武部新農林水産相は6日の記者会見で、2014年と2021年に寄付を受けた4企業が国の公共事業を請け負っていたことを確認し、寄付を返金すると明らかにした。寄付は選挙期間中に受けたものだったという。武部氏は平時の政治活動への寄付だと説明し、法律には抵触しないとの認識を示している。過去の政治資金収支報告書の点検は続けており、同様の寄付が見つかれば同じように対応するとした。

「疑念を生じさせないよう」返金

会見は6日午前9時22分から農林水産省の会見室で開かれ、週刊誌報道についての質問が相次いだ。武部氏は寄付の件について、「2014年と2021年に寄付をいただいた4企業については、今回の事実確認を経て、国からの公共事業を請け負っていた事実を確認いたしました」と述べた。

返金の理由は次のように説明した。「これらは、平時の政治活動に対して寄付をいただいたものではありますけれども、選挙期間中にいただいたものであるため、国民の皆様の政治に対する疑念を生じさせないよう、返金を行います」。

2014年と2021年は、いずれも衆院選が行われた年だ。投票日は2014年が12月14日、2021年が10月31日だった。

記者から、公職選挙法などの法律に抵触しないという認識かと問われると、武部氏は「はい。そのとおりです」と答えた。一方で、平時の寄付を受ける際の確認については、「国から公共事業を請け負っているかの確認が不十分だった面もあることは否定できない」と認めている。

会見の記録に、4社の社名、寄付の額、返金の時期は出てこない。別の記者は、4社とは別の道内企業1社からの寄付についての報道を挙げて事実関係を尋ねた。武部氏はこの件について、点検の中で確認すると答え、事実が確認された場合は「返金を含め適切に対応してまいりたい」と述べた。

武部氏は、簗前農水相の辞任を受け、10月15日に就任会見を開いた。その席では「公平・透明・信頼を回復するために、先頭に立ってまいりたい」と語っていた。経緯は「武部新農水相、就任会見で「需要に応じた生産」継続 備蓄米は100万トンへ、来年産米693万トン案」で伝えている。

公選法が禁じるのは「選挙に関し」た寄付

この件の前提になる法律は、公職選挙法199条1項の「特定の寄附の禁止」である。国政選挙については、国と「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者」が「当該選挙に関し、寄附をしてはならない」と定めている。受け取る側も、200条2項で「何人も、選挙に関し、第百九十九条に規定する者から寄附を受けてはならない」とされる。

違反には罰則がある。会社など法人の寄付は、違反行為をした役職員が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になる(248条2項)。寄付を受けた者も同じ法定刑だ(249条)。

原口一博総務相(当時)は2010年2月の衆院予算委員会で、この規定の趣旨を説明している。国や自治体と特別な契約関係にある者が選挙に関して寄付をすると「選挙の公正を害するおそれがある」ため、防止するものだという。200条については、受け取る側も禁じることで「寄附禁止の実効を保障しようとする趣旨」だと述べた。

条文の要件は2つある。1つは「契約の当事者」かどうかだ。高市早苗総務相(当時、現首相)は2015年2月の衆院予算委員会で、「現に契約を結んでいる場合を指します」と答弁した。法人が契約を結ぶ場合、その代表者個人や構成員個人は該当しないとの認識も示している。

もう1つは「選挙に関し」た寄付かどうかである。総務省の笠置隆範選挙部長(答弁当時)は2025年2月の衆院予算委員会で、「選挙に関する寄附でなければ、制限されるものではない」と答弁した。2024年2月の衆院総務委員会では同じ趣旨の説明に続けて、個別の事案は「具体の事実に即して判断をされるべきもの」と述べている。

条文の文言は「選挙に関し」であり、「選挙期間中」という語は199条1項に無い。武部氏の「平時の政治活動に対して」という説明は、この要件に沿ったものだ。4社の寄付が「選挙に関し」たものだったかどうかを判断した公的機関の見解は、会見の記録には無い。武部氏が述べた「請け負っていた事実」が、寄付の時点で契約が続いていたことを指すのかも、発言からは特定できない。総務相、簗農水相のバス送迎報道で買収罪の条文を説明 該当性は「具体の事実に即して判断」では、前任の農水相を巡る別の条文の説明を伝えている。

