藤井総務相は11月6日の閣議後記者会見で、この冬の電気・ガス料金支援の対象にならない特別高圧電力やLPガスなどについて、重点支援地方交付金で支援する方向で関係省庁と調整していると明らかにした。交付金は地域の実情に応じて灯油支援にも使える。この夏に補正予算で追加した額などを参考に、寒冷地の財政需要にも留意して検討する。規模や配分は示さず、調整後に改めて発表するとした。
会見で示した検討の中身
藤井氏は会見の冒頭、「重点支援地方交付金の検討開始」を自ら報告した。藤井氏は総務相のほか、内閣府の地方創生担当相を兼ねている。交付金の制度資料は、内閣府の地方創生推進事務局のサイトで公開されている。
説明によると、支援の対象は、高市首相が先に表明したこの冬の電気・ガス料金支援から外れる利用者である。特別高圧電力やLPガスなどについて、地域の実情に応じた支援を「来年4月の飲食料品の消費税率引下げまでの間、本年度末まで切れ目なく実施できるよう」調整しているという。
灯油については、交付金が「地域の実情に応じて灯油支援などにも活用可能なもの」だと述べた。そのうえで、「この夏の電気・ガス料金支援に併せて措置した令和8年度補正予算における本交付金の追加額なども参考にしながら」、冬季の寒冷地における財政需要にも留意し、電気・ガス料金支援と併せて検討を進めるとしている。
この日に決まったのは検討の開始までで、追加の額、都道府県と市町村への配分、自治体が使える時期はいずれも示されていない。総務省が公表した会見の概要には、記者との質疑に交付金の質問は載っていない。藤井氏は「詳細につきましては、調整後改めて発表」すると述べた。
国の料金支援が届かない利用者
交付金の話が出てきたのは、国の料金支援の仕組みに理由がある。電気・ガス料金の支援は、制度を利用する電気・都市ガスの事業者が毎月の料金から使用量に応じて値引きする方式で、利用者の申請は要らない。資源エネルギー庁の特設サイトは、プロパンガス(LPガス)について「今回の対象となりません」と案内している。特別高圧電力も、高市首相が5月25日の会見で料金支援の対象とならないと説明していた。
高市首相は10月29日の会見で、この冬の支援を前回より1か月早い12月に始めると発表した(ガソリン補助、12月から基準価格を毎月5円上げ 首相表明 電気・ガス支援は12月に前倒し)。電気料金は1キロワット時あたり12月に1円、1月と2月に4.5円を支援し、ガス料金も支援する。標準的な家庭で3か月間に電気・ガスあわせて「7,000円程度」の負担が下がるという。3月については、気候やエネルギー価格の動向を見極めて検討するとしており、まだ決まっていない。
灯油は別の補助の対象である。ガソリンなどの燃料油補助で、11月5日以降の支給単価は灯油も1リットルあたり51.9円となっている。ただし首相は同じ会見で、12月以降は基準価格を毎月5円ずつ引き上げることを基本に対応すると表明した。寒さが特に厳しい地域に向けては、価格が高い輸入灯油への財政措置など、流通を円滑にする対策を強めるとも述べている。
総務省統計局の消費者物価指数によると、9月の全国の前年同月比は灯油が15.3%、プロパンガスが6.3%の上昇だった。電気代は2.4%の下落、都市ガス代は0.2%の上昇にとどまる。
重点支援地方交付金とは
重点支援地方交付金の正式名称は「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」である。国が都道府県と市町村に配り、自治体が地域の事情に合わせて使い道を決める。配分額は人口、物価上昇率、財政力などを基礎に算定する。
内閣府の資料は、効果的と考えられる使い道を「推奨事業メニュー」として10項目示している。灯油とLPガスに関わるのは主に次の3つである。低所得者世帯・高齢者世帯には、電力・ガス(LPガスを含む)や灯油などの負担を軽くする支援を挙げる。生活者全般には、LPガス・灯油を使う世帯への給付を挙げる。事業者には、特別高圧での受電(ビル・工業団地・卸売市場のテナントを含む)やLPガスの使用について、中小企業や商店街、自治会の負担を和らげる支援を挙げている。医療機関や介護施設などの特別高圧も対象に含まれる。メニューより効果があると自治体が考える事業も、実施計画に書いて申請できる。
