デジタル庁と厚生労働省は9月30日、全国の病院と医科診療所が電子カルテをどこまで入れているかを都道府県別に見られる「電子カルテの導入状況に関するダッシュボード」を公開した。2026年6月時点の数値で、地図とヒストグラム(分布を棒の高さで示すグラフ)のほか、構造化したデータをCSVとExcelで配っている。
導入率をどう数えているか
ダッシュボードの導入率は、診療所や病院の全数を母数にしたものではない。デジタル庁が同時に公開した定義によれば、「アンケート回答施設における電子カルテの導入施設数」を「アンケート回答施設におけるオンライン資格確認システムの導入施設数」で割って出している。
オンライン資格確認は、マイナンバーカードなどを窓口で読み取り、加入している公的医療保険の資格を確認する仕組みだ。その仕組みを入れている医療機関の画面にアンケートを表示して答えを集めた。集めたのは社会保険診療報酬支払基金で、同基金は10月1日から医療情報基盤・診療報酬審査支払機構に名前が変わる。
つまり、この数字は「オンライン資格確認まではすでに済ませた医療機関のうち、電子カルテにも進んだ割合」を表す。デジタル庁は正誤情報を載せるページも別に用意し、数値は定期的に更新すると説明している。アンケートへの回答率は病院で90.7%から100%、医科診療所で91.3%から97.0%の範囲に収まっており、答えていない施設が結果を大きく左右するほどの規模ではない。
病院は鳥取県91.2%、診療所は沖縄県82.5%が最上位
公開されたCSVで47都道府県を並べると、病院の導入率が最も高いのは鳥取県の91.2%で、回答した34施設のうち31施設が電子カルテを入れている。三重県の90.8%(76施設中69施設)、島根県の90.6%(32施設中29施設)が続く。最も低いのは福島県の64.9%で、94施設中61施設だった。佐賀県が68.8%(77施設中53施設)、青森県が69.1%(68施設中47施設)と続く。
医科診療所では順位の並びが変わる。最も高いのは沖縄県の82.5%(650施設中536施設)で、東京都の81.0%(1万389施設中8416施設)、富山県の78.7%(451施設中355施設)が続いた。最も低いのは徳島県の54.3%(435施設中236施設)、次が和歌山県の58.8%(645施設中379施設)、宮崎県の61.3%(556施設中341施設)である。都市と地方という単純な分け方では説明が付かず、病院で上位に入った鳥取県は診療所では64.1%(315施設中202施設)にとどまる。
CSVに載っている47都道府県の施設数を合計すると、病院は回答6397施設のうち4982施設、医科診療所は回答7万1616施設のうち5万1985施設が電子カルテを導入している。全国の値そのものはダッシュボードの表には示されていない。
医療施設調査では15年で21.9%から65.6%へ
電子カルテの普及は、厚労省が3年ごとに実施する医療施設調査でも追われている。こちらは精神科病床のみ・結核病床のみの病院を除いた「一般病院」の全数を母数にしており、ダッシュボードとは数え方が違うため直接つなげることはできない。
その医療施設調査によると、一般病院の電子カルテ導入率は平成23年に21.9%(7410施設中1620施設)だったものが、平成26年に34.2%、平成29年に46.7%、令和2年に57.2%と上がり、令和5年には65.6%(7065施設中4638施設)に達した。歯科のみの診療所を除く一般診療所も、平成23年の21.2%から令和5年の55.0%(10万4894施設中5万7662施設)へ伸びている。
規模による差は大きい。令和5年の一般病院を病床数で分けると、400床以上は93.7%(650施設中609施設)でほぼ行き渡っているのに対し、200〜399床は79.2%(1207施設中956施設)、200床未満は59.0%(5208施設中3073施設)にとどまる。検査や処方の指示をコンピューターで回す「オーダリングシステム」は一般病院全体で68.0%(7065施設中4807施設)が導入しており、電子カルテよりわずかに先行している。小規模な病院や診療所にとっては、導入費用と職員の習熟が壁になりやすい。病院経営そのものも、令和8年版厚生労働白書を公表 介護職の有効求人倍率3.98倍、病院の58.0%が経常赤字 テーマは「医療・介護・福祉の現場で働くこと」のとおり厳しさが続いている。
医療DXの進み具合を測る物差しが増えた
電子カルテは、患者の診療記録や検査結果、処方の情報を電子的に記録・管理する仕組みで、厚労省が進める医療DX(医療分野のデジタル化)の土台に当たる。今後は電子カルテ情報共有サービスとつなぐことで、医療機関同士が必要な診療情報をやりとりできるようにすることを目指している。この仕組みを使えば、初めて受診する医療機関でも過去の処方や検査の結果を医師が確認でき、重複した検査や薬を避けられる。逆に言えば、紙のカルテで運用している医療機関が残るほど、共有の網には穴が空く。
デジタル庁は7月にもデジタル庁、医療DXの進み具合を「見える化」 マイナ保険証や電子処方箋など5分野を公開のダッシュボードを公開しており、その時点では電子カルテの共有状況は今後追加するとしていた。今回の公開で、マイナ保険証によるオンライン資格確認、電子処方箋に続いて、電子カルテの導入状況も政策の進捗として数字で追えるようになった。問い合わせ先は厚労省政策統括官付の医療情報連携担当参事官室が担う。