パーティーの景品は「持ち寄られたもの」

会見では、後援会の政治資金パーティーで開いた抽選会の景品についても質問が出た。記者の質問によれば、週刊誌は高級空気清浄機などの景品に触れ、来場者の参加費を大幅に上回る景品が提供されたかどうかが問われている。

武部氏は主催者に確認した結果として、「内容や金額などの詳細の記録は残っておりませんでした」と説明した。「もう10年ぐらい前の話」だという。参加費は「2,000円程度であることが多い」と述べた。

景品の出どころは2種類あるとしている。1つは会費の一部で買った日用品で、ホームセンターなどで購入したものだという。「あくまでも会費の範囲内で準備されている」と報告を受けたと述べた。もう1つは地元の参加者が持ち寄った品だ。主催者に寄付されたものではなく、提供者がのしに記名するなどして当選者に直接贈ったと説明している。

主催者が持ち寄ったのかとの確認には、「主催者が持ち寄ったのではなくて、主催のパーティーに参加された方々が持ち寄って」と訂正した。空気清浄機も持ち寄りの品かと問われると、記録が無いとしたうえで、主催者からは持ち寄ってもらったものだと報告を受けたと答えた。景品の用意を事前に知っていたかについては「承知しておりません」と述べている。

公選法199条の2は、公職の候補者や公職にある者が選挙区内の者に寄付をすることを原則として禁じている。武部氏は景品について、「選挙に違法するものではないというふうに認識しております」と語った。この説明は主催者からの報告に基づくもので、記録で裏付けられたものではない。

点検は続く 保管期限が切れた分は「難しい」

過去の収支報告書の点検について、武部氏は、選挙期間中に国の公共事業の受注企業から寄付があったかどうかを確認している最中だと述べた。「国からの公共事業を請け負っている企業からの選挙期間中の寄付が確認された場合には、同様に適切に対応してまいりたい」という。

点検の範囲には制約がある。武部氏は「保管期限が切れたものまで調査するのは難しいところはある」としたうえで、2014年と2021年を含めて他に無かったかを確認していると説明した。

政治資金規正法20条の2は、収支報告書を受理した総務大臣や都道府県の選挙管理委員会に対し、公表した日から3年を経過する日までの保存を義務づけている。それより古い報告書は、公的な保存の対象から外れることになる。

返金の記載については、過去の報告書を訂正するのではなく、「返金した年の収支報告書で記載する」と説明した。記者が、来年公表される2026年分に記載が出てくるのかと確かめると、武部氏は「はい」と答えた。

5日の参院農林水産委員会では、野党が集中審議を求め、資料の提出を求める質疑も出たと記者が指摘した。武部氏は「委員会の運営や資料の提出については、委員会の御判断に従って対応してまいります」と答えている。6日夕の時点で国会会議録検索システムを検索しても武部氏の寄付に関する発言は見つからず、本紙は委員会でのやり取りを確認できていない。

問われるのは閣僚としての説明の中身

本人が事実確認の結果を会見で示し、法律に抵触しないとの認識を保ったまま返金を決めた点は、閣僚の対応として理解できる。違法かどうかが確定していない段階で、疑念を残さない方を選んだからだ。確認が不十分だった面を本人が認めた点も同じである。

ただ、説明はまだ半分である。返金は、武部氏が言う「国民の皆様の政治に対する疑念」を解くための措置だ。そうであれば、国民が判断できる材料がなければ目的を果たせない。現状では、寄付が何社から、いくら、いつ入り、そのとき国との契約が続いていたのかが示されていない。199条の要件のうち「契約の当事者」かどうかは、これらの事実で確かめられる。

国の予算を執行する閣僚の説明として、納税者の立場からは、点検の結果を社数・金額・寄付の時期とともに公表すべきではないか。社名を伏せる判断はあり得るが、数字は出せるはずである。保管期限で報告書が残っていない年についても、寄付をした企業の側に照会すれば確かめられる余地がある。

返金の記載が収支報告書で公になるのは来年だ。それまで待つのではなく、点検が終わった時点で、武部氏自身の言葉で結果を示すことが、就任時に語った「公平・透明・信頼」に沿う対応ではないか。