交付金は令和7年度補正予算で2兆円が措置された。中東情勢を受けて高市首相が5月25日に追加を表明し、令和8年度補正予算(第1号)に1000億円を計上した。補正予算は6月3日に国会へ提出され、5日に成立した。歳出総額3兆1135億円のうち、この交付金の分が1000億円である。藤井氏が参考にすると述べた「追加額」は、この1000億円を指す。
同じ夏の支援で、家庭向けなどの電気・ガス料金支援には、5月26日に一般予備費5135億円の使用が決まっている。国の値引きと交付金を組み合わせる形は冬も同じで、交付金は年度末までの実施を検討している。
| 項目 | この夏 | この冬 |
|---|---|---|
| 料金支援の期間 | 7〜9月 | 12〜2月(3月は未定) |
| 交付金の追加額 | 1000億円 | 未定(調整後に発表) |
| 交付金の支援の期間 | ― | 本年度末まで切れ目なく実施する方針 |
出典: 首相官邸の会見(5月25日、10月29日)、財務省、総務省の会見概要(11月6日)
自治体は灯油支援にどう使ってきたか
交付金を使った灯油の支援は、自治体ごとに対象も額も異なる。
秋田市は令和7年度、この交付金を活用して福祉灯油購入費の助成を実施した。令和7年12月1日時点で市に住民登録があり、世帯全員の住民税が非課税である世帯に、1世帯6100円を支給した。対象と見られる世帯へ申請書を送ったのは令和8年3月2日である。
山形県酒田市は今年度、灯油等購入費助成事業を新規に立ち上げた。8月3日に可決された補正予算に7770万4000円を計上し、1世帯あたり1万円を支給する。対象は令和8年度の市町村民税が非課税である世帯のうち、高齢者世帯、障がい者世帯、ひとり親世帯、要介護世帯で、市は11月11日をめどに申請書や支給の案内を送る。この補正予算の歳入には、重点支援地方交付金7696万8000円と、山形県の「低所得世帯の冬の生活応援事業費補助金」3675万円が計上されている。いずれも補正予算全体の歳入で、事業ごとの内訳は資料に載っていない。
2市の例は、同じ交付金でも支給額に差があり、案内が届く時期も冬の入り口から年度末まで開きがあることを示している。酒田市の場合、事業の開始には市議会での補正予算の可決を経ている。このため、国が追加を決めた後に、住民への支給までどれだけの日数がかかるかは自治体の手続きによって変わる。
飲食料品の減税後も残る燃料代
支援の終点として藤井氏が挙げたのは、来年4月の飲食料品の消費税率引下げである。政府が国会に提出した法案は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間、飲食料品の税率を引き下げる内容で、いまも国会で審議されている(消費税減税法案、6日の衆院財金委に首相が1時間出席 同日採決は中道が応じず)。
この法案の対象は飲食料品であり、灯油やLPガスの税率は変わらない。首相は物価高対策を切れ目なく講じるとしてきたが、4月の減税は燃料の価格を下げる措置ではない。交付金の区切りを年度末に置くのであれば、燃料代の負担が4月以降どうなるかは別に見ていく必要がある。
公金の使い方としては、交付金の方式に利点がある。全国一律の値引きでは拾えない利用者に、事情を知る自治体が届けられるからだ。一方で、配分額の算定の基礎に挙がるのは人口、物価上昇率、財政力などで、暖房の使用量は資料に書かれていない。藤井氏が「冬季の寒冷地における財政需要」に留意すると述べたのであれば、政府は規模を発表する際、寒冷地の事情を配分にどう反映するかも併せて示した方がよいのではないか。自治体が灯油とLPガスのどちらにどれだけ回せるかを早く見通せれば、冬のうちに住民へ届く支援が増える。
