国税庁は11月5日、国税の電子申告・納税システム「e-Tax」の利用を再開したと公表した。4日に検知した不審な通信への対応と安全性の確認を終えたためで、「納税者の情報は漏えいしていないことを確認しております」と記した。再開の時刻、不審な通信の中身、漏えいなしと判断した根拠は、告知に書かれていない。
「対応」と「安全性の確認」を終えたと説明
国税庁は、4日付の「緊急メンテナンスのお知らせ」のページを書き換え、題を「e-Tax再開のお知らせ」に改めた。掲載日は4日のままで、更新日として5日を加えている。
本文は、4日に検知した不審な通信への対応のために機器メンテナンスを実施していたと経緯を述べる。そのうえで「必要な対応及び安全性の確認が完了したことから、e-Taxの利用を再開いたしました」とした。
漏えいについては、続く一文で「なお、納税者の情報は漏えいしていないことを確認しております」と書いた。停止の間の不便を詫び、「引き続き、安定的かつ安全なサービス提供に努めてまいります」と結んでいる。
4日の時点で、国税庁は流出の有無に触れていなかった。停止の段階の経過は「e-Taxを緊急停止、不審な通信を検知 再開時期は未定 国税庁、流出の有無は示さず」で伝えた。利用者の情報が外部に出たかどうかを国税庁の告知が述べたのは、今回が初めてだ。
e-Taxのホームページは「緊急のお知らせ」の欄に再開の案内を掲げ、利用可能時間については「メンテナンス時間を除き、24時間ご利用可能です」と表示している。
告知は2度書き換わり、少なくとも7時間余り停止
告知のページは、4日から5日にかけて内容が変わった。ウェブページを保存して公開する「インターネットアーカイブ」には、同じページの記録が3回分残っている。
| 保存の時刻 | 告知の内容 |
|---|---|
| 4日午後5時0分 | 緊急メンテナンスを実施中。理由の記載なし |
| 5日午前0時19分 | 4日19時の追記で「不審な通信を検知」。確認のため機器メンテナンス中 |
| 5日午前10時52分 | 再開を公表。「納税者の情報は漏えいしていない」 |
出典: インターネットアーカイブが保存した国税庁の告知ページ(時刻は日本時間に換算)
この記録から分かるのは次の範囲だ。停止は4日午後5時の時点で始まっており、5日午前0時19分の時点でも続いていた。これだけで7時間余りになる。再開の告知が出たのは、5日午前0時19分から午前10時52分までの間ということになる。
実際に止めた時刻と再開した時刻は告知に無く、停止の長さは確定できない。
国税庁の報道発表の一覧に、この件の掲載は無かった(5日午前11時台に確認)。公表はe-Taxのホームページのお知らせにとどまっている。
書かれていないことと、過去の告知との違い
再開の告知にも、書かれていない点が多い。検知の時刻、通信の相手や種類、外部からの攻撃だったかどうか、機器に異常があったかどうか、何を調べて漏えいなしと判断したのかは、いずれも示されていない。
国税庁自身の最近の告知と比べると、その差が分かる。
10月22日には、プログラミング言語「PHP」の深刻な脆弱性(ぜいじゃくせい。プログラムの欠陥)を受け、国税庁ホームページなどの公開を止めた。このときの告知は、午前10時20分ごろに停止し、緊急点検と修正プログラムの適用を終えて午後4時10分ごろに再開したと、時刻と作業の中身を書いている。
10月30日には、午前10時ごろからe-Taxに接続しづらい事象が起きた。解消の告知は「一部の申告又は納税手続が正常に完了していない可能性があります」として、利用者にメッセージボックスで受信通知を確かめるよう求めた。今回の告知には、停止の前後に送信した手続きを確かめるよう促す案内は無い。
9月24日に告知した緊急メンテナンスでは、9月25日午前0時から4時までと日時を示していた。国税庁は、この9月24日を国税システムの更改の日と告知していた。更改やPHPの脆弱性と今回の不審な通信の関係について、告知に記述は無く、関連の有無は分からない。
10日の納付期限を前に再開、期限の扱いには触れず
再開で、11月の期限に向けた手続きはe-Taxで再び行える。給与などから天引きした源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに国へ納める。10月に支払った分の期限は11月10日で、再開の公表の5日後に当たる。個人の予定納税も、第2期分の納期が11月1日から30日までとなっている。
源泉所得税の納付に使う徴収高計算書は、令和7年度に662万1630件がe-Taxで出され、オンライン利用率(手続きの総件数のうちe-Taxで行われた割合)は34.0%だった。e-Taxからの口座振替である「ダイレクト納付」は686万件で、国税の納付全体の13.6%を占める。申告では、所得税の77.4%、法人税の91.8%がe-Taxで出されている。利用の推移は「相続税の電子申告が7割に 前年度50.3%から急伸 国税庁の令和7年度e-Tax実績」で伝えた。
国税庁の案内によると、申告に使う国税庁のシステムが期限の間際に使えず、手続きのできない人が多数に上ると認められるときは、国税庁長官が対象者の範囲と期日を指定して期限を延ばせる。この「対象者指定」なら申請は要らない。納税者が所轄の税務署長に申請する「個別指定」もあり、理由がやんだ日から2か月以内に限って期限が延びる。
前例は令和4年(2022年)3月の接続障害だ。14日から15日にかけてログインや送信がしにくい状態が断続的に起き、国税庁は原因をデータベースへの処理の負荷と公表した。申告書に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨を書く手続きを示し、3月18日までに期限を迎える申告などは4月15日まで延ばせるとした。
今回の告知は、4日から5日の停止について、期限の延長に触れていない。延長の措置を取らないのか、取る必要が無いと判断したのかも書かれていない。
漏えいなしの判断に、確認の範囲を添えるべきではないか
国税庁が翌日の午前中に再開の告知を出し、漏えいの有無に答えたことは、4日の告知からの前進だ。11月10日の納付期限の5日前に利用できる状態へ戻した点も、納税者の手続きを守ったといえる。
ただし、説明は職務に見合う水準に届いていない。国税庁は所得税申告の77.4%、法人税申告の91.8%が通るシステムを運用し、納税者に利用を勧めてきた。漏えいしていないと言うなら、何を調べた結果なのかが、その言葉の裏付けになる。結論だけを示す告知では、納税者は確かめようがない。
比べる相手は国税庁自身の告知である。10月22日のPHPの告知は停止と再開の時刻を示し、10月30日の告知は手続きが完了していないおそれと確認の方法を示した。不審な通信という、より深刻な事案の告知が、これらより少ない情報で終わっている。
攻撃の手口や防御の仕組みの詳細は、公表すれば次の被害につながる部分があるだろう。だが、検知と再開の時刻、確認した範囲、停止の前後に送信した手続きの扱いは、それとは別の話である。税理士や事業者の立場に立てば、この3点を追加で公表し、期限に影響があった人の手続きも案内すべきではないか。
