東日本旅客鉄道(JR東日本)は10月30日、2026年4〜9月期(中間期)の連結決算を発表した。営業収益は1兆5853億円で前年同期比8.4%増、営業利益は2629億円で13.6%増、経常利益は2301億円で15.7%増、親会社株主に帰属する中間純利益は1519億円で3.2%増だった。決算説明資料によると、営業収益は6期連続の増収で、第2四半期決算として過去最高。2026年3月14日に実施した同社初の運賃改定と、インバウンド(訪日客)を含む鉄道利用の増加で運輸収入が伸びた。同社は同じ日、通期の業績予想と配当予想を引き上げた。

純利益の伸びは3%にとどまる

営業利益は前年同期より314億円増えた。決算説明資料の増減要因の内訳では、JR単体の運輸収入の増加が約840億円の増益要因になった。一方、人件費の増加が約360億円、修繕費の増加が約130億円の減益要因となった。収入全体は1222億円増え、費用は908億円増えた。

経常利益までは営業利益とほぼ同じ幅で伸びたが、中間純利益の伸びは47億円にとどまった。特別利益が274億円から164億円に減り、特別損失が167億円から308億円に増えたためだ。同社は特別利益の減少を、投資有価証券の売却益が減ったためと説明している。

事業別の営業収益(外部顧客への売上高)は、4つの区分すべてで前年を上回った。営業利益は運輸、流通・サービス、その他で増え、不動産・ホテルだけが減った。

事業 営業収益 前年同期比 営業利益 前年同期比
運輸 1兆888億円 9.0%増 1775億円 24.0%増
流通・サービス 2060億円 4.4%増 322億円 2.1%増
不動産・ホテル 2328億円 8.0%増 412億円 13.8%減
その他 576億円 12.6%増 118億円 37.1%増
連結 1兆5853億円 8.4%増 2629億円 13.6%増
JR東日本の2026年4〜9月期の事業別業績(億円未満切り捨て)

出典: 東日本旅客鉄道「2027年3月期 第2四半期 決算説明資料」

運賃改定で定期は1割増収

鉄道運輸収入は9999億円で、前年同期の9158億円から841億円(9.2%)増えた。旅客輸送量(人キロ)は2.1%増で、収入の伸びは利用の伸びを大きく上回った。運賃改定の分が上乗せされたためだ。

内訳をみると、新幹線は3263億円で8.5%増えた。新幹線の定期外は245億円増え、同社はその内訳を、インバウンドを含む利用の増加で約210億円、運賃改定で約50億円、天候災害で約15億円の減少と示している。在来線は6736億円で9.5%増。このうち関東圏の在来線の定期外は4177億円で352億円増え、運賃改定が245億円、利用の増加が160億円、天候災害が50億円の減少だった。

定期は全体で2443億円となり、前年同期の2216億円から10.2%増えた。増えた227億円のうち、運賃改定によるものが135億円、利用の増加によるものが90億円だった。旅客輸送量でみた定期の伸びは2.1%で、収入の伸びの多くは値上げによる。

同社が運賃改定の認可を申請した際に想定した効果は、全体で改定率7.1%、増収率5.0%だった。増収率は改定率から、値上げで利用をやめる人の分を差し引いた見込みだ。通勤・通学の定期は改定率11.0%・増収率8.7%、定期外の運賃は改定率7.8%・増収率5.7%と見込んでいた。

なお、同社は2027年3月期の第1四半期から旅客輸送量の計算方法を見直しており、前年同期の数値も新しい方法で計算し直している。

不動産は販売なく減益、エキナカは増収

不動産・ホテル事業は、営業収益が8.0%増えた一方で営業利益は66億円減った。TAKANAWA GATEWAY CITYの全面開業やOIMACHI TRACKSの開業でオフィス賃貸やショッピングセンター、ホテルの収入は増えた。ただ前年同期に45億円あった不動産販売の売上が今期の上半期は無く、販売による営業利益40億円がなくなった。同社は通期では不動産販売の売上を1000億円、営業利益を450億円と見込んでいる。不動産・ホテル事業全体の通期予想は営業収益6050億円(前期比17.9%増)、営業利益1310億円(2.1%増)で、4月の予想を据え置いた。

ホテル事業の営業収益(各社のホテル事業の単純合算)は470億円で7.0%増えたが、営業利益は59億円から55億円に減った。営業収益のうち、「メトロポリタン」のホテルは226億円から247億円に、「ホテルメッツ」は108億円から112億円に増えた。

