル事業の生産の遅れだ。1〜9月期の営業利益は108億円で、前年同期の182億円から40.6%減った。7〜9月に限ると24億円で、前年同期の64億円から61.5%減っている。

会社は前回の決算発表の時点で、生産システムの更新に伴う運用上の混乱と、調達先の火災による部材不足が重なって生産が滞ったと説明し、9月には生産を正常化して、10〜12月に増産すると計画していた。しかし8月以降、AI関連の需要拡大を背景に、プリント基板と基板に載せる電子部品の調達が難しくなった。予定した数量を確保できないため、10〜12月の売上をさらに引き下げた。

その結果、生産の遅れによる年間の売上影響額は、前回見通しの約450億円から約900億円に倍増した。生産の正常化の時期も「2026年9月」から「2027年以降」に後ろ倒しし、説明会では来年第2四半期以降に持ち越すと述べた。運用上の混乱はおおむね解消したという。会社は代替調達を含めて基板の確保を進めるとともに、医療機関の装置の導入計画に合わせた納期の調整や代替機の貸し出しで対応するとしている。

メディカルの通期予想は、売上高が前回の5682億円から5227億円に、営業利益が228億円から36億円に下がった。前年の実績(売上高5806億円、営業利益328億円)と比べると、売上高は10.0%減、営業利益は89.0%減の見込みとなる。

通期予想は売上高340億円・純利益70億円の下方修正

2026年12月期の通期の連結業績予想は、売上高を前回の4兆8000億円から4兆7660億円に、営業利益を4650億円から4560億円に、純利益を3400億円から3330億円に引き下げた。前期比では売上高が3.1%増、営業利益が0.1%増、純利益が0.3%増で、増収増益の見通しは維持した。会社はこの数値を「最低限の目標」とし、残りの期間で上積みを図るとしている。1株当たりの年間配当は、中間配当80円、期末配当80円の計160円の予想を変えていない。

ビジネスユニット別では、プリンティングの売上高予想を前回の2兆5442億円から2兆5794億円に引き上げた。10〜12月は年末の商戦期に当たり、オフィス複合機の新シリーズ「imageFORCE」や商業印刷向けの新製品の販売を広げる。イメージングは、レンズ交換式カメラが中東紛争と中国の市況悪化、コンパクトカメラが部材不足の影響を受けるとして、売上高予想を1兆2015億円から1兆1907億円に下げた。それでも前期比12.9%増で、10月発売の小型のフルサイズ入門機などでカメラの売上を年間8%、ネットワークカメラを20%伸ばす計画だ。インダストリアルは顧客の付帯工事の遅れで一部の納入時期が後ろにずれるとして、売上高予想を3537億円から3386億円に下げた。

営業利益の前回見通しとの差90億円の内訳では、メディカルの売上計画を下げたことによる数量・製品構成の悪化が300億円のマイナスとなった。一方、前提としていた15%の米国の追加関税が12.5%になったことや、関税の還付を原資に計画していた戦略投資を見直したことで、コスト面で179億円のプラスを見込む。10〜12月の想定為替レートは前回と同じ1ドル=155円、1ユーロ=180円とした。

部材確保と構造改革 在庫は1兆円台に

部材をめぐっては、メモリーは今年の必要量を確保済みで、10〜12月の調達単価もおおむね想定した水準で決まったという。原油関連の原材料は現時点でさらなる上昇は見られないとしている。問題になっているのはプリント基板と電子部品で、会社はこの不足がメディカルの生産に加えて販売機会の喪失にもつながっていると説明した。

収益性を上げるための構造改革も続けている。欧州での販売組織の再編、生産拠点の集約、メディカルのサービス業務の効率化の3つを合わせ、2026年は374億円の費用に対して327億円の効果を見込む。生産拠点の集約は第3四半期までに費用の大半を計上し、効果が費用を上回り始めたという。販売の再編は来年度に効果が費用を大きく上回る予定としている。

9月末の棚卸資産は1兆250億円で、2025年12月末の8404億円から1846億円増えた。商戦期に向けて積み増した分で、10〜12月に販売に振り向ける一方、年末も来期に向けて通常より高い在庫水準になる見通しだという。資金面では、1年以内に返済する借入金などが2025年12月末の5111億円から9140億円に増え、株主資本比率は56.9%から52.3%に下がった。