会計検査院は10月8日、刑務所や拘置所などの矯正施設に整備されている「総合警備システム」の更新工事などで、契約の予定価格に諸経費が二重に計上されていたとして、法務省が改善の処置を執ったと公表した。重複を除いて計算し直すと、5施設8件で諸経費の積算額を約1億3980万円低減できたと認められた。

「技術者料金」に諸経費が含まれていた

検査院が調べたのは、2022年度から2025年度(令和4〜7年度)に各矯正施設が結んだ契約のうち、2023年度から2025年度までの間に履行が完了したもの。契約額250万円未満を除き、94の矯正施設の更新整備契約と保守点検業務契約の計185件、契約額計53億870万円余りが対象となった。94施設の内訳は、刑務所45、少年刑務所6、拘置所6、少年院15、少年鑑別所22。検査院は法務本省と15施設で契約書や予定価格調書などを直接確かめ、残りの施設からは調書の提出を受けて確認した。

予定価格は、国土交通省大臣官房官庁営繕部が定めた「公共建築工事積算基準」(2003年制定)などに沿って積み上げる。材料費や労務費、機械器具費といった直接工事費を出し、そこに共通仮設費・現場管理費・一般管理費等に相当する額を「諸経費」として加える仕組みだ。共通仮設費は直接工事費に、現場管理費は直接工事費と共通仮設費を合わせた純工事費に、一般管理費等は純工事費と現場管理費を合わせた工事原価に、それぞれ決まった率を掛けて算出する。

185件のうち、67施設の122件がこの積み上げ方式だった。さらにそのうち5施設の8件(契約額計10億2377万円余り)では、ソフトウェア開発業務などの費用を、市販の積算参考資料に載っている「技術者料金」を使って算出していた。問題は、この技術者料金に技術者の人件費だけでなく諸経費も含まれていた点だ。各施設はそれに気づかず、技術者料金で出した直接工事費に所定の率を掛けた諸経費をさらに上乗せしており、諸経費が二重に乗った状態で予定価格を計10億8469万円余り(うち諸経費の積算額計2億2008万円余り)と算定していた。

重複分を計上しないこととして修正計算すると、諸経費の積算額は計8019万円余りとなる。差し引き約1億3980万円が過大だった計算になる。対象は札幌刑務所、府中刑務所、東京拘置所、立川拘置所、大阪拘置所の5施設だった。

東京拘置所の事例 諸経費3969万円が747万円に

検査院は具体例として東京拘置所を挙げた。同拘置所は2025年5月、「東京拘置所外構センサ等更新整備一式」の契約を契約額2億1120万円で結んだ。拘置所に設置されている総合警備監視システムのうち、外構センサ関連の機器を更新するとともに、外構センサ監視制御システムを新たに設計・開発して監視システムと連携させ、機能の集約と効率化を図る内容だった。

予定価格の算定では、ソフトウェア開発業務の費用を技術者料金で出し、それに所定の率を掛けて諸経費を3969万円余りと算出。予定価格は2億1339万円余りとしていた。この諸経費を、技術者料金に含まれている分を除いて計算し直すと747万円余りとなり、積算額を3222万円余り低減できたという。1件でこれだけの差が出る積算の型だったことになる。

本省の指導不足が原因 8月に事務連絡

検査院は発生原因について、5施設が積算参考資料に載った技術者料金の内容の確認を十分にしていなかったことに加え、法務本省が、すでに諸経費を含む技術者料金を使ってソフトウェア開発業務などの費用を算出する場合の積算方法を具体的に示す指導をしていなかったことによると指摘した。現場の確認漏れだけでなく、本省側の手引きの不足まで踏み込んだ形だ。

これを受けて法務本省は2026年8月、各矯正施設などに事務連絡を出し、すでに諸経費が含まれている技術者料金を用いる場合の具体的な積算方法を周知する処置を講じた。検査院が「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として公表したのは、この対応が取られたためだ。

表に出にくい調達 同種の指摘が相次ぐ

総合警備システムは、監視システムや防犯線システムなどで構成され、これに連携する非常電鈴設備などを合わせたものを指す。法務省は刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、少年院法、少年鑑別所法に基づいて刑務所・少年刑務所・拘置所・少年院・少年鑑別所を運営しており、保安警備力を強化するためにこれらの設備を入れている。少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された少年に矯正教育や社会復帰支援を行う法務省所管の施設だ。法務省は2021年12月に「総合警備システム整備方針」を定め、経年劣化による機能低下を防ぐための更新整備や、安全で効率的な運用のための保守点検を進めている。収容施設の安全に直結する設備であるぶん、仕様や価格が外から検証されにくい分野でもある。

検査院は、同じ法務省分野でも在留カードを作るプリンタ、700台のうち103台が使われず 調達額5651万円余り 同じ入管局から3年で計100台の増設要望 会計検査院が指摘のように、調達の必要性や数量をめぐる指摘を続けている。工事の積算そのものを問うたものとしては、災害時の緊急輸送道路にある橋、耐震補強した407橋・橋脚1128基で「耐震性能2」が確保されず 会計検査院が指摘 巻き立て部分の工事費111億3415万円分も9月に公表されている。今回の検査結果は、検査院が今後作成する「令和7年度決算検査報告」に「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として掲記される。