総務省は11月6日、NTTドコモに対し、利用者情報の管理を徹底し、再発防止策の実施状況を報告するよう文書で行政指導を行った。ドコモMAXなどの料金プランのオンライン申込手続きで、アマゾンジャパンへの情報提供に関する記載が抜け落ち、34万4213人分の電話番号と利用者識別子を有効な同意のないまま同社へ送っていた。総務省は「厳重に注意する」とし、12月末までの報告を求めている。

申込画面の見直しで、同意の記載が抜け落ちた

総務省の指導文書によると、問題が起きたのはドコモMAXなどの料金プランのオンライン申込手続きを見直したときだった。重要事項説明などの注意事項には、アマゾンジャパンへ利用者情報を提供することを示す記載が入っているはずだったが、見直しの過程で欠落した。作業を担当した部門はそのことに気づかず、手続きの流れを確定させた。

アマゾンジャパンは、ドコモMAXなどの契約者向けに特典サービスを提供している。同意を取るための記載が画面に無かったため、該当する契約者から有効な同意を取らないまま、34万4213人分の電話番号と利用者識別子が送られた。

指導文書は特典の名称を明記していない。ドコモは、ドコモMAXなどの契約者向けに、月額600円の「Amazonプライム」の会費相当額を最大6か月間割り引く特典を案内している。

提供は約4か月、未使用のまま削除

ドコモの報告によれば、送られた情報は、アマゾンジャパンが特典サービスをまだ使っていない人へ案内を出すために使う予定だった。報告の時点では使われておらず、問題の発覚を受けて削除され、二次被害は無いという。

ただし総務省は、電話番号と利用者識別子は、アマゾン側が自社のアカウント情報と照合し、利用者個人を特定するために用いる情報だと指摘する。そのうえで、有効な同意なしに約4か月間にわたって提供を続けた点について、利用者の利益を損なうおそれが生じ得る「重大な過失があった」と認めた。

総務省はこの提供を、電気通信事業法上の特定利用者情報の「漏えい」として扱っている。外部からの攻撃で情報が抜き取られたのではなく、ドコモ自身が同意の無いまま社外へ送った事案である。同社は11月5日以降、オンラインショップなどへの不正アクセスで最大約30万件の顧客情報が流出したと公表しているが、これとは別の案件だ(ドコモに不正アクセス、顧客情報が最大約30万件流出 氏名や住所、手続き再開は未定)。

大手事業者に上乗せされる「特定利用者情報」の規律

特定利用者情報は、2022年の法改正で設けられた規律の対象だ。電気通信事業法第27条の5は、通信の秘密に当たる情報と、利用者を識別できる情報のうち総務省令で定めるものを特定利用者情報と定めている。総務省の解説は、後者の例として、契約者データベースに含まれる登録情報や、登録者を識別できるIDを挙げる。

対象は全ての事業者ではない。総務省の資料によると、有料サービスでは利用者数500万以上、無料サービスでは1000万以上の大規模な事業者を総務相が指定する。指定を受けると、情報取扱規程の策定と届け出、取扱方針の公表、毎年度の自己評価、統括責任者の選任が必要になる。利用者1000人を超える漏えいなどが起きた場合には、総務省への報告も求められる。

今回の指導文書は、ドコモが指定を受けた事業者であることを挙げ、「今般の漏えいは、法に抵触し、遺憾である」と記した。同法第27条の7は、必要があると認めるときに総務相が情報取扱規程の変更を命じられると定めている。今回の措置はこの命令ではなく、文書による行政指導である。指導文書は、必要に応じて規程などを見直すことも求めた。

総務省が挙げた原因と、ドコモの再発防止策

指導文書が示した発生要因は、記載の欠落を確認する手順が十分に確保されていなかったことだ。作業担当部門の確認不足、関係部門の連携不足という人為的なミスと管理体制の不備に起因すると認めた。作業担当部門とサービス担当部門の規範意識が十分でなかったおそれも推察されるとしている。

ドコモは、今回の申込手続きの適正化と、他の申込手続きの総点検を実施する。そのうえで、今後手続きを見直す際には、規約ごとに更新責任者を選ぶなど更新の手順を改め、関係する従業員への周知と教育を行う予定だという。総務省は、オンラインに限らず同意未取得による提供を防ぐ策の徹底を求めている。

今回の総務省の資料に、対象となった契約の時期や提供の開始日、本人への連絡の有無は書かれていない。ドコモの報道発表とお知らせの一覧でも、6日夜の時点で本件の発表は確認できていない。自分が対象かどうかを判断する材料は、総務省の資料からは得られない。

7月にはLINEヤフーへも指導、報告の期限は12月末

総務省は7月31日にも、特定利用者情報の漏えいをめぐってLINEヤフーを文書で指導した。この事案は、ゲームアプリの開発と運用を担う提携先が、承認も利用者への通知も無く識別子などを外部へ送っていたものだった。

項目 NTTドコモ LINEヤフー
指導の日 2026年11月6日 2026年7月31日
規模 34万4213人分 約803万件(うち国内約752万件)
期間 約4か月 約4年
情報を送った主体 ドコモ 提携先のTreenod Inc.
送り先 アマゾンジャパン 情報分析サービス会社
総務省が指導した特定利用者情報の漏えい2件の比較

出典: 総務省報道資料(2026年7月31日、11月6日)

2件とも、外部からの侵入ではなく、事業者の側の手順と管理の問題だった。規模と期間には大きな差があるが、今回はドコモ自身の申込手続きの中で起き、提供を同社が行った点が異なる。

ドコモは再発防止策の実施状況を12月末までに文書で総務省へ報告する。