環境省は9月25日、神戸港のコンテナヤードで見つかったアリが、専門家による同定の結果、要緊急対処特定外来生物のコガネヒアリ(学名Solenopsis aurea)だったと発表した。兵庫県、神戸市との同時発表で、この種が日本国内で確認されたのは今回が初めてとなる。米国南西部からメキシコ北部にかけて分布するヒアリ類の一種だ。
確認されたのは、これまでの累計で働きアリ約2万個体、羽アリ約500個体、羽のない女王アリ約20個体と、幼虫など多数。コンテナヤードの地面のほか、コンテナの側面や底面からも見つかった。環境省は兵庫県や神戸市などと協力して発見場所の調査と防除を続け、定着を防ぐ取り組みを進めるとしている。
9月14日に約1500個体、21日に「コガネヒアリ」と判明
発表資料には、発見から同定までの経緯が日付順に記されている。
最初の確認は9月14日だった。環境省が実施している全国港湾調査の神戸港での調査中に、調査事業者がコンテナヤード内で、ヒアリ類と疑われるアリ約1500個体が土の中から出入りしているのを見つけた。この日のうちに周辺へ殺虫餌(ベイト剤)を設置し、回収したアリの同定を専門家に依頼している。
16日には環境省と神戸市が現地調査を行い、多数のアリを確認して再びベイト剤を設置した。17日の調査には港湾事業者なども加わり、複数の羽のない女王アリと、多数の働きアリ・羽アリ・幼虫などが確認された。この日は、土からの出入りが確認された箇所の周辺と、そのすぐ上に置かれていたコンテナに対して、液剤(液体型の殺虫剤)などを用いた集中的な防除が実施されている。
そして21日、環境省から依頼を受けた専門家が、このアリをコガネヒアリと確認した。最初の発見から1週間で種が特定され、その4日後に公表された形だ。
「要緊急対処特定外来生物」は普通の特定外来生物と何が違うか
コガネヒアリが指定されている要緊急対処特定外来生物は、外来生物法第2条第3項に基づく区分である。環境省の説明によれば、特定外来生物のうち「まん延した場合には著しく重大な生態系等に係る被害が生じ、国民生活の安定に著しい支障を及ぼすおそれがある」ため、その生物やその疑いのある生物を見つけたときに、検査・防除など拡散を防ぐ措置を緊急に行う必要があるものとして、政令で指定される。
通常の特定外来生物が飼育や輸入などの規制を中心とするのに対し、この区分では発見後の緊急対応まで枠組みに入っているのが特徴だ。実際、今回も「ヒアリ類(要緊急対処特定外来生物)に係る対処指針を定める件」(令和5年国土交通省・環境省告示第1号)を踏まえ、環境省近畿環境局が兵庫県や神戸市などの関係機関に対し、発見場所とその周辺の点検、疑わしいアリを見つけた際の密閉と通報などを改めて依頼している。
依頼の中には、ヒアリ類の疑いがある場合には外来生物法に基づいて環境省からコンテナや積荷の移動制限・移動禁止の命令が出される場合があること、ヒアリ類と同定されたあとはコンテナや積荷の消毒または廃棄の命令が出される場合があることに留意するよう求める項目も含まれている。国が個別の貨物の移動や処分にまで踏み込める仕組みになっている。
ヒアリは昨年度36事例で過去最多 それでも「定着」はしていない
ヒアリ類が国内の港で見つかること自体は、近年珍しくなくなっている。環境省が今年4月21日に公表した令和7年度の取りまとめによると、同年度に確認されたのはヒアリが36事例、アカカミアリが24事例だった。ヒアリの36事例は年度としての確認事例数の過去最多を大幅に更新したもので、それまでの最多は平成29年度の26事例だった。
確認場所は港湾のコンテナヤード内の地面がほとんどで、とくに舗装の亀裂や雑草のあるところで多く見つかっている。今回の神戸港の事例で土中からの出入りが確認されたのも、この傾向と重なる。港ごとに見ると、ヒアリ、アカカミアリとも外貿コンテナ取扱量の上位10港での確認が主だったが、令和7年度は新潟港と伏木富山港でヒアリが、苫小牧港と川崎港でアカカミアリが、それぞれ初めて確認された。
コンテナの中や積荷から見つかるなどして侵入経路を特定できた事例では、出港地はヒアリが3件すべて中国、アカカミアリが6件中、中国2件、フィリピン2件、ベトナム1件、台湾1件だった。
それでも環境省は、確認されたヒアリ類はすべて防除を行っており、「現在のところ、日本国内におけるヒアリの定着は確認されていない」としている。見つかるたびに叩いて、根付かせていない、というのが現状だ。今回のコガネヒアリでも、同定前の17日の段階で集中的な防除に踏み切っている。外来種をめぐっては、環境省と農林水産省が9月11日に生態系に被害を及ぼす外来種リスト、11年ぶり改訂 429種類から596種類へ キンギョやヒメダカも新たに掲載を公表しており、水際で止める対策と、国内にすでに入った種への対策が並行して進んでいる。
見つけたらどうするか 「少数なら駆除、多数なら閉めて連絡」
環境省は、ヒアリ類と疑わしいアリを見つけた場合の対応も示している。
事業者向けには、コンテナなどの開封時に疑わしいアリを見つけたら、まず刺激を避けつつ、どの箇所にどの程度の生きたアリがいるかを確認するよう求めている。そのうえで、アリが少数しかおらず、密閉されたコンテナや積荷の中などで逃げ出すおそれがない場合は、市販のスプレー式殺虫剤などでその場で駆除し、環境省の地方環境局などに速やかに連絡して取り扱いを相談する。
多数の生きたアリの集団がいると予想される場合は、扉を閉めて逃げ出さないよう静置したうえで連絡する。可能であれば強粘着の布ガムテープなどでコンテナを目張りし、アリが出ないようにする。コンテナの外で確認された場合も同様に連絡するよう求めている。
一般向けには「ヒアリ相談ダイヤル」(0570-046-110)が設けられている。受付は12月29日から1月3日までを除く土日祝を含む毎日で、午前9時から午後5時まで。チャットボットによる相談受付も24時間行われている。刺された場合に症状があるときは、近くの病院に相談するよう案内している。
