上野賢一郎厚生労働相は6日の閣議後の記者会見で、生活保護を受けているひとり親世帯などについて、通勤と子どもの送迎のために自動車の保有が認められる場合を整理し、示す方向で検討していると述べた。4日にあった超党派の子どもの貧困対策推進議員連盟の総会で、厚労省の事務方がこの検討を説明していた。生活保護では車は原則として処分の対象で、例外は障害者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域の住民などに限られている。対象者や認める期間などの要件について、大臣は自治体と調整しながら詰めている段階だとして、「現段階で確たることを申し上げられるような状況ではありません」と述べた。
会見での説明、「例外の明確化」を検討
会見は6日午前8時58分から厚労省の会見室で開かれた。記者は、超党派の議連で、未就学児がいるひとり親家庭の車の保有について要件の見直しの説明があったとして、検討の状況と変更の見通しを尋ねた。
上野氏は、4日の総会で事務方が「生活保護における自動車保有の例外的な取扱いを認める場合の明確化について検討している旨」を説明したと答えた。そのうえで、現在も公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人や障害のある人について、通勤や通院のためにやむを得ないと認められる場合は例外として車の保有を認めていると説明した。
今回の検討について上野氏は、「ひとり親世帯等について、通勤と子どもの送迎のために自動車の保有が認められる場合を整理して、お示しする方向で検討している」と述べた。理由としては「生活保護制度において、自立を助長する観点は重要だと考えている」と語り、自治体などと調整して詳細を示せるよう努めるとした。
記者は続けて、議連では乳幼児などの対象について説明があったようだとして、どういう人をどの期間認めるのかといった要件を尋ねた。上野氏は「そうした要件も含めて、現在、自治体等とも調整を行いつつ詳細について詰めているところ」と答え、具体的な対象や期間、見直しの時期には触れなかった。会見で示されたのは、検討の方向と、目的が「通勤と子どもの送迎」だという点までである。
車はなぜ原則として持てないのか
生活保護は、持っている資産をまず生活の維持に充てることを受給の前提にしている。厚労省が公表している「生活保護実施要領等」(2026年4月1日施行分)によると、事務次官通知は、最低限度の生活の内容として持つことを認めるのが適当でない資産は、原則として処分して生活の維持に充てさせると定める。例外は、処分するより持っていた方が生活の維持と自立に役立っているものや、「社会通念上処分させることを適当としないもの」などである。
車について、厚労省が自治体の担当者向けにまとめた「生活保護の基本的な実務」は、最低限度の生活の維持のために活用すべき資産で、維持費が毎月かかるため、原則として保有が認められないと説明している。同じ資料は、窓口で「自動車の保有は一律に認められない」と説明するのは誤りだとも書いている。障害者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域の住民などが通勤や通院に必要とし、一定の要件を満たせば持てるためだ。
例外として資料が挙げるのは3つある。1つ目は事業用の車で、地域の低所得世帯との均衡を失わず、現に生活の維持に使っているか、おおむね1年以内に収入を増やす見込みがある場合。2つ目が通勤用、3つ目が障害者などの通院・通所・通学用である。
通勤用の例外、いまの4つの場面と4つの条件
通勤用の車について、実施要領の課長通知(問答)は、車のほかに通勤する方法が全くないか、通勤が極めて困難で、保有が社会的に適当と認められる場合に、次の4つの場面で保有を認めるとしている。
| 場面 | 追加の条件 |
|---|---|
| 障害者が車で通勤する | なし |
| 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む人が車で通勤する | 下の4条件をすべて満たす |
| 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先へ車で通勤する | 下の4条件をすべて満たす |
| 深夜勤務などの仕事に就く人が車で通勤する | 下の4条件をすべて満たす |
出典: 厚生労働省「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」
障害者以外の3つの場面では、①世帯の状況から車での通勤がやむを得ず、その仕事が世帯の自立に役立っている②その地域の車の普及率から見て、車を持たない低所得世帯との均衡を失わない③車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の車である④仕事の収入が車の維持費を大きく上回る――の4条件をすべて満たす必要がある。
失業や病気で仕事を中断している人が保護を受け始める場合には別の取り扱いがある。おおむね6か月以内に就労で保護から抜け出すことが確実に見込まれ、車の処分価値が小さければ、処分の指導をしない。ただし維持費を出せない場合は除く。
いまの問答には、子どもを保育所などへ送り迎えするために通勤用の車を持つことを正面から定めた項目は無い。上野氏は今回の検討を「例外的な取扱いを認める場合の明確化」と説明した。実施要領のどの問答をどう書き換えるかは、会見では示されなかった。
母子世帯は5万4679世帯
厚労省が4日に公表した被保護者調査(2026年8月分概数)によると、保護を受けている世帯は163万2557世帯(保護停止中を除く)だった。このうち母子世帯は5万4679世帯で全体の3.3%を占める。前年同月の5万8573世帯から3894世帯、6.6%減った。最も多いのは高齢者世帯の90万635世帯(55.2%)で、障害者・傷病者世帯が41万8400世帯(25.6%)、その他の世帯が25万8843世帯(15.9%)だった。
保護を受ける人の総数は196万5132人で、人口100人あたりの保護率は1.60%だった。受給者数の推移は生活保護の申請、8月は2万1181件で2.3%増 受給者は196万5132人で今年度最少で詳しく伝えた。ひとり親世帯への支援では、生活保護費に上乗せする母子加算の金額の検証も社会保障審議会の部会で進んでいる。検証の結果は生活保護の母子加算、追加費用の推計に1.6〜14.1%の幅 厚労省が検証結果を部会へで報じた。
調査の分類で「母子世帯」とされるのは母親と子どもの世帯で、父子世帯は含まれない。大臣が会見で挙げたのは「ひとり親世帯等」であり、見直しの対象がどの世帯の範囲になるかは要件の詰めの中で決まる。
自立につながる例外を、維持費の負担の線を保って示せるか
生活保護は税金で賄われる。車の保有を原則として認めないのは、維持費が毎月かかり、その分を保護費から出すことになれば、保護を受けずに暮らす低所得世帯との均衡が崩れるからだ。現行の通勤用の例外が「仕事の収入が維持費を大きく上回ること」を条件にしているのは、車を持たせることで就労の収入が増え、保護から抜け出す道が開ける場合に限るためである。
ひとり親が子どもを保育所へ送ってから出勤するには、公共交通だけでは時間が合わない地域もある。車が無いために働ける時間や職場が狭まり、保護から抜け出す機会を失うのであれば、それは本人にとっても公費の面でも損失になる。上野氏が見直しの理由に「自立を助長する観点」を挙げたのは、この点にかなう。
一方で、要件が曖昧なままでは、自治体ごとに判断が分かれる。厚労省が求められるのは、子どもの年齢、認める期間、就労の実態の確かめ方を具体的に書き、現行の4条件にある維持費と収入の線をどう保つかを示すことだ。対象が「ひとり親世帯等」とされた「等」が何を含むのかも、詳細の公表で明らかにする必要がある。
