日本銀行は11月4日、2026年10月のマネタリーベースを公表した。平均残高は532兆5717億円で、前年同月より13.6%減った。減少率は9月の15.2%から縮み、9月からの減少額は2747億円にとどまった。水準は2020年5月の530兆8787億円以来の低さが続いており、2024年4月に記録した過去最高の689兆8964億円からは157兆3247億円、22.8%縮んでいる。

10月の内訳 9月からほぼ動かず

マネタリーベースとは、日銀の解説によると「日本銀行が供給する通貨」のことだ。市中に出回る現金である日本銀行券発行高と貨幣流通高に、金融機関が日銀に預けている日銀当座預金を足した金額を指す。金融緩和で増え、その巻き戻しで減るのは主に当座預金の部分である。

10月の内訳をみると、日銀当座預金は413兆9317億円で前年同月より16.4%減、うち準備預金は382兆1699億円で15.2%減だった。日本銀行券発行高は114兆632億円で2.3%減、貨幣流通高は4兆5768億円で1.1%減となっている。

項目 10月の平均残高 9月の平均残高 前年同月比
マネタリーベース 532兆5717億円 532兆8464億円 13.6%減
日本銀行券発行高 114兆632億円 114兆6005億円 2.3%減
貨幣流通高 4兆5768億円 4兆5781億円 1.1%減
日銀当座預金 413兆9317億円 413兆6678億円 16.4%減
マネタリーベースの内訳(平均残高)出典: 日本銀行「マネタリーベース(2026年10月)」

9月と比べると、銀行券は5373億円減り、当座預金は2639億円増えた。8月と9月の総額はそれぞれ前月より11兆9189億円、10兆1606億円減っており、10月の動きはこの2か月と大きく異なる。一方で1年前と比べた減少額は84兆263億円で、このうち81兆3338億円、約97%を当座預金が占める。当座預金の過去最高はマネタリーベースと同じ2024年4月の564兆4691億円で、そこからは150兆5374億円減った。

9月までの動きはマネタリーベース、9月は532兆8464億円で前年同月より15.2%減 2024年4月のピークから157兆円縮み2020年5月以来の低い水準 国債の買い入れは10〜12月に月2兆3000億円で伝えた。

減少率が縮んだのは前年の10月に大きく減ったため

前年同月比の減少率は、8月の15.7%、9月の15.2%から13.6%へと縮んだ。ただし、この縮小には比較相手の側の事情が大きい。2025年10月の平均残高は616兆5980億円で、同年9月の628兆1080億円から11兆5100億円減っていた。比較の基準がこれだけ下がった一方、2026年10月の残高はほぼ動かなかったため、差し引きで減少率が小さくなった。

2026年のマネタリーベース平均残高(兆円)

520540560580600570.8582.9532.63月5月7月9月10月
億円単位の公表値を兆円に換算し、小数第2位を四捨五入出典: 日本銀行「マネタリーベース」
数値で見る(単位: 兆円)
項目兆円
3月570.8
4月582.9
5月575.8
6月559.2
7月554.9
8月543.0
9月532.8
10月532.6

季節による振れをならした数字でも、10月は様子が変わった。季節調整済みの残高は533兆3923億円で、9月の531兆2776億円を上回り、前月比の年率は4.9%増となった。8月は28.8%減、9月は10.2%減だった。現在公表されている季節調整値で前月を上回るのは、2025年2月以来1年8か月ぶりである。

月末の残高でみると、10月末は537兆2137億円で、9月末の535兆4214億円より1兆7923億円多い。このうち当座預金は418兆4554億円で、9月末から1兆8601億円増えた。

当座預金が増えた背景に政府資金の出入り

当座預金がなぜ増えたのかは、日銀が11月2日に公表した「日銀当座預金増減要因と金融調節」の10月実績で分かる。政府と民間の間の資金のやり取りを示す財政等要因は3013億円の資金不足にとどまり、前年10月の6兆8494億円の不足より6兆5481億円小さかった。

