任期満了に伴う松山市長選が11月8日に告示され、届け出順に、いずれも無所属新人の木下ごう氏(44)、中野たいせい氏(44)、田中エリナ氏(42)の3人が立候補した。4期目の野志克仁市長は9月に次の市長選には出馬しないと表明している。投開票は10月29日に告示された愛媛県知事選と同じ15日で、松山市の有権者は知事と市長を同じ日に選ぶ。
新人3人が届け出 4年前は無投票
松山市選挙管理委員会の立候補者一覧によると、3人の届け出の内容は次のとおり。
| 届出順 | 氏名 | 年齢 | 党派 | 届け出た職業 | 新現 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 木下ごう | 44 | 無所属 | 無職 | 新 |
| 2 | 中野たいせい | 44 | 無所属 | 無職 | 新 |
| 3 | 田中エリナ | 42 | 無所属 | 有限会社味加久代表取締役 | 新 |
出典: 松山市選挙管理委員会「立候補者届出番号順一覧」
木下氏は公式サイトで、電力会社の情報通信技術者として20年以上インフラ整備や災害対応に携わってきたと説明している。1982年に松山市で生まれ、新居浜高専を出た。中野氏は1982年松山市生まれで、東京大学教育学部を卒業後、電通に勤めた。2019年の愛媛県議選で無所属で初当選し、公式サイトでは県議を「2期7年3ヶ月」務めたとしている。田中氏は1984年松山市生まれで、津田塾大学を出てリクルートに入社し、2012年にマーケティング会社を起こした。2022年の松山市議選で初当選した。
前回2022年11月の市長選は、立候補の届け出が野志氏1人だけで、公職選挙法の規定により無投票となった。野志氏は2010年に就任しており、今回の選挙で16年ぶりに新しい市長が選ばれる。
野志市長「次の市長にバトンを渡す」
野志市長は9月4日の記者会見で「次期市長選挙には出馬しないということをお伝えします」と述べた。4期目に入った日から「では5期まで目指すのか」と自問し続けたといい、その答えは「いいえ」だったと説明した。
最終的に決めたのは、JR松山駅周辺の再開発で事業協力者を発表した8月28日の後だったという。事業協力者には三井不動産、JR四国、伊織が決まっており、野志氏は「一定の道筋がついたこの時に引き継ぎます」と話した。任期は11月27日までとしている。
会見では在任中の取り組みとして、市立の小学校53校と中学校29校の校舎の耐震化や教室のエアコン整備、子どもの医療費の無料化を通院・入院とも18歳までに広げたこと、道後温泉本館の「100年に1回の大修理」を終えたことなどを挙げた。市への移住者は2024年度に3095人、25年度に3298人と3000人を超えたとも述べた。一方で「いつまでも、私が20年、30年と永遠に市政を担えるわけではない」とも語り、このタイミングで交代するのが最も良いと判断したと説明した。
3氏の訴え 城山の土砂災害と駅前整備
3人の公式サイトを見ると、JR松山駅周辺の整備と、松山城がある城山で起きた土砂災害への対応が共通の論点になっている。
木下氏は政策の1番目に「城山の土砂崩れに、誠実な対応を」を掲げ、市長が出席する住民説明会を時間や回数で区切らずに開くとしている。大型施設の建設より身近な道路などの整備・補修を優先し、国や県の補助金・交付金を活用する専門部署を置くとも訴える。
中野氏は重点3政策として、堀之内公園を起点にしたにぎわいづくり、JR松山駅周辺の整備、城山の災害への対応を挙げる。駅周辺については「今、市が進めている計画をゼロに戻して停滞させるつもりはない」とし、西口では市民会館の移転構想を具体化するとしている。
田中氏は「3つの約束」として、就任100日以内に全事業の総点検に着手して単年で約20億円の財源を生み出すことを目指すとし、城山の土砂災害について第三者委員会を設けて早期に住民説明会を開くと掲げる。JR松山駅前は図書館と市民会館を組み合わせた「滞在型の文化創造拠点」にするとしている。
松山市選管によると、市長選の選挙公報は11月9日午後に市のホームページで公開する予定で、各世帯への配布は11日から13日にかけて順に行う。知事選の公報は4日から6日に配られ、県選管の特設サイトにも載っている。
知事選は現職と新人2人 中村氏は5選を目指す
同じ15日に投開票される愛媛県知事選には、届け出順に、いずれも無所属の宮沢ひろゆき氏、中村時広氏、和田つかさ氏の3人が立候補している。
県選管の選挙公報によると、宮沢氏(51)は東京大学法学部を卒業し、市議を3期、衆院議員を4期務めた。自民党国防部会長や防衛副大臣を歴任したと記している。公約では「多選自粛条例を制定します」と掲げ、県民所得を増やす「3K(観光・海洋・海外)」政策などを並べる。
中村氏(66)は4期目の現職。県のプロフィールによると、三菱商事、県議、衆院議員を経て1999年から松山市長を3期務め、2010年12月に知事に就いた。公報では「防災・減災対策の更なる強化」「人口減少対策」「DX/AXの推進による経済の活性化」を政策の三本柱としている。
和田氏は1952年松山市生まれで、明るい愛媛をつくるみんなの会の事務局長。公報では日本共産党推薦・新社会党支持と記し、伊方原発の廃炉や最低賃金1,700円以上、県内すべての中学校の給食無償化を掲げる。伊方等の原発をなくす県民連代表幹事も務める。
期日前投票、7日時点で前回同期を上回る
県選管によると、知事選の期日前投票は告示翌日の10月30日に始まり、9日目の11月7日までに4万9594人が投票した。告示日の選挙人名簿登録者数は108万2273人で、登録者に対する割合は4.6%。前回2022年の同じ9日目の4万2218人(3.8%)、前々回2018年の3万6599人(3.2%)を上回っている。
松山市長選の期日前投票は11月9日に始まり、市の一部の支所や商業施設でもこの日から受け付ける。知事選・市長選とも期日前投票は14日まで。投票日当日の投票時間は午前7時から午後8時まで(一部地域を除く)。投票できるのは2008年11月16日以前に生まれた人で、松山市選管は原則として7月28日までに市に住民票が作られた人を対象としている。
知事選の投票率は低下が続いている。県選管の「知事選挙の歩み」によると、中村氏が初当選した2010年は49.17%だったが、2014年は42.93%、2018年は39.05%、前回2022年は33.95%だった。前回の当日の有権者数は112万3562人で、中村氏が34万1064票を得て4選を果たした。10月25日に投開票された福島県知事選の結果は「福島県知事選、現職の内堀雅雄氏が4選 得票率90.76%、投票率は44.05%」で伝えた。
愛媛県知事選の投票率の推移(%)
数値で見る(単位: %)
| 項目 | % |
|---|---|
| 2010年 | 49.17 |
| 2014年 | 42.93 |
| 2018年 | 39.05 |
| 2022年 | 33.95 |
今回の知事選は告示から投票日まで17日間あり、その間に市長選の1週間の選挙戦が重なる。前回2022年も知事選と松山市長選は同じ日程だったが、市長選は無投票だった。前回の期日前投票の推移を見ると、松山市分は告示10日目までは1日400人に満たなかったが、11日目に6477人へ増え、最終的に4万6472人となった。
愛媛では、前回の投票率33.95%からどこまで戻るかが、知事選と市長選が同じ日になった今回の焦点の一つになる。