流通・サービス事業は営業収益2060億円(4.4%増)、営業利益322億円(2.1%増)だった。鉄道利用の増加に伴ってエキナカ店舗の売上が伸び、交通広告も増えた。駅構内の店舗を運営するJR東日本クロスステーションの既存店売上高は、上半期でリテールが前年同期比6%増、フーズが3%増だった。通期の予想は営業収益4260億円、営業利益700億円とした。

その他の事業は、営業収益576億円(12.6%増)、営業利益118億円(37.1%増)で、Suicaなど ICカード事業の関連売上が増えた。

通期予想を上げ、年間配当は88円に

同社は4月30日に公表した2027年3月期の通期予想を引き上げた。営業収益は3兆2950億円から3兆3580億円に、営業利益は4290億円から4500億円に、経常利益は3530億円から3780億円に、純利益は2550億円から2650億円にした。前期の実績は営業収益3兆846億円、営業利益4142億円、純利益2478億円で、修正後の予想はいずれも前期を上回る。理由は鉄道運輸収入の増加などだ。

通期の鉄道運輸収入の計画は、4月時点の1兆9440億円から2兆60億円に上げた。前期の1兆8485億円より1574億円多い。このうち定期の増収は453億円で、運賃改定の分を345億円と見込んでいる。

費用は増える見通しだ。JR単体の営業費用は前期の1兆9237億円から2兆550億円に増える計画で、人件費は人事・賃金制度の変更で398億円、修繕費はコロナ期の影響の解消や物価・労務単価の上昇で363億円、動力費は燃料価格の上昇で177億円それぞれ増える。動力費の前提は、原油価格(WTI)を通期平均で1バレル約90ドルとしている。

配当は、9月30日を基準日とする中間配当を予想の42円から44円に増やすと決めた。前年の中間配当は35円だった。期末配当予想も42円から44円に上げ、年間配当は前期の74円から14円多い88円になる見込みだ。配当性向は37.5%で、修正前の予想では37.2%だった。同社はグループ経営ビジョン「勇翔2034」で、成長投資が落ち着く2027年度に向けて配当性向を段階的に40%へ上げる方針を掲げている。中間配当の総額は498億円で、効力発生日は12月1日。

同社は同じ日、過去に公表した決算説明資料3本の一部を訂正した。一部の長期借入金が、借入金の平均年限の集計から漏れていたという。対象は2025年4月30日、2025年10月30日、2026年4月30日に掲載した資料の、借入金の平均年限を示したページだ。

運賃制度の見直しを要請、久留里線は鉄道を断念

決算説明資料で同社は、運賃・料金制度の見直しを国に求めていく考えを改めて示した。短期的には、いまは運賃と同じ認可制の新幹線自由席特急料金を届出制にすること、インフレや賃上げに柔軟に対応できるしくみの導入、運賃を算定する際の事業報酬率の計算方法の見直しを挙げた。中長期的には、かかった費用に適正な利潤を加えて運賃を決める「総括原価方式」そのものの見直しを掲げている。現行の算定要領は資本の構成比率を自己資本30%、他人資本70%に固定しており、同社は直近の急な金利上昇を反映できないと指摘する。同社が示した株主・投資家の主な関心事項には「2回目以降の運賃改定」が入っている。

整備新幹線の線路を借りる貸付料についても考えを示した。北陸新幹線の高崎・長野間は年175億円の定額貸付料を払っており、30年間の貸付期間は2027年9月に終わる。同社は31年目以降の貸付料を、施設の維持管理に必要な費用を根拠に現在の額を上限とし、一定期間固定するよう求めている。2027年10月以降のこの区間の貸付料は未定のため、2028年3月期の数値目標には織り込んでいない。

輸送の面では、2026年8月の千葉県内の豪雨と台風25号で被災した路線の扱いを示した。内房線の姉ケ崎・長浦間は11月9日に運転を再開する予定。久留里線の久留里・上総亀山間は鉄道での復旧を断念し、鉄道事業を廃止する予定日の前日の2027年3月31日まで、バスなどによる代行輸送を続ける。人手不足への対応では、2027年春から京浜東北・根岸線の大宮・南浦和間と蒲田・大船間、中央・総武線各駅停車の三鷹・千葉間(東京メトロ東西線に直通する列車を除く)でワンマン運転を始め、2030年ごろまでに首都圏の主要線区へ広げる予定だ。