要因 2026年10月 2025年10月
銀行券要因 630億円 -2251億円
財政等要因 -3013億円 -6兆8494億円
うち一般財政 3兆5795億円 1兆8668億円
うち国債(1年超) -9兆9213億円 -9兆8778億円
うち国庫短期証券 3兆7016億円 563億円
金融調節 2兆984億円 2兆6913億円
うち国債買入 2兆1363億円 3兆2097億円
当座預金の増減 1兆8601億円 -4兆3832億円
10月の日銀当座預金の増減要因(マイナスは当座預金を減らす要因)出典: 日本銀行「日銀当座預金増減要因と金融調節(2026年10月実績)」

前年との差で最も大きいのは国庫短期証券である。政府の短期の債券で、10月は発行の18兆4982億円に対して償還が22兆1998億円あり、差し引き3兆7016億円が民間へ戻った。前年10月はこの差が563億円しかなかった。一般財政の支払い超過も3兆5795億円で、前年の1兆8668億円を上回っている。1年を超える国債の発行と償還による資金の吸収は9兆9213億円で、前年とほぼ同じだった。

これに対し、日銀自身の国債買入は2兆1363億円で、前年10月より1兆734億円少ない。前年10月は財政等要因の不足が金融調節の2兆6913億円を上回り、当座預金は4兆3832億円減った。2026年10月は買入額が減ったにもかかわらず、財政等要因の不足がわずかだったため、金融調節の2兆984億円の大半がそのまま当座預金の増加となった。日銀が資金供給を増やしたわけではない。

当座預金の残高は10日ごとの営業毎旬報告でも追える。直近の数字は日銀の総資産625兆円、前年同期より70兆円減 国債504兆円で国庫短期証券はゼロで伝えた。

国債の買い入れは計画どおり減り続ける

10月30日の決定に、国債買い入れ計画の変更は含まれていない。日銀が2026年6月16日に決めた計画では、長期国債の月間買入れ予定額は7〜9月が2兆5000億円程度、10〜12月が2兆3000億円程度、2027年1〜3月が2兆1000億円程度で、同年4月以降は2兆円程度とする。10月30日に更新された四半期予定でも、10〜11月分の月間オファー金額は計2兆3000億円となっている。日銀の資料が示す計画の起点は月5兆7000億円程度で、いまの予定額はその約4割の水準だ。

月2兆円程度を続けた場合の日銀の試算では、国債の保有残高は額面で2027年3月末に480兆円程度、2030年3月末に350〜370兆円程度となる。減額を始める前の2024年6月末と比べると、2030年3月末は36〜39%程度少ない。

減っているのは国債の買い入れだけではない。10月末の貸出支援基金の残高は35兆6645億円で、1年前の58兆8566億円から23兆1921億円減った。社債等買入の残高も3兆3134億円から9400億円になった。逆に気候変動対応オペは17兆1298億円から24兆9361億円に増えている。10月末の当座預金は1年前の497兆6936億円より79兆2382億円少ない。

ETF売却は1月から増額 次の節目は12月

日銀は10月30日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(翌日物)を1.25%程度で推移するよう促す方針を賛成8・反対1で決めた。9月18日の会合で決めた水準を据え置いた形だ。当座預金のうち所要準備額に相当する部分を除く金額に付く金利も、この9月の決定で1.25%となっている。高田委員は1.5%程度とする議案を出し、反対多数で否決された。同日の「経済・物価情勢の展望」は、消費者物価の基調的な上昇率について「2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準」としている。

同じ会合では、保有するETF(上場投資信託)の売却ペースの見直しを全員一致で決めた。年間の売却額を簿価で3300億円程度から8600億円程度に増やし、2027年1月から実施する。時価に換算すると年2兆4600億円程度で、市場全体の売買代金に占める割合は0.05%程度から0.1%程度に上がる。売却完了までにかかる年数は約112年から約43年に短くなる計算だ。

10月の会合の主な意見は11月10日に公表される。次の金融政策決定会合は12月17〜18日に開かれる。長期国債の買入れ予定は、12月分の日程が11月30日17時に、2027年1〜3月分が12月25日17時に公表される予定だ。